ここまで10分、ここから1時間
言われた通り、冒険者ギルドの向かいの道を進んだ。
辿り着いた場所は、
正門から続く大通りよりも濃い賑わいとなっていた。
まず一に、プレイヤーの質が違う。
初期装備を全身に纏うものはほぼ居らず、
金属光沢たちが星のように輝いている。
そして視線を動かさずとも
七色がコンプリートできるほど、
装備がカラフル。
染色屋の本舗もここにありそうだ。
目的は弓矢と鉤爪。
喧伝する者はいないので、
看板で判断することになる。
「うーん」
背が高いプレイヤー達が密集しているせいで、
看板が見えない。
誰も彼も身長を高く設定しているようだ。
「ランさん」
桃子猫が袖を引く。
「はい」
「持ち上げテ」
「はい?」
反論を許さない万歳。
為す術なく持ち上げる。
「ンー」
持ち上げたまま回転する。
少し恥ずかしい。
「アッタ!」
一方向を指さす。
自分からは見えないが、
そこに武器屋があるのだろう。
降ろす。
「行コ」
「ええ」
人を掻き分けて進む。
徐々に、人の流れができ始める。
やがてそれは一つに纏まり、一つの商店へ流れた。
剣の看板。
分かりやすい、武器専門店の証。
それを流れのままに一瞥し、入店する。
中はかなり広い。
デパートの店舗を二三貸し切ったような、
贅沢な広さ。
その中に武器が種類ごとに、分かれて置かれている。
「さて…」
人が中で枝分かれしたことで、多少空いた。
これなら探しやすい。
「見つけました」
棍やヌンチャクなど、
武闘家らしい武器が置かれている中に、鉤爪がある。
桃子猫と同じ事情からか、
獣人たちが比較的多く集まっている。
「どれにします?」
値段を見る限り、どれも買える。
「ンー」
おっと。
選べる余地があるのなら、桃子猫は長考するだろう。
長くなりそうだ。
ついでに弓矢も見て探すか。
辺りを見回す。
「…」
真後ろに、斥候向けの装備として丸々揃っていた。
だが記憶している鉤爪の値段と合わせると、
金が足りなくなる。
一番安い組み合わせでもダメだ。
ここは何も言わず、桃子猫に気持ちよく買わせよう。
「ンー」
「…」
夜。




