前編
アイツとは大学からなんでそこまで長い付き合いとは言えないけどさ、なんかウマが合うと言うか相性がいいからしょっちゅうつるんでた。
別にそんなつもりもないし、というか大して怒ってもいなかったはず。ただ二人とも社会人になったばかりでしんどくてさ、ストレス溜まってたんだよ。
それでさ、ちょっとしたことで言い合いになって軽くアイツを突き飛ばしたんだよ。ホントに軽くだよ。今までアイツとは殴り合いのケンカもしたことあるし、それと比べたらホントに大したことじゃないのに。
酔っぱらてたのかな?
フラフラってアイツがバランス崩して尻もちついた、と思ったら頭も打ってたらしくてさ、それでもう……。
俺は親友のアイツを殺しちゃった。
*
俺の人生は失敗ばかりだ。周りの人間が足を引っ張るからだ。しかもクソ野郎達は俺を笑いものにする。とにかく笑ってやがる。
だから俺を馬鹿にするやつ、避けようとするやつ、笑ってくるやつを片っぱしから殺してやる。
俺は動きのトロいジジババのうち、ジジイの方を殺した。
*
奇声をあげる男が老夫婦に向かって刃物を振り回していました。
長髪でやせていて、興奮しているのか顔は真っ赤になっていました。後で分かった事だけど、男は無差別大量殺人を計画していたらしいです。
おじいさんがおばあさんをかばい、それどころか男の刃物を持った両手を抱え込んでいました。だから自分が刺されるかもしれないという恐怖感が少しだけ薄れて、助けに入る事が出来たんです。
無我夢中でした。でもおばあさんだけでした。おじいさんまでは助ける事は出来ず、そしてもみ合った結果――、
私は通り魔の男を殺しました。