改造手術
エレベーターで二階へと訪れる。
そこには女性比率の高さの、答えがあった。
二階は婦人服、
化粧品など女性を主な客とした店舗が出ている。
それらが軒並み、セールをしていたのだ。
カップル割の文字も幾つか見える。
「アー、ここで買った方が良かったネ」
「んー、でもまあ、いい買い物はしたと思いますよ」
実際、ザ・婦人服といったものは、
私には似合わないだろう。
手を引かれ歩き出す。
一階よりも、先程の雰囲気が濃い。
「あれ何て書いてあるノ?」
桃子猫が特設の旗に指を指す。
「あれは…その、
カップルだと割引きされるって書いてます」
「フーン」
掌があったまってくる。
どちらの熱かは分からない。
触発され、加熱される。
だけど今度は、手を離さない。
と言うよりも、離すことが出来ない。
私に強要させるように、
桃子猫が強く手を握っている。
「ぁ」
手首をひねらせて、
恋人のそれのような繋ぎ方となった。
「コレで、安く買い物できるネ」
「う…」
ここに来て、最大限に決めてきた。
逃げる術はもう、ない。
何をそんなに焦ることがあるのだろうか。
私以外の目的があまりない旅行のはず。
だというのに足取りは軽く真っ直ぐで、
目的地があるような…。
直進だけでたどり着いたのは、化粧品売り場。
縁で言えば極端に分かれている。
棒立ちすることになるだろう。
「いらっしゃいませー」
『グイ』
挨拶と同時に桃子猫は私を体に寄せ、
店員と目を合わせた。
店員は見るからに向こう側の人間だった。
だからこそ通じ合うものがあるのだろうか。
店員は何かを察し、奥へ案内する。
私は桃子猫に引っ張られる。
「ただ今当店ではレディースデー並びに
カップル割を実施しておりー」
そんな言葉を隣で囁かれながら、連行される。
そして鏡台の前に座らせられる。
この時点で、私はやっと理解することが出来た。
そして既に遅かった。
桃子猫によって緩く拘束されている。
目の前の光景は、
さながら改造手術を施される直前のそれだった。
「これは…」




