2人と1人
「投石」
私は火球だった。
『普通に石を投げた方が早い気がしても、
使い続けたらドンドン石が大きくなっちゃって』
「ははぁ」
ナイフや弓に目移りせずにいれば、
魔法もやはり強くなっていくのか。
『今では通路で邪魔になる位大きくなっちゃって…
どうすればいいですか?』
「ナルホド」
桃子猫が割って入ってきた。
「ランさんならどう思ウ?」
「え?私なら…杖でそれくらい威力が高ければ、
素手も併用しますね」
『あ〜』
盲点だった、というような顔をする。
プティーは射線上に誰もいない虚空に向かって、
五指を広げる。
『投石』
手のひらに石が生成され、射出。
『ゴツ』
壁に拳大の石がぶつかった。
『す、すごい!本当にいい感じの石が出ました!』
「お力になれてよかったです」
『最初は砂くらい小さかったのに、
ちょっと感動しました!』
プティーは感受性豊かなようだ。
『他にも何かご存知のこととかありますか!?』
トカゲの目を輝かせ、舌が踊っている。
「そうですね…例えば」
プティーの手に自分のこぶしを入れる。
「この状態で唱えてみてください」
『いいんですか?』
「ええ」
『投石』
拳大の石が生成され、手にめり込む。
「こういうこともできたりします」
『おおー!』
羨望の眼差しを受けて、
わざとらしく振り回してみたりする。
「ハエー」
そういえば桃子猫にも初めて見せた。
…。
石が消えない。
壁にぶつかった石も消えていない。
火球は消えていたので、見くびっていた。
「…桃子猫さん」
「エイ!」
『バカッ』
鉤爪によって石が割れる。
中の手は無事。
「ほっ」
「モウ…」
「とまあこういう風に、
発動中の魔法にオブジェクトを干渉させると、
魔法を固定させることができます」
『ははぁ…』
若干引かれている。
目の前で失敗例を見せたのだしそうなるだろう。
『皆さん、休憩は済みましたか』
八八が立って言った。
「はい」
「ウン」
『私も』
『では、行きましょう』
全員立ち上がる。
「桃子猫さん、耳栓」
「ン」
『スポ』
「んフッ」
方陣を組み、桃子猫と数メートル離れる。
前衛組が石扉に手をかけ、押す。
『いよぉッ』
『ふんッ』
「んーッ」
少しずつだが、開き始める。
御開帳。




