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第5章

次の日々、教師としての任務を除いて、カイトは空いている時間を使って新しい仲間を案内した。彼らが街の上流にある家族の屋敷に向かって坂を登っているとき、タケシはその威厳に感嘆していた。この王子からは、抑えきれない男の魅力が漂い、その直感に従うだけであった。習慣や配慮など、どんな制約も彼を縛っていないように見えた。


今日も、毎回街に降りるときのように、王子は粗野な髪型を高いポニーテールに変え、その頂上に美しい黄金の髪飾りをつけていた。それは、女神を模したドラゴンのような威厳を持ち、太陽の光がその角に反射して、天界のような輝きを放っていた。彼はまるで無敵の存在のように見えた。


彼らは、大きな門をくぐり抜け、その上には、キムラ家の太陽がアマテラスのドラゴンの姿に抱かれて輝いていた。


「それでは、ここでは若い頃から戦士を育てているのですか?」


「ここでは、神聖な能力を持つ子供たちの訓練を担当しています。思春期になると、師たちが周囲の自然の力に近い場所でさらに訓練を続けます。」


彼は頭で指し示し、左側に広がる巨大なスペースを指差した。そこでは、男女が優雅でゆっくりとした武道の振り付けを行っていた。


「こちらが我々の戦士たちのエリートです。神の才能を持つ者たちです。彼らだけがこの敷地で修行を許されています。彼らのことを「純血」と呼びます。他のすべての一族も同様です。」


タケシは、文字通り圧倒されて彼らを見つめた。遠くからでも、その動きの流れるような美しさ、そして華やかな衣装の輝きは催眠的であった。彼らはその優雅な舞いから目をそらし、邸宅の反対側、学生の中庭に向かって歩みを進めた。


「そこには二つの道場があるんだ、見えるだろう?」とカイトは、広場を囲むU字型の建物を指差しながら説明した。「若い才能のある者たちに、一般的な教えと内なるエネルギーの使い方の理論を教える師がいるんだ。普通の人間とは違って、私たちのエネルギーは強力な精神的な力で、練習と成長と共に発展する。若い頃からサポートすることで、彼らの能力がしっかりと指導されることを確かめている。見た目とは裏腹に、アマテラスの遺産は決して無害ではない。」


タケシは、ひとつひとつの情報に耳を傾けながら、頷き続けた。邸宅の後ろには、豊かな公園が山の谷間にまで広がり、花が咲き乱れ、竹の橋が曲がりくねった川の流れを渡っていた。色と香りの楽園のようだった。


池のほとりに、金の模様で装飾された屋根と木組みの美しい小さな寺が立っていた。


「父はここで祈り、瞑想をするのが好きなんだ。僕の一つ年下の弟、キヨシもここで瞑想をしているよ、太陽の揺りかごで霊的な修行をしていないときはね。揺りかごは、何世代にもわたる私たちの一族の聖なる町だ。」


「宗教家なのか?」


「その通りだけど、その道は、キムラ家の大師の弟子たちにとっては長いものだ。」


「大師たち?」


「話すことがたくさんありすぎるよ。彼らは一族の師たちを越えた存在で、師匠や精神的な助言者に過ぎない。キムラ家の大師たちは、日本の歴史の守護者で、国中が彼らを尊敬している。」


寺の近くで、タケシは岩山と木々の間に消えていく薄暗い小道を指さした。


「そして、この道はどこに続いているんだ?」


「温泉だよ。」


温泉の自然な熱い水が肌に触れる感覚に、タケシは震えた。どれだけ良いお風呂を夢見ていたことだろう。こんな贅沢が、彼のような新参者に許されるはずもないことは明白だった。


「よし、僕は子供たちにレッスンを与えてくるから、君は静かにしているんだ。」


「約束する!」


カイトは、目の端でその誓いに伴う笑みを感じ取った。疑念を抱きながら、彼は優雅な旋律を描くようにその場を離れた。


公園での孤独な散歩は、タケシをすぐに退屈させた。王子の授業を見守る方が退屈ではなさそうだ…。


タケシはこっそりと道場の角を回り、その陰にしゃがみ込んだ。


「エネルギーを使って、跳躍を成功させるんだ、ヒデキ君。自分の中にその力が流れるのを感じろ。その熱さに集中して、それを大きくしろ。」


十歳にも満たない少年は、目を閉じて集中を高めた。やがて、エネルギーが彼の中で膨らみ、彼の華奢な体に広がり、数秒間その温度を上昇させた。その力が金色の細い流れとなって棒に伝わった瞬間、彼は先端で地面を激しく打ちつけ、再び跳躍して空中に浮かび上がった。彼は四メートルの柱の頂にしなやかに着地し、周囲の仲間たちに誇らしげな笑顔を向けた。


「よくやった」と教師は認めた。「年齢を重ねると、自然の力を感じ、それと一体になる方法を学ぶことになるだろう。」


生徒の一人が教師から視線を外し、観察者であるタケシに目を向けた。タケシはその少年に軽く手を振った。少年はその瞬間、王子に対して注意を怠ることなく、細い笑みを浮かべたが、少しも気を抜くことなく、その表情を隠していた。しかし、王子はその短い気を抜いた瞬間を見逃すことはなかった。


「今日のところはこれで終わりだ。」と、彼は低い声で言った。「伊藤様がお待ちだ。急げ。」


弟子たちが庭を後にすると、カイトは楽しそうに歩いてくるタケシを見て彼を捕まえ、腕を組んだ。


「お前、俺の授業を邪魔したな。」


「邪魔?ちょっと大げさじゃないか、キムラ先生?」と若者は笑いながら言った。「あまりに堅苦しく見えたから、ちょっとだけ…みんなの授業を明るくしてあげただけさ?」


カイトは苛立った顔を作った。


「だから、どうしてお前が追い詰められたのか分かる。」


「ほんとうに?」


「そうだ。お前は、うるさいタイプだな。」


タケシはにやりとした笑みを浮かべて、カイトに近づいた。


「キムラ様、まだそんなに不機嫌なの?」と彼は言った。


カイトはゆっくりと目を瞬きし、冷静に言った。こうした冗談を好まなかった彼は、結局、背を向けてその場を去った。


「ええ、どこに行くんだ?」


「今日はこれで見学は終わりだ。私は一人で集中する。」


「それなら、僕も...」


「一人でという意味がわかるか?」とカイトは低い声で言った。


「うん、わかってるけど...」


「まるで子供だな」と、王子は嘆いた。


傷つくどころか、タケシはその言葉に楽しんで反応した。彼は先を行き、目的を達成しようと決心した。


「もし僕が子供なら、君も僕に教えてくれるんだよね?それっていい理由じゃないか...」


「いいえ。」


「いいえって?まだ言い終わってない...」


「いいえ、お前はついてこられない。いいえ、お前に授業はしない。」


「でも僕は子供だよ、君が言ったんだ。記憶を失った子供だよ...」と、彼は悲しげな声で付け加えた。


その大きな翡翠の瞳は、虐待を受けた子犬のように輝いていたが、冷徹な相手には全く効果がなかった。相手は空を見上げた。


「はあ!君、目をそらしたな。」


「それがどうした?」


「それは君が『はい』と言いたいという証拠だ。」


しつこさにうんざりしたカイトは、答えることなく背を向け、道を戻り始めた。


「先生、君、全然面白くないな...」


「そしてお前は子供だ。」


「たぶんね、でも、それでもかわいい子供だよ。」と、彼は自分に向かってささやいた。


「いいえ。」


「えっ!どうしてそんなに遠くから聞こえたの?カイト様、なんでそんなに意地悪なの!」


「私の息子は耳が非常に良いんだ、全ての弟子たちがそれを証明するだろう。」


ユナが登場し、長いラズリ色のローブの中で両手を合わせていた。タケシは突然、恥ずかしさからすぐに彼女にお辞儀をした。


「カイトは気性が強いから、彼を許してあげて。」とユナは彼を安心させるように言った。「あなたたちはきっと良い友達になるわ、私が確信しているわ。」


「はい、キムラ様。」


彼の遠慮深さは、彼の先輩に対する自然な大胆さとは対照的で、ユナは微笑んだ。彼のその親しみやすさは、生まれつきのものであり、驚くべきことではなかった。絆は記憶を超えている。


「もうこんな儀式は忘れて。私たちの間では、ユナ様と呼んでくれないかしら。」


「え…ええと、そんな親しみすぎるようなことは出来ません、キムラ様…」


「お願いよ。そして私を怒らせたくはないでしょう?」とユナはいたずらっぽく言った。


「い…いえ、もちろんです…ユナ様。」とタケシは首をかしげながら、ついにうわずった声で答えた。


彼女は甥を永遠の時を経て再び見つけた宝物のように見つめた。その瞳には感情が輝いていた。彼女は庭園に向かって数歩進むように誘った。


「タク…あなたの記憶はまだ戻らないのね。」と彼女は言い直した。「あなたの名前を思い出させてあげようか?」


「そんな力があるんですか?」と若者は驚いた。


「いくつか…コツがあるの、そう言っておこうかしら。」


彼は感謝の気持ちを込めて愛らしい笑顔を浮かべた。その瞬間、彼女は二十一年前、まだ赤ん坊だった彼を腕の中で揺り動かしていた自分を思い出した。最初の五年間、彼女が彼のそばで過ごせた唯一の時間、タケシはいつも笑い、世界に感嘆していた。わがままも泣き声もなかった。この子は本当に愛らしい存在だった。太陽のような光、彼の母親に似ている。そんな思いが胸にこみ上げてきた。


彼女はその感情を隠し、芝生に膝をつき、ドレスを両膝の横に広げた。タケシはそれに倣い、彼女の前に座った。そのとき、彼は彼女の胸元に滴の形をしたフローライトが光っているのを見つけた。その青、灰、白の色合いは、彼女の銀色の瞳と完璧に調和していた。


「目を閉じて、私が言うまで開けないで。」


彼は素直に従った。


「今、自然のささやきを聞いて。体を委ねて…」


タケシはあっという間にリラックスした。春の鳥たちの細やかな歌声は心を落ち着ける。風に乗って、無数の花々の香りが彼の肌をかすめ、優雅な気品を漂わせた。その魅惑的な香りに新たな香りが加わり、その微妙な混合が彼の意識の中に忍び込み、彼が耳元でささやかれる言葉に気づくことはなかった。


彼女が肩に手を置いたとき、タケシは目を開けた。ひらめき。


「タケシ!僕の名前はタケシ!」


「タケシ…」彼女は少し満足げにそう言った。「まさに戦士の名前だわ。」


彼は芝生に全身を投げ出した。


「ユナ様、ありがとうございます!あなたは素晴らしい、心から感謝します!」


彼女は声をクリアにし、感動を抑え、平静を取り戻した。彼に対するあらゆる優しさは許されなかった。


「他に何を覚えているの?」


「僕…森の中で追われていたことはぼんやり覚えている」と、彼は頬をかきながら言った。「拒絶された気がするんだけど、誰に、何のためにかは分からない…」


彼は短い間を置いて、不思議な記憶に引き寄せられる。


「僕は目を見せてはいけなかったんだ!」と、口を押さえるようにして叫んだ。まるで自分を裏切ったかのように。


ユナはその肩に優しく手を置いて、彼を安心させた。


「ここでは、何も恐れることはない。」


彼女は秘密めいた表情で近づき、言った。


「その目の中の閃光は、あなたがとても特別な男の子である証拠よ、タケシくん。」


「信じたいですが、ユナ様…でも、今確信していることが一つあります。僕は… 役立たずだった。」


その言葉は、痛みを伴うほど鋭いものであった。彼女はその言葉に、長男が二男に対してずっと言い続けていた不公平で屈辱的な言葉を認めた。彼のしでかしたこと、そして彼に対する深い憎しみが彼女の中にいつまでも残っていた。だからこそ、彼女は常にその憎しみを抱えていた。そして、甥の最初の確信が父親に関連していることは、彼女にとってさらに悲しいことだった。


「それは違うと思うわ、単に不運だっただけよ。」


「そうであればいいんだけど…」


「そうよ」と、彼女は微笑んで言った。


「どうして私があなたを知らないのに、それが分かるのですか?」


「だって、あなたは私を困らせたくないんでしょう?」と、彼女はウィンクをして付け加えた。


タケシは心温まる思いで力強くうなずいた。


「カイトと彼の生徒たちを思い返すと、僕は今、もう戦士ではないと確信した。」


「本当に?」


「もし武術を教わっていたら、反射的に何かを覚えていたはずだし、特定の動きが分かるはずだよね…?」


「もしかしたら、少しは知識があるかもしれないわね?」と、彼女は心配そうに尋ねた。


タケシは考え込むように人差し指を顎に当てた。


「棒を持っていた記憶がある…その時、一緒にいたのは年配の男性だった…私たちは近しい関係だった気がするけれど、誰だったのかは思い出せない。」


ユナは微笑みを浮かべた。彼女はその指導者が誰であるかを完璧に予測していた。兄の武田は甥に対していつも優しかった。彼が彼のためにそこにいたことを知るのは、彼女にとって慰めとなった。


「わかったわ。それでは、これを訂正しましょう。」


「申し訳ありませんが?」


「あなたは子供たちのクラスに参加することになるわ。」


タケシは少し苦笑いした。


「ユナ様、それは私にとって大変光栄なことですが、王子がそれを喜ぶとは思えません…」と彼は顔をしかめた。


「確かに、彼はかなり…」


「意地悪ですか?」


「鋭いわね」と、彼女は笑いながら言った。「あまり心配しないで、どれだけ真面目に取り組んでいるかを示せば、彼の尊敬を得られるわよ。」


「わかりました、それなら、私は街で一番の良い子になります!」


彼女は彼の生き生きとした喜びに心を打たれ、笑った。彼の優雅な笑顔、無邪気さ、そして感情が透けて見える大きな瞳は、彼を純粋さの象徴にしていた。


彼女は到着した息子を指で指し示しながら言った。


「あなたに彼との出会いの詳細を話す楽しみを与えます」と耳元でささやき、肩を軽くたたいて励ました。「カイトくん、私は新しい生徒を任せます。」


「え… すみません?」とカイトは驚いた。


タケシは唇を引き締め、頭を下げた。彼は楽しみと不安が入り混じった気持ちだった。そして、カイトの驚きがすでに敵意に変わりつつあることに気づいていた。王子は彼を鋭い目で睨みつけた。


「私は誰かに無理強いされるのが非常に嫌いだ。」


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先生 (せんせい)

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