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久方ぶりの気分

覚醒する。

広場の長椅子。

太陽が真上に上っている。

目の前にはやはり看板に群がる、

仕様の知らないプレイヤー。

先日よりは人数が減ったか。

さてどうするか。

先に起動したのはいいものの、

30分暇を潰す用意などない。

かといってこの場を離れれば

桃子猫とはぐれる可能性がある。

大人しくぼーっとしとくか。


『マジ会社辛いわ…』

『ガンが見つかったんじゃよ…』


耳塞ごうかな。

それかプレイヤーの装備の観察でもしていよう。

やはりまだ初期装備が多いな。

チラホラと、

鎖帷子や金属製の武器を纏う人間を見つける。

だがやはり、

武器か防具どちらかは初期装備のままだ。

攻撃偏重か防御偏重、個性が大いに出ている。

このゲームにはヘイトという

概念が備わっているので、役割分担が必須だろう。

なら私は攻撃偏重になるだろうが、

それだと桃子猫にヘイトを押し付けることになる。

ゲームは強制されず、自分で動ける方が楽しい。

私も防御手段を持って、

桃子猫が攻撃する機会を作ってあげたい。


『モフ』


何度も味わった、毛の感触。

誰かなんて、見なくても分かる。


「桃子猫さん?」


返事は帰ってこない。


「あれ?」


当たりを見回す。

桃子猫はいない。

確かに腕に触れたはず。


『ピョコピョコ』

「…」


長椅子の下から、見知った尻尾が見える。


「どこだァー?」

そっと手を近づける。

『ギュ』

「ニャン!?」

「なんだこれェー」


わざとらしく揉んだりする。


「不思議だなァー」

「ニャ、ニャーン…」

「何だ猫かァー」


手は離さない。


「桃子猫さん遅いなー」


痛い所を突く。


「あの…桃子猫デース」

「そっか、よかったー」


尻尾で緩く引っ張り出す。


「イヤー」

「何してるんですか、全く」

「エヘヘ」


紛れもなく桃子猫だ。


「エイッ」

『ギュ』

「おっと」


飛びつかれ、抱きつかれた。


「コンバンハ」

「こんばんは」


別れたのは数時間前なのに、

もう再開の気分が出来上がっている。


「今日ナニスル?」

「新しい装備を整えて、

薬草取りのクエストに向かいたいと思います」

「面白ソウ!」

「それはよかった、早速行きましょう」

「ウン!」


腕を離し、手を繋いで、歩き出す。


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