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慣れた単独作業


一人だからこそできることもある。

協力がいらないことや、見ていてもつまらないこと。

素振りや壁あてをじっと見つめる人がいたら、

その人は脈アリだと思う。

街の中の、とある施設に足を踏み入れる。

踏み入った瞬間、

ギルドの時と同じように喧騒が途切れる。

訓練場。

デートの時に見かけた、丁度いい施設。

試してみたいことがあった。

天井は無く、

足場に砂が敷き詰められた石造りの建物。

その壁に向かって、杖を構える。


「火球」


杖に光が収束し、

そして放たれた文字通りのそれは壁に当たり、

閃光と共に散った。

火球を投射する練習がしたかった。

習得してからそんな暇は無かったし、

桃子猫とのタッグだとナイフの刺突が

最も効率が良かったりと、

使う機会があまり無かった。

この期に魔法の仕様を確かめておいた方が

いいだろう。

老兵との戦いでは、敵に魔法が上手く当たり、

かつ地面にも思い通り当たった。

そしてこの時も。

モンスターが近くにいなければ、

魔法が発動しないということは無いようだ。

問題は対象への自動追尾があるか否か。

この形の訓練場には、大抵あれがあるだろう。

付近を見渡す。

入口近くの壁に、二つのレバーが設置されていた。

取り敢えず二つとも下ろす。

先んじて振り向くと、

少しの地面の揺れと共に案山子と的が現れた。

おそらくは武器を叩きつけるための案山子と、

矢を射掛けたり魔法をぶつけるための的。

完璧なレパートリーだ。

案山子の正面に立ち、杖を構える。

そして杖の頭を案山子から少し方向を外す。


「火球」


杖から火が放たれる。

その火は案山子に引き付けられることなく、

壁に着弾する。

戦闘の訓練で使われている案山子なのだから、

モンスターに近い性質を備えているだろう。

可能性の域は出ないが、

自動追尾の存在はやはり疑われる。

次に射程距離。

施設の隅に行き、その角の砂に石突をめり込ませる。

杖を脇で挟み角度を四十五度に調節する。


「火球」


熱が収束し放たれる。

風に流されることなく

思い通りの放物線を描いている。

そして施設の中央を過ぎた辺りの中空で、

自ずと爆発した。

射程距離は二十メートルといったところか。

地面から杖を抜き、今度は構える。

竹槍を構えるように。


「火球!」


唱えると同時に、空に向かって突く。

突きの勢いが乗った火球は、

先程よりも弾速が速く、

方向はずれたものの概ね先程よりも

奥の地点で爆発した。

厳密な射程距離が設定されている訳ではなく、

時間によって爆発する可能性がある。

次は精度。

着弾地点にばらつきが出るのなら、

有効射程も考えなければならない。

的の前に立つ。

地面の砂に石突を突き刺し、

先程と似た要領で着弾地点を的の中央に調節する。


「火球」


的の中央から右に逸れた地点で爆発する。


「火球」


中央からやや左に命中する。


「火球」


中央右上に、最も大きく逸れる。

何度か続けて唱えるが、

一つとして同じ着弾地点は無かった。

結果から見るに、

魔法には精度があり、かなり

ばらつきが自由であるようだ。

まあリアル志向だから、当然と言えば当然の仕様だ。

相手を人に近い大きさのモンスターと

仮定した場合、有効射程は十メートル程だろう。

十メートルなら、杖を相手の中央に構えていれば、

最低かすりはする。

だからこそ、老兵との戦いでは命中したのだろう。

あと調べることは…。

火球の当たり判定か。

この施設では、ダメージが無効化されるだろうか。

一応脱げる服は脱いでおこう。

初期装備と新品のローブを脱ぎ、案山子に掛ける。

そこから離れ杖を両手で持ち、自分に杖を向ける。


「火球」


一瞬で視界が白に染まる。

そして徐々に元の色彩を取り戻す。

感触でだが、火球の性質が掴めた。

呪文を唱えた瞬間、

ボールがぶつかったような衝撃が最初に来た。

その直後、爆発した。

目標や物体に近づけば爆発、

ではなく明確に接触して爆発する判定があるようだ。

上手くやれば、口の中に押し込んで起爆、

とかもできそうだ。

今度は杖に手をかざしてみる。

これで即爆発か中断されれば、

至近距離では使えない証明になる。


「火球…あ」


爆発は起こらなかった。

その代わり、炎を纏った球が手にめり込んでいる。

これは…発動しているのか?。

確かめようとした瞬間消えた。

丁度空中で爆発した時と同じ時間だ。

もう一度手をかざす。


「火球」


すかさず地面を殴りつける。

閃光。

砂塵が舞う。

発動した。

バグかは分からないが、

魔法が顕現する瞬間干渉すれば、

発動することなく状態が維持され、

かつ魔法自体の性質は残る。

だが火球殴りは自傷してしまうので、

実戦では使えないだろう。

流石にもう調べられることはないだろう。

さてここを出て次にすることは…。

ない。

ここからクエストに行けば、

いい時間まで止められなくなる。

そしたらまた、

究極に出して摂食することになってしまう。

止め時としては、今がちょうどいいだろう。

訓練場を出て、広場に行く。

いつもの長椅子に座り、第三の乳首を押す。


『ゲームを終了しますか?(はい)(いいえ)』


はいを押す。



最後までお読みいただきありがとうございますヽ(;▽;)ノ

こんな私にいいね、評価、ブックマークして下さりありがとうございます(;_;)

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