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ここまで来て


「ランさーーーーん!」

「おっふ」


引きずり出されて抱きつかれた。

半ば押し倒された形。


「へァ…」


目の前に茶トラの猫。

驚いて変な声を上げている。


「あ、この子桃」

「タオちゃんですか」


机の足の裏に隠れてしまった。

物から生き物が出てきたらそうなる。


「シィ…」


あ、ちょっと怒ってる。


「ランさ〜ん」


桃子猫は構わず身体中を撫でくりまわしてくる。


「ちょっと…ん…一旦落ち着きましょう」

「わかった」


改めて部屋を見回す。

ザ、監禁部屋を想像したが、

壁も床も意外と彩りがある。

家から持ってこさせた家具も相まって、

かなりの生活感と高級感がある。

はっきりいって私の家より住み心地はいいだろう。


「これからどうします?」

「えーっと…」


何も出てこない。


「まさか、呼ぶだけ呼んで何も考えていないとか…」

「へへへ」


まあ脱出が当面の目標だろう。

扉には鍵。

窓ひとつない地下空間なので、

抜け穴といったら換気ダクトくらい。

そのダクトもしっかり封鎖されている。


「監視カメラはありますか?」

「つけたら死ぬって脅した」

「なるほど…どうやって出ます?」

「んー、またキャリーケースのトリックを

使ったら出れるだろうケド、

出てもすぐに戻さされるカモ」

「そうなんですか」

「ウン、だからランさんには、交渉して欲しくて」

「交渉?」

「私にはランさんがいるから、

結婚はしたくないって」

「ほほう」


まるで私を引き合いに出しているようで

嬉しくもあるが…。


「その…結婚を考えるなら、

私よりもそのお相手の方が…」

「…」


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