ゲームinゲーム
「ん…」
覚醒する。
駅前広場のような場所で寝転んでいる。
確かバーチャル東京駅とかいった場所。
地面に寝転んでいるあたり、
適当にログアウトしたのだろう。
アバターも初期のままだ。
そのままだと少し恥ずかしいので、
何か別のアバターを…。
眼鏡をかけたおにぎりでいいか。
近くに他のプレイヤーはいない。
勝手を知っていそうだった桃子猫が、
初期のリスポーン地点にいるとは考えにくい。
合流地点を決めてもよかったな。
とにかく人が多い所を目指そう。
となればやはり初期リスポーン地点付近になる。
大概は交流を求めてやってくる人達だ。
大して歩かずだべるのが普通。
会話を避けて辺鄙なところに行く
私がおかしいだけだ。
桃子猫らしい人物はいるかな。
一つ、何かを探して辺りを見渡す人影。
二足歩行の猫。
近づくと、頭の上に桃子猫と表示された。
「お姉様」
「ア、ランさん」
会った直後にフレンド申請が来る。
当然桃子猫。
申請を許可する。
「桃子猫さんは変わりませんね」
「ウン、ランさんは…フフ」
顔は動かないがほくそ笑んでいるのがわかる。
顔の動きがわかるのは
高価なアバターくらいのものだが。
「このゲームって何ができるんでしたっけ」
「色んなミニゲーム」
そう言うと桃子猫は歩を進めた。
向かう先は駅の中。
外観は駅そのものだったが、
中は近未来的なネオンがちりばめられていた。
壁いっぱいに、
ゲームのメニューらしき液晶が並べられている。
サービスが続くにつれ増えていったのがわかる。
液晶を見る限り、
簡単なFPSが一番遊ばれているらしい。
その次は剣戟アクション。
行き着く先は似たようなものか。
「FPSシヨ」
「分かりました」
桃子猫が画面をタッチすると、
目の前にウィンドウが現れた。
『フレンド桃子猫が
「ガンズオアハンマー」を選択しました』
やはりFPSの参加要請であり、即座に承諾する。
強制的に瞼が下ろされ、だがすぐに開いた。
ロビーにやってきたようだ。
ここからまた細かいゲームモードを選択するらしい。
『フレンド桃子猫が
「チームデスマッチ」を選択しました』
また瞼が下ろされ、開く。




