思い出の木
なら他に手頃な木は…。
…。
あったな。
この世界に来た初日。
よく分からないモンスター同士の争いに残された、
トレントの枝のような丸太のような木材。
枕なんかにも使ったっけ。
あれなら、強いモンスターの素材であるし
強度は保証されている。
落とした場所は、砂漠を越えた橋の付近。
そこが問題だ。
またあの獅子巨人に遭遇しても、
今の私たちでは勝てないだろう。
あのバグは石投げと挑発が拮抗する、
低ステータスで起こった事象だ。
そう簡単には再現できない。
獅子巨人が出現する範囲の外に落ちていればいいが。
「焼けたヨ」
「あ、はい」
今はこれ以上火球矢を発展させられないだろう。
矢も残り少ない。
モンスターへのダメージを測るために取っておこう。
朝。
肉の加工が終わり、腰紐にも通し終わった。
「どうすル?モンスター待つ?」
「行きたい場所があります」
桃子猫は、獅子巨人で嫌な目にあったはず。
そのまま告げていいものだろうか。
断られてもいいから隠さず言おう、騙したくない。
「あの橋の所へ、あの木を拾いに行こうと」
「アレって枕じゃ無かったノ?」
「ただの枕じゃないですよ、
木のモンスターからドロップした素材です」
「倒したノ!?」
「いえ、モンスター同士の争いで落ちたヤツです」
「へー」
知らなかったということは、
桃子猫はそういう現象に遭遇しなかったということ。
あの土地自体もモンスターは多くなかったし、
稀な現象だったのだろう。
「行きましょう」
「ウン」




