R15
肌は未だじっとりと濡れていて吸い付いてくる。
既に、いつもと違うおかしなことが
起きているのは分かっている。
ただ抵抗する気が起きない。
桃子猫の蠱惑的な何かからか、
あるいは自分に熱があるのか。
あるいはその両方か。
徐々に引き上げられる手を、
引き下げるよりもなお助力してしまう。
手の甲は胸骨を通り、
やはりR15に挟まれる事態となる。
現実でもまさか…。
「うっ」
空いたもう片方の手も引っ張られ、
今度は背中に触れる。
桃子猫は真後ろまで補助できない。
だからこそ私が、自らの意思で、
手を伸ばしてしまう。
同様に湿る肌。
何となく分かってきた。
以前買ったブラジャーだ。
桃子猫は準備してきた。
やる気なんだ。
金具をつまみ、力を入れ『ppppppppp!』
電話だ。
私の着信音。
急いで布団から出て、電話に応じる。
「はいもしもし、冴木です」
『乱子ちゃん、今ちょっといい?』
「今?今…ああうん今ね、今いいよ」
『突然で悪いんだけど、
乱子ちゃん向けの仕事が入ってね、急ぎのデバッグ』
「期限は?」
『今日の夕方五時、メールはもう送ったから、
悪いけどすぐインストールして』
「あいよーまたね」
『うん』
電話を切って布団からおり、椅子に座って
おあつらえ向きに起動済みのパソコンでメールを開く。
URLだけの簡素なもの。
余程急いだのだろう。
期限から考えておそらく海外からの仕事。
何でもかんでも拾って来るんだから。
インストールまで時間かかるし、
インストーラーにある名前で検索をかけよう。
『フォーリンラヴクラフト』
惑星を行き来して資材を集め、
兵器を建造し侵略者に対抗するゲーム。
タワーディフェンスと
サバイバルオープンワールドが融合しており、
ボリュームがとてつもない。
これを短時間で終わらせるのは骨が折れるな。
「すいません、急な仕事が入ってしまって」
「ンー」
布団から怪訝そうに頭を出している。
桃子猫のためにも早く終わらせるか。




