鍵はポストに
「なるほどね」
家に社長を呼び寄せた。
「本当にごめん」
「いいよ、心配だったんだから、それより…」
「うん」
私が知っている限りの
桃子猫の情報をメモした画面を見せる。
「なるほど…29歳独身、暗号通貨で財産を築く…
これだけでも当てはまる人は減りそうだけど、
ただ検索しただけでは出てこないだろうね」
「どうしよう」
「とりあえず、この家に残ってそうな
証拠をできるだけ洗おう」
「うん」
シャワーにトイレにリビング、
生活圏の全てをくまなく探した。
だが何一つ見つからなかった。
「そういえば、ポストの鍵は取ったの?」
「あ、まだだった」
社長を置いて一階のポストに赴く。
広告をどかして投函口に手を突っ込む。
「ん〜?」
浅い所には全く感触がない。
奥まで突っ込み、手を回転させると
天井から何かが落ちてきた。
鍵ではないようだが四角い。
「これは…」
取り出してみたものは免許証だった。
顔写真は桃子猫。
名前は王雨桐とある。
急いで部屋に戻る。
「社長!これ!」
「おお!免許証、へーこんな顔してるんだ」
「住所わかるかな」
「わかるだろうね、調べてみる…で、鍵は?」
「あ」
気づいてポストにまた手を入れるが、
見つからない。
「あったよ」
上から社長の声。
「どこにあったの?」
「小窓から中に入れられてた」
「ってことは、
あの紙は免許証に誘導するためだったんだ」
「頭いいね〜その人」
確かに桃子猫は頭がいい。
そんな人がなりふり構わなくなって
私のところに来た。
その大きさを再確認する。
「住所どこかわかった?」
「うん、メッセージで送っといた」
「ありがと」
今できる準備は粗方済ませておく。
「行くんなら手伝おうか?」
「ううん、桃子猫さんは一人で来た」
「そっか」




