冒険のための準備
「ん…」
嫌なことを思い出した。
「ついたよ」
確かに、アパートの前。
「いやーありがとうありがとう」
「はいはい」
荷物を持って車から出る。
「そんじゃまた」
「はいよ」
車は夜の闇に紛れて行った。
「ふぅ」
今日は色々なことがあった。
そしてこれからもある。
早速準備しなければ。
鍵を開けて中に入り、
適当なところに荷物を置いた後、
顔を洗い自室に入る。
パソコンの電源をつけた所で、思い当たる。
こちらと桃子猫の到着には、
さすがに差が生じるだろう。
というか、
桃子猫はどうやって
今日ドッペルフリーをするつもりなんだ?。
それも踏まえて訊いてみよう。
『何時に到着しますか?』
『9時には家に着くそうです』
『ドッペルフリーはどうやってログインしますか?』
『頭に装着する機械を持って来ているので、
妹のパソコンを使ってやってみます』
『では、
準備もあると思うので10時から始めますか?』
『それがいいですね』
話がまとまった。
ただ1時間ほど暇になった。
あの言葉を思い出す。
仕事は来ていないか。
来ていない。
何か、エネルギーを発散させられるものはないか。
溜まった皿を洗うも、落として割ったりはしない。
部屋の掃除を行うも、何も壊れない。
ただ家が綺麗になった。
とりあえず太腿をつねる。
これで一旦は問題なしとする。
スマホを見ると、30分が経過していた。
もうそろそろか。
ベッドに横たわり、ヘッドセットを装着し起動する。
ボタンで画面を操作し、ドッペルフリーを選択。
意識が霞む。




