イベントの報酬
『CONGRATULATIONS!』
「…?」
爆音は無く、優しい光が満ち満ちている。
骨の玉は、
割れたくす玉のような形をして端に転がっていた。
ここでやっと、祝辞が頭に入る。
「勝った…」
自分でも、言っていて少し実感がない。
『…ッやったあああああああ!!!』
ラッツの歓声で、体に勝利が染み渡る。
『勝った!勝ちました!』
「ウン!ウン!」
近場の三人で喜びを分かち合う。
『がこ』
石が擦れる音。
ここに来て何かあるのなら、もはやどうとでもなれ。
王スケルトンがいた場所と奥に穴が開き、
何かがせり上る。
宝箱。
そして奥に、中継地点にもあった水晶。
つまり本当に、戦いは終わった。
石室の中の人間が、こぞって宝箱の前に集まる。
だれが開けるか互いに見つめあっている。
そして徐々にその視線は。
桃子猫に集まる。
「ワ、私?!」
何も言わず、行く末を見届ける。
「ン…」
鉤爪を外し、宝箱に触れる。
触れただけでは何も無い。
叩いたり撫でたり、隙間を覗いても何も無い。
罠はない。
桃子猫が宝箱に手をかける。
御開帳。
「『おおー!』」
中身はまさに、金銀財宝。
箱の中ほどまで金貨銀貨に埋め尽くされ、
所々に宝飾が見られる。
その中に、目立つものが一本。
剣だ。
引き抜き、頬と手で抜く。
実用を損なわない装飾がなされ、
一目でただの金属ではないと分かる
翡翠色の刀身をしている。
明らかに高価で、
そして現状のどんな剣よりも
強いことを分からせてくる。
これが今回のイベントの目玉のようだ。
桃子猫は刃を鞘に納め、そして宝箱に戻した。
「え」
「私じゃツカエナイ」
「あー…獣人なので使えないそうです」
『『あー…』』
徐々に私に視線がいく。
照れる。
「私は後衛なので…」
『『あー…』』
剣は代表で八八が受け持つことになった。
「後は…」
金銀財宝、どう分けるか。
「ひとまず、全部出しましょうか」
宝箱を傾けると、津波のように硬貨が流れ出す。
圧巻である。
「金貨と銀貨で、十個ずつで積み上げる形で」
『分かりました』
輝く山を囲って、集計していく。
やがて山だったものが、整然と並べられていった。
そして最後の端数を、分かりやすいよう横に並べる。
『これで金貨が千二百七枚、銀貨が二百三十一枚。
指輪が五個にネックレスが三個』
物の見事に、全て奇数である。
『さて、どうしましょう』
全員が黙り込む。




