2.慈善事業といきましょう
「その水鉄砲、よくお似合いですよ」
「ーーチッ。26にもなって、こんな子供騙しのおもちゃ押し付けられるとは夢にも思わなかったね」
一列に並び、私たちはプライベートビーチを目指して歩きます。水着は全員、麓の町で買いました。
「それにしても陽ちゃんが真っ黄色の水泳帽に手を伸ばしかけた時は、さすがに焦ったよ」
「そんなあ! スクール水着、泳ぎやすいじゃないですか」
セイコさんと朧さんは、私を見てなぜか苦笑しました。
「あ! そうそう、みんな日焼け止めは忘れずにね」
セイコさんは甲斐甲斐しく、影助さん・朧さん・そして私の手のひらに日焼け止めクリームをお裾分けしていきます。
「ありがとうございますセイコさん! おおーーなんだか肌がもちもちしてます!」
私の頬をつんつんさせながら、フッフーンと得意げのセイコさん。背後には星っぽいエフェクトが見えました。
「ウチら、芋臭い他の組と比べて美形が多いからね。顔面偏差値くらいキープしなきゃだよ」
セイコさんは手慣れた様子でクリームを首筋に塗布しました。
「っは、若作り痛ババァーー」
ガスン!!
私が何か言うより先に、セイコさんの持っていたあるものによって影助さんの言葉は遮られました。
「ぃっってーな何だソレ!」
「何ってーー海といえばでしょ! アタシちゃんと買ってきたんだからね。でも、あんな酷いこと言っちゃうような悪いコにはあげませーんだ」
ものすごいスピードで影助さんのお腹を強打したそれとは、なんとスイカのことだったようです。
がさごそ……
「あ、待てよ……アハ! アタシったら割る用の棒、忘れてきちゃったみたい⭐︎」
セイコさんは頭を小突き、ぺろっと小さく舌を出しました。
ぐうっ、可愛いーー!
私は胸を押さえます。
「そういうことでしたら、ぜひとも僕にお任せを」
「え、いいけどーー」
「朧さん一人でってことですか? それなら私にもお手伝いさせてください!」
人手はいっぱいあったほうがいいと思うんです。
「やめとけやめとけ。どーせ悪魔サマには素晴らしい考えでもおありなんだろ」
私は気になって仕方がありませんでしたが、そろそろビーチ入り口の洞窟が見えてきました。
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ーーザザーン ーーザザーン
寄せては返す波の音。
「いざ、海へーー!」
私は一直線に走り出しました。
ところが。
みんなは思いもよらぬ光景に固まってしまいました。
「わわ! 不法投棄……?」
私たちにはなんと、大量のゴミの山が待ち構えていました。
「……信じらンねー、ボスのシマぁ荒らしやがってよぉ」
「もー! 結局仕事はあるんじゃん! 今日は一日遊びまくるって決めてたのにぃ」
影助さんは水鉄砲を構えます。実弾ではないはずなのに、とても凄みがありました。
「まあまあーー午前中はみんなで仲良くゴミ拾いを頑張るとしましょうよ。ね、陽さんも」
「……そうですね! 道のりは遠そうだけどこれもまた経験ってヤツですよね、きっと!」
地道な任務、開始です。




