後編
*
言い訳にしかなりませんが、私はもう追い詰められていました。
疲れきって……、もうあの子の泣き声を聞きたくなくて……。
……でも、……あの苦しそうな顔が目に焼きついてます。
感情任せに締めた首はまだとっても細くて――。
私は大事な一人娘を殺しました。
*
私は学生時代にあの女に壮絶ないじめを受け続けた。人としての尊厳を滅茶苦茶にされ、自殺しなかったのが不思議なぐらいだ。
学校に行けなくなり、まともな働き口も見つからず、私の人生には悲惨な未来しか待っていない。あの女のせいで。
だからあの女を見つけ出して、散々にナイフで刺してやった。
復習した事は一切後悔してない。だけど頭に血が上って気づかなくて――、
私は私をいじめ抜いたあの女と、
あの女のお腹の中にいた赤ん坊を殺しました。
*
僕は紛争地帯で生まれました。
今まで何度も空からの爆弾で家が壊され、パパは敵国の軍に捕まって拷問で殺され、ママは食料の配給場所が銃撃されてから帰ってこなくて、お姉ちゃんは敵国の奴らにレイプされて自殺しました。
敵国の奴らが許せない、あいつらを一人残らず殺したい。せめて、敵国の人殺しだけでも殺したい。
僕は爆弾を持って敵国の軍人がよく遊んでいるというビルに入っていきました。夕方でたくさんの人が集まり始めていましたが迷いはありませんでした。
僕は軍服にいくつも勲章をつけた敵国の軍人と、
僕の国の人を罵っていた敵国の軍人と、
僕に唾を吐いてきた敵国の軍人と、
それを制止してくれた敵国の軍人と、
その敵国の軍人がつれていた子供と、
罵られていたおばあさんと、
片づけをしていたウェイターのお兄さんと、
名前も顔も知らない人と、
名前も顔も知らない人と、
名前も顔も知らない人と、
名前も顔も知らない人と、
名前も顔も知らない人と、
名前も顔も知らない人を殺しました。
――終わり