あれは...
「あれは...?」
視界の真ん中に収めると、
それは視界いっぱいに広がる。
煙だ。
「焼畑農業…か何かですかね」
「分からん…行ってみよう」
火のないところに煙は立たない。
火元を見れば、どういう意味の煙か分かるはず。
だが同時に、
嫌な予感が成就してしまうかもしれない
という不安に襲われる。
計画の運びの悪さ。
その原因が、火元にあるような気がしてならない。
煙から目を逸らし周りを見ると、
肉食たちとすれ違っていることに気付く。
奴らは火元から街に行っている。
立ち寄る理由があるということだ。
徐々に足取りが重くなる。
見たくないという気持ちが、
見なければならないという気持ちに
上回りそうになる。
だがそうなる前に、
一陣の風によって全貌が明らかになってしまった。
「こ…れは…」
「…ッス」
煙の正体は、芝を焼いているのではなく、
焚き火の煙だった。
遠目からわかるほどの煙を焚いた、
大規模なバーベキューが開催されていた。
そこにいるのは、
大多数がターゲット層であった肉食たちだった。
人間やドワーフもちらほらいる。
その全てが焚き火を囲み、
談笑しながら肉を焼いている。
何故こんな催しが行われている?。
ゲームのイベント?。
というかそもそも、この火は誰が用意した?。
『あ!』
大声によって思考は破られる。
『肉買い占めてたエルフだ!』
その一声により、肉食たち全員がこちらを向く。
ある犬は立ち上がり、あるトカゲは指を鳴らす。
『オウオウ、オメーが肉を買い占めてたってやつか』
『随分と姑息な手段を使ったじゃねぇの?』
こいつら、現実じゃ絶対本職の人間だろ。
「ゲームの仕様を手探りで確かめてただけですよ」
『なら何度も買う必要ねぇよなぁ?』
こちらの動向が掴まれている。
まあこれだけ人が集まれば、
目撃談も富むことだろう。
「元の肉屋の売り方が気に食わなくてですね」
『ほーん』
肉食二人は不満げに、元の場所に戻った。
危なかった。
下手に真意を察せられる言葉を放てば、
プレイヤー間での抗争に
発展する事態となる可能性があった。
そうなればエルフの圧倒的不利。
逆に街に閉じ込められる未来もあった。
「団長…」
「情けないところを見せちまったな」
「そんなことないッス!俺、感動したッス!」
「そうか…ありがとう」
安い言葉だがそれでも嬉しい。
集団を迂回する振りをして、大回りに移動する。
そして集団を観察する。
どこかに肉を供給するメカニズムがあるはず。
「あいつは…」
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