体の相性
『ガバッ!』
突如押し倒される。
「それ以上言ウト…」
顔が近づいてくる。
中央少し下に狙いを定め急接近したかと思えば、
通り過ぎて耳元に来た。
「口塞いじゃうヨ?」
『チュ』
耳を吸われた。
年上の威厳を崩さず、
なおかつ主導権を握り返された。
最早手建ては無い。
というかまた振り出しに戻った気がする。
フィジカル負けしているので押しのけるのは不可能。
「フフフ」
更に体重をかけてきた。
打つ手なし。
「何もしないから安心シテ」
十分されているんだが。
だがやはりと言うべきか、人肌は心地いい。
本当にこれ以上いかがわしいことをされないなら、
歓迎できる行為だ。
鼻息が耳に当たるのがくすぐったいが。
「…」
桃子猫の呼吸が緩慢になる。
「眠いんですか?」
「ン!イヤ、全然」
「ここに来た時から何回も寝てたでしょ」
「あー、ワカッタ、話す」
一呼吸置く。
「実は私、ドッペルフリーみたいナ、
最新のVRは体に合わなくテ、
眠った感じがシナイノ」
「ははあ」
初耳だ。
全人類のQOLが上がるものだと盲信していた。
「では、丸二日寝ていないことに…」
「ちょっとは眠れてると思うカラ、
単純に睡眠不足カナ」
社長も警句を残していた。
迂闊だったな。
「その、体に負担が残るようでしたら、
無理にゲームしなくとも…」
「イヤ、スル」
「でも」
「寝るより仕事スルより楽しいカラスルの」
意思は固いようだ。
「わかりました。お昼にできる時は極力そうして、
夜は最低限にしましょう」
「ウン…ワカッタ…」
「おやすみなさい」
「…スミ…」
寝てしまった。
そしておっもいな。
絞った体だとは考えていたが、
やはり高身長な分比例するものもあるのだろう。
圧迫感で眠れない私はどうすればいいだろう。
…。
まあ、何もせずただ意識を保つのもありか。




