行き倒れの行き先
『バシャ』
水音。
それもすぐ傍の。
音の鳴った方へ向く。
「ううう…」
トカゲが、行き倒れている。
みすぼらしい服を着た、手足の長いトカゲが。
桃子猫と向き合う。
これは多分、そういうやつだ。
トカゲに駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「怪我なィ?」
トカゲは顔を上げる。
『お腹が空きました…』
「……はあ」
『いやー一時はどうなることかと思いましたよー本当にもー』
肉を与えたら、よく喋るようになった。
男の声だ。
それも機械音声が翻訳している。
はみ出た舌が踊っている。
『いやー参りましたよーなんせこの体肉以外をあまり受け付けないものでねー』
「そうなんダー」
桃子猫の返答も雑になってきている。
『これはもはや一生物の恩です!
どうぞこれをお納めください』
そう言ってトカゲは袋を渡してきた。
『それでは私は帰ります!さらばっ!』
トカゲは川下へ走っていった。
「一体なんだったんだ…?」
「さあ…?」
とりあえず袋の中身を確認してみる。
持ち上げるとそれなりの重量。
ゴツゴツとした何かが表面に現れている。
金だ。
銅色の輝きが、硬貨から反射している。
にしても袋ごと渡されてしまった。
肉の見返りとしては多い気がするけど…。
トカゲが走っていった方向を見る。
「ん?」「ン?」
先程のトカゲ、
何か重要なことを言い残していかなかった?。
『それでは私は帰ります!さらばっ!』
『それでは私は帰ります!』
『私は帰ります!』
『帰ります!』
「あ!」「ア!」
思わず桃子猫と向き合う。
トカゲは帰ると言った。
つまりは帰る場所があるということ。
川下に、街がある?。
「行きましょう!」
「ウン!」
立ち上がり、スカートを着直す。
桃子猫にも着けて、川下へ足を向ける。
いざ。
「あ」
二三歩踏み出した時、すぐにそれは見えた。
地平と似た丸みを帯びた、建造物の影。
進む事にその姿は徐々に現れていく。
石造りの壁。
城壁だ。
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