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バグらせ体質



埼玉。

家の最寄り駅に着く。

歩き疲れてはいるが、歩かなければ着かない。


「乱子」

「ん?」


聞きなれた声に呼び止められる。


「あ、社長、偶然」


ショートボブでスーツ。

効率的なデザインを重視している。


「偶然だね、乗ってく?」

「よろしくぅ」


社長の後に続き、地下駐車場に至る。

黒の軽に近づき、

ロックが開いたと同時に助手席に座る。

後部座席に紙袋を置き、シートベルトを閉める。


「いやー助かったよ、今日は珍しく歩き回ったから」

「だろうね、その荷物、

あとそれよりも珍しいことあるでしょ」

「何?」

「化粧だよ、それにノリにノッたやつ」

「あー、これはまあ、相手の好意かな」

「そんなに仲良いの?」

「うん」


エンジンがかかる。


「毎度言ってるけど、即効で寝るんじゃないよ?」

「わかってる」



「スヤァ」

「全く…」


地下駐車場から信号にかかるまでには、

既に寝息をたてていた。

こっちは話したいことが沢山あるっていうのに。

それ程安心して寝られるというのは、

捉え方によっては悪くない話だけど。


「むにゃむにゃ…」

「全く…こっちの気も知らないで」


出張帰りで空港で食べていた頃に、

乱子と見知らぬ人物が現れた。

ゲーム内の知り合いと会うとは聞いていたが、

明らかに美人局とかそういう類の人間に見えた。

そして会話の中に不穏な単語も拾ったので、

放ってはおけずその後も尾行。

特に心配になるようなことも無く、

甘酸っぱいことをしていたので、

途中から離れてここで待機していた。

まあ、

知り合いの痴態が見るに堪えなかったのはある。

…やっと、前に進む時か。

守る必要が無くなるのか。



昔から、モノをよく壊した。


「あーあ」

「やっちゃった」


それは、形あるものだけじゃなかった。


「あいつ…マジ何なの?」

「無視しよ無視」


あらゆるモノが、私の目の前で壊れた。

その才能に私は常々振り回され、

責任を取らされ続けた。

導き出した回避法は、接点を無くすこと。

触れなければ、壊れない。

ならば触れない。

それで何とかやってきた。

だがやはり寂しくもあった。

高校で社長と出会えたのは幸運だった。

その頃からゲームを作っていた社長の手伝いで、

壊してもいい環境を得た。

そのおかげか、

今はモノが壊れることが少なくなった。

しかし忘れるな。

最高の状態にこそ最悪が訪れることを。



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