林檎猪
先程から歩いて数刻。
四人は足を休めて肉を食らっていた。
野生のリンゴが群生した地点で、
リザードマン達が乾きを心配したので
お言葉に甘えた。
リザードマンは果実によって腹は満たせないが、
乾きは潤せるらしい。
『そういえばランさん』
「はい」
ラッツがリンゴを指さす。
『かのホーンボアは別名、
林檎猪と呼ばれてるんですってよ』
「へー林檎猪」
『なんでも求愛時に、
ご自慢の角にリンゴを刺すから
そう言われているんだとか。
そんなことより漫画とかで別名〜とか
紹介されるやつ、大概別名で呼ばれること
ありませんよねー』
「確かにそうかもしれませんね」
今なにか、
大事な事柄が多弁に流されていった気がする。
『となると、林檎猪はただの設定の
補完のための名前かもしれませんね』
そうそうその部分。
「もし発情期とかだったら、
ここはかなり危険になりますね」
とりあえず懸念点は言葉にできた。
「「…」」
『『…』』
「ま、まさかそんな都合よく現れるわけ…」
『ないですよーまさかそんなー』
「ですよねー」
『ズン』
予定調和のような地響き。
『ズン』
一定のリズムを刻む、その生体認証。
『ズン』
耳を立てて警戒している桃子猫が、
森の一面を指さした。
人外の双眸。
「ビーミェン!」
私に分からない言語。
それの意味するところは、
考えるまでもなく避けろということ。
「ッ!」
地面を蹴り、身を翻す。
あわや足が引っかかるかという寸前で、
回避することが出来た。
『バチュッ!』
桃子猫だけが正面を見据え、衝突を弾いていた。
『ブルル!?』
自分の衝突が止められたことを驚く、
怪物の全貌が顕になる。
姿形はホーンボアではあった。
問題はその大きさだった。
ワゴンのような、その体躯。
角もそれに比例して大きく、
自分が所持しているものとは比べ物にならなかった。
この個体の全てが、
クエストの討伐対象だと確信させる。
それはそうと、
パリィに成功したのでホーンボアの目玉を
ナイフで突く。
『エエエエェェェ!』
初見のホーンボアのように、苦しみもがく。
『ドズン』
大きな振動が一つ。
小刻みに地団駄を踏んでいる、
このホーンボアのものではない。
『ドズン』
地震などでは無い。
咄嗟に、桃子猫が避けた。
それを見たと同時に地面を蹴った瞬間、
果樹が真上を通り過ぎた。
次点で砂礫が顔に突き刺さる。
あのワゴン程のホーンボアはもう居ない。
既に恋しい。
入れ替わりで来た、
10トントラックのようなホーンボアに比べれば。
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