なんて酷い
モンスターハウスだ。
前方180度あらゆる場所から、
スケルトンが湧き、降る。
「フン!」
『ギッ』
桃子猫が直近の湧きかけスケルトンの頭を砕く。
「どうする!?」
桃子猫に耳栓を詰めて回答する。
「オッケ!」
現れたスケルトン達は、
どいつもこいつも今までより一線を画す。
大きく、体の骨の本数が増強され、
更に上等そうな骨の装備を持っている。
役職でもあるかのように、盾や杖や剣。
奴らは散らばっている。
一人一人に当てていて、MPが持つのか?。
引きつける必要があるが…
攻撃パターンが分からない相手に危険すぎる。
『ギギッ』
どうしたものかと逡巡した時、奴らは集まりだした。
前に盾、その後方に剣、更に後方に杖。
まるでパーティのように徒党を組んでいる。
これならやりやすい。
おそらくまともなプレイヤーなら、
何も出来ずに詰められてやられているだろう。
私には特別な弓と火球矢がある。
まとまってくれてるなら好都合。
「火球」
一番近くの一党に狙いをつけ、発射。
閃光と爆音が大部屋に散らばる。
一党は焦げた骨となる。
なまじ耐久力がある故に、
散らばって受け流せず致命傷となっている。
これなら行ける。
「火球」
「火球」
「火球」
近場の一党は消え、
投擲が致命的になりそうな距離から離れられる。
『ギッ!』
そうなるや否や、
スケルトン達は進行を止め火球を撃ってくる。
「フッ!フッ!」
俊敏なフットワークで防いでくれているが、
息が切れ始めている。
こんな桃子猫は初めて見た。
「火球!」
早く片付けなければ。
「火球!、火球!、火球!」
剣を持っているスケルトンも
肉壁になっているからか、
杖持ちを倒すまでに二発かかる。
その分倒すのが遅れ、桃子猫の体力が消耗する。
『ボッ』
「ッ」
火球を一発被弾する。
「ランさん!」
「気にせずに!」
薬草を一枚噛み、片方の頬袋に寄せる。
「火球!」
追加でスケルトンは湧いてこない。
ここが踏ん張りどころだ。
「火球!」
『ギッ!』
命中精度が上がってきたからか、
二匹の壁を縫って杖持ちを倒せるようになってきた。
最悪杖持ちだけでも倒せればいい。
「フッ…フッ…」
近くの杖持ちを倒したおかげで、
弾幕の密度が減りつつある。
『ボス』
加えて敵の有効射程から離れたからか、
確実に被弾しないであろう火球も飛んでくる。
にじり寄ってくる盾と剣の残党も狙いながら、
その数を減らす。
後はもう消化試合だった。
「火球」
『ギッ』
最後の一匹を討伐する。
『ギシャン!』
通路をの閉鎖が解かれる。
「…フー…」
片付いた。
「ワー…」
その場に寝転ぶ。
正直今回ばかりはダメかと思った。
だが勝った。
『がこ』
「「!?」」
石が擦れる音。
出入口は塞がっていない。
『ズズズズ…』
何かが、せり上る?。
桃子猫は、既に音の方向を特定していた。
視線の先を見ると、宝箱。
あそこにはたしかに何も無かった。
見るだけで気力が湧いてきた。
「よっこいしょ」
先に立ち上がり、桃子猫に手を伸ばす。
「ンショ」
そのまま手を繋いで、宝箱の元へ向かう。
何が入っているのだろう。
耐えたんだ。
きっとすごいものが入って『がこ』
またしても踏み違えたような浮遊感。
同時に当たり前に信頼していた地が落ちる。
古典的な落とし穴。
宝箱との直線上にあるなんて。
なんて酷い罠だ。
いや違う、最初からあったのだろう。
警戒を怠っていた。




