新しい弓
ドワーフの工房。
『確かに完成する時間を告げなかったが…
流石に遅すぎないか?』
「いやぁはは」
「ハハ」
『服もそんなに汚しているし…喧嘩か?』
「似たようなものです…それよりも」
『ああ、そこの壁に立て掛けてる』
ドワーフがさす指の先。
杖と弓の中間のような、そんな形状。
店売りのシンプルな弓には見られなかった、
木目が入り交じる複合弓。
そんなこのサーバー有数の弓に、
ピンクが一緒くたに塗られていた。
『サービスで桃色にしといたぞ』
「カワイー!」
「ふふ」
まあサービスが無くとも、
ピンクになる運命だっただろう。
「よいしょ」
見た目の大きさの割に、
元々の杖とそう変わらない重さ。
軽く引くだけではビクともしない弦。
「いいですね、これ」
『あたぼうよ』
この工房には、もう用がなくなってしまった。
「では、これで」
『ああ』
ドアノブに手をかける。
『ちょっと待った』
ドワーフは裏から筒を持ってきた。
投げて渡される。
『選別だ、持っていけ』
矢筒だ。
「ありがとうございます」
『またのご贔屓に』
ここにきて、ドワーフはニヤリと笑った。
「バイバイ」
『バイバイ』
扉を閉める。
静かな工房に戻った。
「イベントに行きましょ」
「ウン」
しばらく歩くと、工房から槌の音が響き始めた。




