表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

オナラをするおばあさんの話④

お日さまがずい分と傾いて、だんだんと寒くなってきました。そして、雪もチラホラ舞い始めたときです。

「おぉい、何やってんだぁ」

遠くから男の人が走ってきます。見張りのおじさんがやって来ました。昔、おばあさんと子どもたちを無理やり車で連れ去った、あのおじさんです。工場が爆発して危ないから逃げろと言っていました。おばあさんが牛やニワトリはどうするのかと聞いたら、大丈夫だ、草がなくなる前に帰ってこれるから、と力ずくで車に押し込んだのでした。


あれから何年過ぎたかもうわからなくなってしまいました。何度も何度も土がほぐれて草木が芽生え、向日葵が咲き誇って、紅葉を透かした木漏れ日を浴びてきたような気がします。おばあさんの牛とニワトリたちは、すっかり数が減ってやせ細ってしまったけれど、ちゃんと生きて待っていました。

おじさんもあの時と同じです。おばあさんに詰め寄って言います。

「ここは危ないから出なさい」

「どうして出なければいけないのか、草がなくなるまでには帰ってこれると言っていたのに、もうとっくの昔になくなっているじゃないか」

おばあさんはずっと我慢して生きてきて、一生懸命歩いて帰ってきたのです。簡単に引き下がるわけにはいきません。

でも、

「事情が変わったんだ」と、おじさんは取り合ってくれません。

「ここは駄目だ、汚染されて人は住めない」おじさんが言います。

「ここは私の土地だ」おばあさんはひるみません。

「仕方ないんだ」

「仕方ないって何だ。私は牛飼いだ。牛を育てて乳を搾らないと生きていけない」

「この牛は駄目だ、汚染されているから」

「じゃあどうすればいいんだ」

「言うとおりにして遠くで大人しく暮らせばいいだろう」

「誰も知らないところで、言われるままにただ大人しくすることを生きるっていうのか? 私はこの土地で生まれて牛やニワトリたちといっしょに生きてきたんだ。他に生きる方法を知らない」

おばあさんが大声でわめきます。その声は、子どもたちの心にしっかりと届きました。

「じゃあ勝手にしろ」

おじさんは、おばあさんを説得することを諦めました。ほどなくおじさんの仲間の人がたくさんやって来て、子どもたちを連れていきました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ