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ちがう、そういうことじゃない


「…食べすぎちゃったネ」

「はい…」


いつもの広場で、飽きるほど食べていた。

現実とそう変わらない味付けに、

現実よりもお得な量。

食わずにはいられなかった。

だがそのおかげで、現状腹へりと乾きは無い。

遠出も難しくないだろう。

空も白んできた。


「クエスト、行きましょっか」

「ウン!」



原初の森林。

例の薬草のクエストと、

その他狩ったことのあるモンスターの

討伐依頼を受けてやってきた。

薬草の群生地は森の中に散在しているので、

見つけるのはそう難しくないらしい。

形は、初回ログイン時に

腰に身につけていたものを覚えている。

討伐クエストを解消する方が難しいだろう。


『ガサ』


前方から、草をかきわける音。


「あ…」


プレイヤーだ。

人間の男。

初期装備。


『どうも…』

「あ、こんにちは…」

「チハ…」


何事もなく、すれ違う。

これで三人目だ。

ラッツのように森でプレイヤーと遭遇したことは

何度かあるが、この密度で会ったことは無い。

このゲームは、未だ人口を増やし続けているようだ。

自分の事のように嬉しい。


「コワイね」

「え?」

「いつヤられるかワカンナイ」

「あー」


確かに、その発想はなかった。

このゲームにPVPはあるが、

実際にやられるところを見たことがない。

次のイベントで本格的になるのだろうか。


「ま、

桃子猫さんなら大抵の攻撃は受け切れるでしょう」

「そういうことじゃナーイ」

「?」



森を奥へ奥へ進む。

目が悪いのか運が悪いのか、

未だ薬草の群生地は見つけられずにいる。


「お」


少し開けた場所に出る。

ほんの少し、半径十数メートルだけ木が生えず、

光が差し込んでいる。

その光を浴びて、かつて見た薬草が群生していた。


「ありましたね」

「ウン」


適当な場所にしゃがみこみ、薬草を摘む。

やはり同じもの。


「クエストで渡すものと、あと私たちが

使うものでできるだけ取っていきましょう」

「オッケー」


そう言いながら肉球で挟む桃子猫は、

なんとも幼気だった。


「これくらいか…?」


かつて財布だったものに、パンパンに詰め込んだ。

薬草九十九個詰め込んだ道具袋も、

こんな感じだったのだろうか。


「ランさん」

「来ましたか」

「ウン」

『ガサ』


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