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今際の告白


ツルハシ。

鉱夫の道具がなぜこんなところに。


「はぁ…」


拍子抜けだ。

座り込む。

桃子猫も座り込む。


「休憩に…しましょう」

「ウン」


カバンから食料を取り出す。


「これだけ…」


肉が二三切れに水が少々。

これは決断しなければならない。


「桃子猫さん、ここは一旦死にましょう」

「エ?」

「ここで限界まで粘っても、

食料が減って送還されるだけなので、

立て直しを早くするためにも今ここで餓死します」

「アー…ウン、いいかも」


賛同を貰ったので、食料をカバンの中に戻す。

疲労が蓄積している。

餓死もそう遠くないだろう。

ただ、それまで暇だ。


「ヨイショ」


桃子猫が隣に座る。


「お話シヨウ」

「いいですね…何話します?」

「私の事」


少し、語調に意気が籠る。


「私の仕事、投資家って言ったッケ?」

「はい、以前に」

「実は元々、貧乏ダッタノ」

「ほう」


驚いた。

今の桃子猫からは想像もつかない。


「成績トップの兄が大学に行けないッテ分かったトキ、

オジイチャンが倉から出してくれたお金で

投資を始めたノ」

「はい」

「たまたま成功して…私の生活はカワッタ」


すこし縮こまる。


「『高校生で投資を成功した人』になって、大学生になって周りからチヤホヤされた」

「…はい」


なんだか重くなってきた。


「若い投資家っぽい格好もしなきゃならなくて…振る舞いモ…長くそんなカンジダッタから、本当の自分が分からなくなって…」


桃子猫を、成功者の部類だと勝手に思い込んでいた。

自分とは違う世界の人間だと。

この様子を見て、

同じことを思うことは二度とないだろう。


「デモ…デモネ」

『モフ』


素肌が出ている部分全てに、毛の感触。


「ランさんと出会って…遊んで思い出した気がスル、

昔のワタシを」

「それは…よかったです」


少し、身体が冷えてきた。

おまけで貰った飴でも舐めよう。


「今からソノ…大事なコト言うね」

「はい…」


瞼が落ちてくる。

これはもうすぐ死ぬな。


「ワタシ、ランさんのことが…ソノ…ウーン…」

「どうしたんです…?」

「ソノ…ス…ス…ス…」



「スゴくステキだと思う!」



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