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【SF 空想科学】

肉塊の国

作者: 小雨川蛙
掲載日:2024/11/04


ある日、国で一番の賢者が言った。

「目などいらない。嫌なものを見たくないから」

そう言って、賢者は目を潰した。


次の日、賢者が言った。

「耳はいらない。嫌なものを聞きたくないから」

そう言って、賢者は鼓膜を破った。


次の日、賢者は言った。

「足はいらない。動かれると困るから」

そう言って、賢者は足を引きちぎった。


次の日、賢者は言った。

「腕はいらない。余計な事をされては困るから」

そう言って、賢者は腕を切り落した。


次の日、賢者は言った。

「口はいらない。くだらない言葉を言いたくないから」

口を塞ごうとしたその刹那、賢者はぽつりと言った。

「命は必要だ。それを繋がなければならないから」


そうして、出来上がった奇妙な肉塊。

目はない。

耳もない。

足もない。

腕もない。

口もない。

けれど、命だけはある。

人々はそれを気味悪がっただろうか。

命を奪っただろうか。


否。

皆が賢者を真似たのだ。

何故なら、賢者の成すことはいつだって正しかったから。

どれだけ愚かでいても、賢者と共にあれば間違えることはなかったから。

だから、彼らは自ら考えることを放棄して賢者を真似たのだ。

こうして、ここに奇妙な国が出来上がった。

『命』だけが存在する国だ。

あるいは『命』しかない国とでも言うべきだろうか。


後年。

この国を飢饉が襲った。

飢えたあらゆる生き物が、肉塊だけが存在する場所を発見し、それを喰らうことで命を繋いだ。

果たして、賢者がどこまでのことを考えていたかは定かではない。



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