二度目の怒号
南向きの洞窟を進み、
出て東に向かって川に当たり、
南東へ向かい街に着いた。
あの橋、並びに巨大な谷は、
街から北西にあるのだろう。
視界の端まで谷は続いていたので、
適当に進んでも谷には当たるだろう。
「桃子猫さん」
「ン?」
「正直その…怖くありませんか?」
「ゼンゼン?ゾンビの方が…クサそうでコワイ」
「あ、はい」
桃子猫はやはり歴戦のゲーマーのようだ。
「お」
森を抜け、谷が見えた。
途切れているところを見るに、
ここは谷の南端らしい。
対岸には、見覚えのある砂の土地。
谷間には橋らしきものは見えない。
ここから長くなりそうだ。
『ギュ』
左手に、肉球の感触。
およそ掴むという動作が許されない猫の手で、
頑張って私の指を握っている。
何も言わずに握り返す。
了承や申し出はいらない。
もう繋がっているも同然なのだから。
南端は見えなくなった。
それなのに北端も橋も見えない。
暗黒を開いている谷間を見続けるのは、
いささか気が滅入る。
「アレ」
おもむろに桃子猫が指をさす。
その先は谷間ではなく、向こう側の岸。
確かに何かある。
「これは…」
糸で連続して紡がれた木の板。
それが谷の岸に張り付いている。
「橋が…落ちた?」
そうとしか考えられないオブジェクト。
桃子猫は既に警戒態勢に入っている。
橋を渡り終えた時に、奴は現れた。
かと言って橋の付け根だけに、
現れる罠の判定がある訳では無いだろう。
今踏んでいる場所は安全。
向こう側にある橋の残骸から、
こちら側の岸の橋の位置を割り出し、
中心として弧を描いて歩く。
ジリジリと足を擦りながら注意を払う。
橋との距離感と、木の在処。
一旦は森に入るが目は離さない。
そして森を抜け、あの道に差しかかる。
よく覚えている。
獅子巨人を囲んだ道。
自分が吹っ飛ばされた砂礫が集まっている地面。
その道に足をつける時、反射的に耳を塞いだ。
「GGGGGGGGRRRRRRRRRROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOWWWWW!!!!!」




