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【SF 空想科学】

肉塊の国

作者: 小雨川蛙


ある日、国で一番の賢者が言った。

「目などいらない。嫌なものを見たくないから」

そう言って、賢者は目を潰した。


次の日、賢者が言った。

「耳はいらない。嫌なものを聞きたくないから」

そう言って、賢者は鼓膜を破った。


次の日、賢者は言った。

「足はいらない。動かれると困るから」

そう言って、賢者は足を引きちぎった。


次の日、賢者は言った。

「腕はいらない。余計な事をされては困るから」

そう言って、賢者は腕を切り落した。


次の日、賢者は言った。

「口はいらない。くだらない言葉を言いたくないから」

口を塞ごうとしたその刹那、賢者はぽつりと言った。

「命は必要だ。それを繋がなければならないから」


そうして、出来上がった奇妙な肉塊。

目はない。

耳もない。

足もない。

腕もない。

口もない。

けれど、命だけはある。

人々はそれを気味悪がっただろうか。

命を奪っただろうか。


否。

皆が賢者を真似たのだ。

何故なら、賢者の成すことはいつだって正しかったから。

どれだけ愚かでいても、賢者と共にあれば間違えることはなかったから。

だから、彼らは自ら考えることを放棄して賢者を真似たのだ。

こうして、ここに奇妙な国が出来上がった。

『命』だけが存在する国だ。

あるいは『命』しかない国とでも言うべきだろうか。


後年。

この国を飢饉が襲った。

飢えたあらゆる生き物が、肉塊だけが存在する場所を発見し、それを喰らうことで命を繋いだ。

果たして、賢者がどこまでのことを考えていたかは定かではない。



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