傍から見た彼ら
「ふぅ…」
買い占めた肉は、粗方店頭に並べ終えた。
エルフの体は物を運ぶのも一苦労だ。
「いよいよですね、団長」
新人がいやらしい笑みを浮かべながら言った。
「ああ」
今、街中の肉がここに集まっている。
肉以外腹持ちの悪い獣人と、
肉しか食べられないリザードマンは、格好の餌だ。
一晩中喧伝していた効果もあり、
何人かが留まりこちらの様子を伺っている。
それも腹を空かせた目で。
どうやらネギまで背負ってきたらしい。
大通りに構えたかいがあった。
「看板、準備出来ました!」
「よし、そこの棚の横に立て掛けてくれ」
「了解!」
後は時間が来るのを待つばかり。
大通りの開店は、定刻の鐘が合図だ。
辺りの店も待ち構えている。
「開店を見届けてから、
俺はまた肉の買い出し班と合流する。その間頼むぞ」
「了解!」
ふと周りの店を見ると、
店主たちが体勢を整えていた。
いよいよか。
『ガンガンガンガン!』
この街で最も大きな音を皮切りに、
大通りは騒然とした。
「本日開店!エルフの肉屋ルックウッド!
獣人の姉ちゃんもリザードマンのあんちゃんも、
寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」
「じゃ、行ってくる」
「「行ってらっしゃい!」」
肉屋の前に着く。
予定通り団員が列を成していたが、
何故か進んでいない。
「あ、団長」
「よう、なんで列が進まないんだ?」
「いやそれがですね、
我々が来る前から並んでた奴らが、
ごねているんですよ」
「なるほど」
列を辿り、先頭を覗く。
『だから、
ずっと並んでた報いが欲しいだけなんだって』
『『そうだそうだ』』
「だからねえ、
それが営業妨害だったって言ってんだよ」
「ちょっと待ちな二人共」
団員の手前、介入せざるをえなかった。
「ああ、エルフの旦那!」
『あん?』
「リザードマンさんらよ、
まだ新参者である俺たちが、
余計なことしてねだっても
仕方の無いことだと思うぜ?」
『二人共って言う割には、
俺だけに圧力かけてきてるじゃないか』
『『そうだそうだ!』』
「店主も、前例を作ることと悪評が広まることとを、
長く測りにかけすぎているんじゃないか?」
「…そうかもな」
「だろ?ここは穏便に、
両者の言い値の間を取れば文句もないはずだ」
『チッ…仕方ねぇ』
『『そうかも』』
リザードマン達は肉を購入した後、
人混みへと消えていった。
「全く…」
「ああいう弁えてない輩は、どこにでもいるもんだ。
俺は並び直して買うとするよ」
「あいよ」
「全員揃ったな?」
「はい!」
朝の買い占めは終わった。
「総計は?」
「牛肉一切れ、豚肉十切れ、鶏肉十切れ、
ウサギ肉十切れ、猪肉十切れ、以上です」
「牛肉の数が少ないな?」
「ええ、先頭に並んでいたリザードマン達が、
上限一杯まで買っていったようで…」
「ふむ」
腕を組みしばし考えるが、
特に危惧すべき事項が見当たらない。
「腹持ちがいいとはいえ所詮リザードマン三人組、
私たちの独占に影響することは無いだろう」
「そうですね」
「よし、お前たちは肉を店に運んでくれ、
俺は畑を見に行く」
「ラジャー」
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