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口に糊する


「店、出ましょうか」

「ウン」


受付に結晶を返し、店を出る。

ただ、雑踏に踏み込む前に立ち尽くした。

やることが無い。

空はまだ白む気配すらない。


「お腹スイタ」


桃子猫が腹を抑えている。

言われると、こちらも空腹感が出てきた。

救済で肉を焼いた時以来、

食べていないような気がする。


「どこかで休憩しますか」

「シマスカ」


とは言ったものの、

土地勘がないので飲食店の場所か分からない。


「何か匂いで分かりますか?」

「ンー、わかんない」

「そうですか…」


まあ知らぬ土地を練り歩くのも乙だろう。


「地道に探しましょう」

「ン」


とりあえずは広場を回る。

放射状に広がる店は、

近いジャンルの店で通りを形成している。

染色屋がある通りにはアクセサリーショップ。

その隣の通りには防具屋。

沿うように回っていけば

いずれそれらしい店にたどり着くだろう。


『クンクン』

「イイ匂いスル」

「どこら辺です?」

「スグそこ」


桃子猫が指をさす。

その通りは、

有力な大きい店舗が前に出る形ではなく、

細々とした露店が続いていた。

所謂出店のような形態で並んでいる。

その通りに入り、歩く。


「オー…」


ここまで近くなると、流石に人間の鼻でもわかる。

祭り屋台の間に通るような、料理の匂い。

火を使うことによる熱気と音。

目的の通りに着いたようだ。

道行くプレイヤーは、両手に軽食を抱えて、

笑みを浮かべている。

もはや退路は絶たれた。

食うしかない。


「桃子猫さん、どれからいきます?」

「肉!」

「ですよね」


入口から始まって、散々煽られてきた。

そのフラストレーションを今解き放つ。


「コレとコレとコレ」

「あれとそれください」


目につくものはほとんど買った。

そのおかげで

財布は飯をぶら下げるマイバッグと化した。

必要経費だと割り切るには、唇に脂が乗りすぎた。



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