1.反社だってバカンスは満喫したい
陽ちゃんの夏休み日記!
〜うーみーはぁ あおいーなあ おーきーいぃなー〜
目前に広がるのは、青い海! 白い砂浜!
こんにちは! 私、日楽 陽は現在、カルマファミリーのみなさんと一緒に海水浴に遊びに来ています!
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〜数時間前〜
八月。最近は暑くなってきて、どうもみなさん(特にセイコさん)、お仕事に身が入っていないようでした。
そんな時。長年頑張っていた、お屋敷のクーラーが故障してしまいます。
ーーボス! 夏季休暇を申請します!
セイコさんは元気よく手を挙げました。
影助さんはワガママ言うんじゃねーよ、とセイコさんに睨みを効かせましたが、そんなことでへこたれる彼女じゃありません。周りの目なんか気にも留めませんでした。
ボスは、顎を撫でながらうんうんと考えているようです。
ーー空調が効かないんじゃ若いのは耐えられないだろ。……よし! ここは俺が一つ、部下を労ってやるとするか。
ボスは信濃さんたちと一緒に留守番をしているから、クーラーの修理が終わるまで、私・セイコさん・影助さん・朧さんの四人で、カルマファミリーの所持するプライベートビーチに行ってきなさいと言いました。
当然ながら、影助さんはこの提案に反発します。"非常に気に食わねェ"という顔をしていました。
ーー何考えてんスかボス! もしオレらのいない間に敵に攻められたら? 熱中症になったら? ……第一、なンでオレがコイツらなんかと!
ーー我慢しなくていいんだぞ影助。お前だって日頃のストレスが相当たまってるはずだ。
ーーいいやオレは残ります!
ボスが苦笑する中、頑として譲らない影助さん。そんな彼を見兼ねてか、朧さんはボスにコソコソ話をしに行きました。
(おお、なるほどな! ……恩に切るぜ、聖田!)
朧さんは胸に手を当て、洗練された感じでボスに礼をします。
ーーあのなあ影助。あのビーチ、買うだけ買って後は放置してたろ。密漁者にやられでもしてたらたまらん。
そうだそうだ!とセイコさん。
ーーだからこそ、だ。ビーチの様子を見に行ってほしいんだ。この通り!
ボスに頭まで下げられてしまい、影助さんは観念したように目を瞑ります。
ーーチッ、分かりましたよボス。あくまでこれは"任務"。そういうコトですね?
セイコさんは軽快に口笛を吹き、朧さんはほっと胸を撫で下ろしました。
ーーいいかテメェら! 間違ってもこれは遊びじゃねーからな! ちょっとでも隙見せたヤツは即殺す!
ーーふふっ、上手く乗せられたようで何よりです。
朧さんは、喜べばいいのか悲しめばいいのか戸惑う私に耳打ちをしてきました。
if世界のようなそうじゃないような……そんなふわっとした設定の作品です!