オナラをするおばあさんの話⓷
オナラをするおばあさんの話⓷
ゴボウを食べて、サツマイモを食べながら、何とか森まで来ました。もうすぐです。おばあさんは最後の力を振り絞って力強く歩きます。最後の食べ物であるニンジンを内ポケットから取り出すと、しっぽの方から少しずつ口に入れました。みずみずしい甘さが舌の上を転がってのどを通過します。胃に入って腸の辺りが何やらゴロゴロしたところで思いっきり出ました。
ぷっぷっぷっぷう~
まるで時報のようなオナラが、立ち枯れた森にこだまします。
すると、 何ということでしょう‼
おばあさんの歩いた後の森がみるみる枝葉を広げ、緑から黄色へ、そして紅く染まっていくではありませんか。おばあさんの足取りに合わせるように紅葉がはらはらと舞い散ります。
子どもたちは大喜びで紅葉狩りを始めました。
おばあさんは残ったニンジンを子どもたちにあげると、森の外れに目を向けました。牧場が見えます。草はすっかりなくなっていました。それどころかまだ雪の残っているところもあります。森を抜け出た途端、やせ細った牛が一頭、そしてニワトリが二羽、おばあさんを見つけてすり寄ってきました。牛はパンパンに張ったオッパイを見せびらかして、早くミルクを絞ってくれと甘えます。おばあさんは、牛の頭をやさしく撫でて抱きしめます。他の牛たちのことは聞きません。やせ細った牛は、おばあさんが両腕を回すと余るくらい小さくなっていました。それでもオッパイだけはパンパンに膨れ上がって、おばあさんに搾ってもらうのを待っています。
おばあさんが牛の乳を搾ると、あたたかく真っ白いミルクがツゥーッと滴り落ちてきました。おばあさんはそれを手にすくって飲みます。昔と同じ、甘くふくよかな味です。ミルキーな香りが身体のすみずみにまで行きわたり、お尻の辺りがもぞもぞし出したとき、
コロン、コロン
と、おばあさんのちょうどお尻の先にいた二羽のニワトリが卵を産みました。ニワトリたちは得意げです。おばあさんは、オナラを我慢して二個の卵を拾い上げると、二羽のニワトリをやさしく撫でてあげました。そして、そこへちょうど集まってきた子どもたちに卵を差し出します。
子どもたちはたくさんいたので、二個の卵をどうするか話し合いました。その結果、みんなで大切に育てて、ニワトリになってたくさん卵を産んでくれたら分け合おうということに決まりました。それを聞いたおばあさんは大喜びです。牛もモウと言い、ニワトリもコッココッコと羽をバタバタさせています。