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掌の上


「…」

「あ」


また駆けていった。

また追いかける。

そしてまた人混みを急に横切る。

たどり着いたのは、またもや商店。

だが先程とは打って変わった、

小綺麗な内装にファンシーな飾りつけがされた、

どこか既視感のある商店だった。

店内の獣人の店主と、

これまた獣人の桃子猫によって、既視感の正体が明かされる。

遊園地のお土産屋だ。

現実世界を忘れたいがための、

効率を捨てたデザインの本舗だ。

商品を見回す。

基本的には、

髪留めやリボンなどの戦力増強に繋がらない

装飾品が主だ。


「ウーン」


桃子猫は色々と吟味しながら唸っている。

それに対して、店主は静かだった。

洋服を着た長身の白い猫で、

寝ているのか覚めているのか分からないほど、

動きがない。

置物のような雰囲気があるからこそ、

殊更お土産屋を連想してしまう。


「ネェ」


声に振り向く。


「コレどう?」


桃子猫が、頭にリボンをかざす。


「そうですね…」


小さな猫の獣人が、頭にリボンをつけるのは、

やや狙いすぎのような気がする。

それに鎖帷子との相性も悪い。


「一旦、鎖帷子を服の下に着込んでみません?」

「分かっタ」


周囲を確認し、店主からの視線を体で防ぎながら、

服を着直させる。


「ドウ?」


改めてリボンをかざし、訊かれる。

予め予想していたので、答えは用意している。


「似合ってますよ」


月並みな言葉だが、現状の距離感では最適解だろう。


「…」


不満気な顔をして、桃子猫は明後日の方向を向いた。

またどこかへ走り出すのかと、身構える。


「…ニャーん」


不意打ちだった。

そっぽを向いたと思ったら、振り返った。

そしてあざとく上目遣いをし、

文字通りの猫撫で声を出した。

リボンを額に装着して。


「かわ…いい…ハッ」


反射的に、口を抑えてしまった。

それが逆に、

無意識に出た本音ということの証左となり、

付け入る隙を与えてしまった。


『ニヤ〜』


表情の動きが少ない猫顔であるというのに、

それはそれは分かりやすく笑顔になる。


「いや、今のは…その…」

「ウフフー」


言質を取ったと言わんばかりに、訂正を流す。

そしてリボンを外し、

スキップでカウンターに歩いていった。


「コレ買います!」


意気揚々と買い求めたが、

白猫の店主は首を横に振った。


「エ?」


この状況での首振りは、

購入の拒否ということだろうか。


「非売品みたいですね」


また横に振った。

だとすると、都合のいい解釈をしてしまう。


「⋯お代はいらないと?」


頷く。


「いいんですか?」


頷く。


「では…」

『ポム』

「?」


桃子猫にリボンを手渡される。


「付けテ」

「もう…」


この際全部のわがままに付き合おう。

屈み、裏に付いたピンで額の毛を挟む。


「どうぞ」

「エヘヘ」


立ち上がり、店主を見る。

気が変わって催促するといった様子もない。


「では…ありがとうございました」

「アリガトございシタ」


変わらずの半目で見送られる。

相変わらず不思議な人だ。


『ふふ…』



桃子猫の爆走は治まったが、

相変わらず先導は続いている。

思えば、

今夜は桃子猫の手玉に取られてばかりの夜だった。

デートという言葉から、

上手く私に責任を感じさせて

追いかけさせる口実を作った。

そしてまんまとデートが始まった。

楽しかったからそれでいいけど。

ふと、景色に懐かしさを覚える。


「ここは…」


桃子猫と出会い別れ、

ログアウトしログインした広場。

桃子猫が先に長椅子に座る。

その流れで座る。


「ランさん」


呼吸を置かずに名前を呼ばれる。


「はい」

「私ニホン行きまス」

「はい…はい?」

「今から準備すルからログアウトする、オヤスミ」

「え?あ…」


有無を言わせずログアウトしてしまった。

また似た手法で、約束らしきものを取り付けられた。

ここまで来たらもう何の気も起きない。

桃子猫が来るのか。

現実の桃子猫が…。

あの写真の桃子猫が…!?。

途端に悪い気が起きてくる。

実物と会うには、まだ早い。

というか正直会わないなら

それに越したことはないくらいだ。

会った瞬間、この関係が終わる可能性だってある。

それは嫌だ。

それだけは嫌だ。

だが会うことを拒否したら、それこそ終わる。

急な仕事と偽るか?。

けど平日の昼に連絡を取りあった時点で、

暇なのはバレているだろう。

会うしかないのか。

いや、待てよ。

会うとは言われていない。

日本に来るとだけ言っていた。

まだ会うと決まった訳じゃない。

…いや会うでしょ。

即決した風で会わないとしたら、

何がきっかけで日本に来るか分からなくなる。

自分がきっかけだという確証もないが。

ともかく、会いに来ることは来るだろう。

海外に行ったことがないので、

空港や飛行機のさじ加減は分からないが、

隣国なので明日には到着するだろう。

早朝の便に乗ったとして、到着するのは昼前。

羽田か成田かは後で尋ねるとして、

どこ集合になるのか。

空港か間の駅か。

またまた待てよ。

桃子猫は結婚した妹の家に行く、

という予定があると聞いている。

案内はその妹に任せるんじゃないか?。

そうなると、

わざわざ迎えに行く準備を考える必要は無い。

ゲームを続けよう。

そうしよう。



最後までお読みいただきありがとうございますヽ(;▽;)ノ

こんな私にいいね、評価、ブックマークして下さりありがとうございます(;_;)

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― 新着の感想 ―
[良い点] おおおお!!とうとう現実で会う展開に!?楽しみ!!
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