普通に
「う」
集中して気づかなかった。
桃子猫が膝の上でうつ伏せになっているせいで、
非常に蒸れている。
また寝ている?。
「もしもし?」
無反応。
そっとずらす。
『ガシッ』
腰を掴まれる。
「あ」
「ヘヘ」
起きていた。
ということはわざとか。
「フーッ」
「ちょっ…やめてください」
いくら暇を与えていたとはいえ、
これは許容範囲外だ。
せっかく乾いてきたのに、
また雰囲気を持っていかれる。
起きているのなら、即座に頭をどかして退避。
「ア」
どこか逃げられる場所。
易々とは入られない場所。
トイレ。
颯爽とドアノブを掴み、閉めようとした。
「イタい!」
ドアの隙間に、手を挟み込んできた。
実際には挟んでしまう前に寸止めできた。
「イターイ」
「挟んでないじゃないですか」
脅すつもりで、本当に挟む。
「イタタタタタ!」
若干悲痛な声を上げながら、腕まで通してくる矛盾。
これは…詰んだ。
籠城を期待した密室は袋小路だった。
「フフフ…」
徐々に端へと追い詰められていく。
「トイレ…したいなー…」
「へー…」
物怖じせず詰めてくる。
確かに桃子猫なら平気でまじまじと見てきそうだ。
「お、大きい方…」
「フーン…」
緩むことのない速度。
やはり変態だったか。
壁に追い詰められ、数秒間見つめ合う。
「…」
「…」
「ゴメン、普通にトイレしていい?ヤバい…」
「あ、はい」




