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毛むくじゃら達


ドワーフは飾り棚のような収納から、

弓の模型を取り出した。


『弓ってのはな、

歴史的にもそうだが強くするためには

色々な素材を使う必要が出てくる』


確かにこの模型は、

曲がった枝一本に複数の何かが付いている形。


『基本的には基礎となる木材より硬い素材を使って、

より引ききるまでの力を強くする』


杖と老木を似たように重ねた。


『だからまあ、

一旦はこの杖と木材を預からせてもらうことになる』

「あ、それは大丈夫です」


もともとそのつもりだった。


『そして買ってきて欲しいものがある。

武器屋で一番高価な弓だ。それも色々と素材に使う』

「わかりましたが…」


記憶の限りでは、今の残金で買えるか怪しい。


『ほれ金』


袋で渡される。


「あ、どうも」


心配は無くなった。


『釣りは出ないから、真っ直ぐ帰ってくるんだよ』

「了解しました」


最後に会釈をし、工房から出る。

意外と隅々まで説明してくれる、

良心的な職人だった。


「ん?」


桃子猫が居ない。


「桃子猫さん?」


駆けて行った様子も、背後に回り込んだ悪戯もない。

工房の扉を開けると、中に桃子猫がいた。


「行かないんですか?」

「ウン、ここでちょっと休憩」

「わかりました」


そういえば水分を摂っていなかった。

指示からは逸れるが何か飲み物を買ってこよう。


『行かないのかい?』

「ウン、聞きたいことがアル」

『何を言っているのか分からないよ』

『聞きたいことがあります』

『話せるじゃないか、で聞きたいことって?』

『何でそんな…毛むくじゃらなんですか?』

『なんでってそりゃ…ドワーフだから?』

『ドワーフでも毛量は選べます。

なんで最大値にしたんですか?』

『はぁ…これが私だからだ』

『現実でもそんな顔なんですか?』

『違うよ、剃らなきゃいけないから剃ってる』

『じゃあ何で今ここでは違うんです?』

『これが私だからだ、チビで毛むくじゃらの本性だ』

『ゲームなのに本性を?』

『ゲームだからこそだ。

そういうあんたはゲームなのに中途半端だな』

『どういう意味?』

『どうありたいかじゃなく、

どういう風に見られたいかで見た目を左右させてる、

そうだろ?』

『…』

『答えなくていいさ、楽しみ方は人それぞれだ』

『…自由にしてたら、嫌われない?』

『人目につかないか、鼻につかないかすればね』

『そんなの自由じゃない』

『人から嫌われないってのは、そういうことさ』

『じゃあ…大事な人から嫌われないようにするには…?』

『そうさね…好きだって伝えることかね』

『え、そ、それは…』

『大抵の人間は、

自分を好いてくれる人を無下にすることが出来ない。

有数の貴重な人材だからな』

『もしそれで嫌われたら…?』

『元々嫌われてたってこった。

それくらいは分かるもんだろ?』

『は、はい』

『だからとりあえず伝えることだ』

『わかった』

『…』

『…』



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