焚き火と肉と弓
太陽が徐々に欠けていく。
そろそろ切りあげた方がいいだろう。
「桃子猫さん」
「ウン」
周囲の探索を終え、仮拠点に戻る。
十円ハゲの地面には、
先程仕留めた三角うさぎの残骸と、
ホーンボア一頭の亡骸。
本日の収穫は、薬草とこの二頭。
ブルーブルの依頼が残っているし、
もうすぐ夜なので今日はここに残る。
解体作業と肉焼きを終わらせても、
時間は余るだろう。
「桃子猫さん」
「ン?」
「大方の作業が終わった後、
弓を作ってもいいですか?」
「アー、イイよ!」
「ありがとうございます」
協力的な桃子猫の手によって、
解体作業や肉焼きのセッティングも
日が落ちる前に終わった。
「火球火球火球」
衝撃で組木が飛んでしまわないよう、
杖を使用しない着火用の火球を連打する。
一点の灯火が、全体に広がり立ち上る。
肉を火にかける。
「よし」
後は順々に焼いていけば、
今日と当面の食料が賄える。
「桃子猫さん、後は任せていいですか?」
「オッケー」
火と肉の世話を任せて、手頃な枝を探す。
火の光が届く範囲の木から、
いい感じの長さの枝を折る。
ひとまず曲げる。
簡単に曲げられるが、
折れるような音は立てていない。
素材として加工することを想定しているような、
扱いやすい材質。
これはひとえに、やれ、ということ。
まず枝を弓の形にするために、
しなりに慣れさせたい。
枝を曲げたまま、端に石を置き、
もう片方の端を低木の枝にかける。
やや鋭角気味だが、一旦はこれを保持しておく。
次に弦となる何か。
木の上を見上げるが、
ツルのような植物は垂れ下がっていない。
地面を見下ろす。
暗いので手探りだが、それらしいものを見つける。
校庭とかに生えていた、
網目状に地面に根を張るやつに似ている。
これは使えそうだ。
杖の石突で地面を柔らかくし、
ナイフで広めの範囲をはぎ取って、引き抜く。
漁網のように複雑に絡まりあっているが、
裏を返せばほどけばいい弦になるだろう。
見てわかる短いものを省き、解いていく。
長さにばらつきはあるが、結構な量の束になる。
一本で弦が張れるとも思えないので、
ありがたい話だ。
放置していた枝を確かめると、
ほんの少しだが曲がっていた。
あと少し、手っ取り早く曲げられる方法。
「ドシタノ?」
「煙…というよりは蒸気を借りに来ました」
最初からすればよかったんじゃないかと、少し思う。
木材は濡らした後曲げて、
そのまま乾かすと曲がったままになることを、
今思い出した。
蒸気でそれができるか、
このゲームに蒸気という概念があるのかは、
定かではない。
焚き火と肉、それらより少し上の位置に、
曲げた枝を差し出す。
結構熱い。
長時間やっているとHPが減ってしまいそうだ。
少し離して経過を見るが、大した変化は見られない。
固定して保持した方がマシだろう。
『グゥ』
「あ」




