深夜0時は明日か今日か
意識が覚醒する。
ベッドから起き上がり、ヘッドセットを外す。
腸は躍動していない。
お腹もそれほど空いていない。
スマホを起動すると、
時刻は0時12分と表示されている。
それと同じく、
通知欄に未読のメッセージが溜まっていた。
おそらく桃子猫からだろう。
見るのが億劫だが、眠気もないし返信してしまおう。
Zを開き、トーク欄を見る。
『迎えに来てくれますか?』
『返信待ってます』
簡潔であり、彼女の準備の様子が伺える。
ただこれだけ期待されているのに、
外れた発言をするのはどうなのだろう。
とりあえずあのことに言及する。
『妹さんは頼れませんか?』
『妹は大阪に住んでいるので』
『そこからだと蘭さんに会えません』
蘭とは私のことだろう。
それよりも、やはり会うことを期待されていた。
しかもかなり状況は差し迫ったように聞こえる。
何か折衷案はないものか。
正直可哀想になってきたので、会うことには会おう。
だがその後の、泊まる場所だ。
さすがに日帰りという訳にはいかないだろうから、
どこかには泊まるはず。
この家は嫌だ。
せめて桃子猫の正体を見極めてから。
ここはホテルか、妹さんの家かを選んでもらおう。
『明日はどこに宿泊しますか?
申し訳ありませんが私の家は宿泊できません』
『それは残念です。では妹の家に泊まるので、
妹の迎えが来る間まで一緒にいてくれますか?』
アイコンとともに媚びがチラつく。
だがこれが最もらしい妥協案だ。
『分かりました』
『ありがとうございます!
空港や到着時間は後でお知らせします』
適当なスタンプを押す。
これでもう、ほとんど確定も同然になってしまった。
今更ながら後悔する。
その後悔の原因は桃子猫。
桃子猫は悪くない。
ただ会いたいと言い、会いに来るだけ。
それに対してどうこう考えているのは、この私。
この際白黒はっきりつけてしまおう。
会ったとなったら、その場でデートが始まるだろう。
そこから、少しでも詐欺まがいの何かがあれば、
縁を切ろう。
そうしよう。
で、今から何をしよう。
取り敢えず桃子猫の行動を計算しよう。
桃子猫の住所らしき場所から、一番近い空港を検索。
そして東京への直行便の時刻を把握。
やはり昼頃には東京に着く見込みだ。
どの空港に着くかでこちらの
出発時刻も変わってくるが、
それは桃子猫の連絡待ちだ。
来ているだろうか。
Zを開くと、
桃子猫とは違う未消化の通知が一つ残っていた。
社長からだ。
『今いい?』
9時での送信。
丁度ゲームをしていた頃だ。
既読もつけてしまったしこんな深夜なので、
両方返信遅れちゃったねでお相子を仕掛けよう。
『いいよ』
即既読が付いた。
やっべ。
『寝なさい』
『寝ます』
『寝るな』
『返信しなさい』
『ゲームしてました』
『どうせドッペルフリーでしょ?』
『その通りでございます』
『ちゃんとご飯食べてる?』
『食べてます』
『ところで今日暇?』
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