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職人の工房


門から入って左に向かい、一直線。

NPCの商店や人気がなくなってきたところで、

何かを叩く音が響く。

路地を掻い潜り、音の出処にたどり着く。

見た目だけの家々の中に、生活感のある工房が一つ。

おそらくここだろう。

呼び鈴などはないので扉をノックする。


「すいませーん」


叩く音が止み、足音。

扉が開く。

薄暗い空間から、ドアノブと同じ位置に片目が覗く。


『どなた?』

「こういう者です」


貰った木片を渡す。


『ふむ…入って』


扉が大きく開き、工房とドワーフの姿が顕になる。

想像していた通りの、職人気質が扱う工房。

物がそこかしこに置かれているが、

散らばっているという印象はない。

そこの勝手を知り尽くして佇むドワーフは、

もはや何毛かも分からない毛で顔が覆われている。


「ホントに女の人?」

「こら」

『で、何が欲しいの?』

「え」


いきなり本題。


「こ、これをベースにした弓を作って欲しいんですが…」


老木を差し出す。


『これは…どこで手に入れた?』


毛の隙間から眼光が鋭く刺さる。


「えと、以前バグで岩石砂漠にスポーンした時に、

たまたま拾って」

『まあ、そうだろうね』


この素材や、あのトレントを知っているのだろうか。


『他に素材は?』

「この杖です」

『杖?』

「あ、何かこう、

弓に杖の機能を持たせられないかなって」

『それで持ってた杖を素材にして欲しいと』

「はい」

『弦の素材を訊いたんだが、まあ、いいだろう』


ドワーフは老木と杖を持って、

作業台らしき場所に置いた。


『杖の仕様は知ってる?』

「ただの棒じゃないことくらいは」

『それが分かっていればいい』


杖の頭を指さす。


『杖には魔法石が埋め込まれてる。

逆に言えば魔法石がなければただの棒だ』


予測の範疇。


『このゲームで唯一の識別判定がある武器で、

きちんとした形で収まっていないと、

杖として認識してくれない。

同一の素材に覆われているとか、

ミスリル以上の金型にはめ込むとかだ』

「つまり杖から魔法石を取り出しても、

魔法石は役に立たない?」

『ああそうだ、

少なくとも今解放されているマップではな』

「なるほど」


無理な注文をしてしまったようだ。

情報は手に入ったし謝って出直そうか。


『だからあんたの杖を基礎にして、

弓を作る必要がある』

「作れるんですか?」

『あたぼうさ』



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