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コンビネーション


桃子猫だ。

盾は展開されていない。

健脚で私の体を素早く持ち去ったのか。


「ありがとうこざいます」


命拾いした。

ボスへ向き直る。

その巨躯は石室に満ち、首を曲げて佇んでいる。

まともな近接攻撃なら頭に届かないだろう。


「エイ!」

『ガキン!』


腕は硬く、ヒビすら入らない。

有効打があるとすれば。


『っ…』


プティーの投石。

「プティーさん、投石を」

『あ、はい!』


幸いボスの動きは緩慢なので、

分かりやすい予備動作で避けながら呪文が撃てる。

ただ動きながらだとやはり。


「当たらない…」

『ど、どうすれば…』


元々命中精度が低く設定されている魔法は、

杖を固定しなければあらぬ方向へ飛んでいく。

当たったとしても、

射程距離ギリギリなので浅く当たるだろう。

下手に撃てば味方に被害が出かねない。

ともすれば。


「プティーさん、これに投石を」


やじりを差し出す。


『投石!』


巨岩が矢と融合する。

当然ながら重い。


『来ます!』


ひとまず腕の横薙ぎを避け発射体勢をとる。

放つ。

勢いは十分だが、

やはり重さのせいで方向が定まっていない。


「フン!」


突然、投石矢が軌道修正されボスに命中した。

空中には桃子猫。

まさか蹴って弾道を曲げた?。

技術力が高すぎてもはや変態の域だ。


「つづけテ!」

「ッはい!」


勝ち筋はこれしか見当たらない。

他にどんな方法があるのか、

攻略を見てみたいくらいだ。


『投石!』

「いきます!」

「ウン!」

『ドン!』

「う!?」


地面が揺れ、手元が狂う。

当然のように桃子猫の軌道修正も虚しく外れる。

ボスがこちらの動きを学習してか、

地面を叩いたのだ。

これが続けば矢は当たらず、

そのまま残弾が尽きてしまう。


『皆、奴の腕を食い止めろ!』

『おう!』


八八の号令で、

肉体派のリザードマン達が二分し、両腕に張り付いた。

その膂力が存分に発揮され、腕の動きが緩慢になる。

これなら、やれる。


『投石!』

「いきます!」

「フン!」


三人のリレーにより、ボスの顔に損傷が増え始める。

喉の明滅。


「来ます!」

「フン!!」


極大なブレスを、

二つの盾で軌道を逸らし壁にぶつけた。

頻度で言えば決して高くなく、

HP減少とともに

発動されていると見るのが妥当だろう。

終わりは近い。


『よくやった冒険者たちよ。あとはこの老骨に、

美しく散る機会を貰おう』


そう言って、

ボスはまた骨となって地面に散らばった。


『おわっ!?』


前衛たちの膂力が流され、地に伏せる。

骨はまた波のように中央に集まる。

そして積み上がり、今度は団子状になる。


『一体何が…』


八八の言葉も束の間、骨の玉が浮遊する。

そして骨の隙間から、徐々に光が漏れ始める。

その光は、ブレスの明滅の色に似ている。


「伏せて!」


その言葉はとうに遅く、光が石室を詰め尽くした。


『CONGRATULATIONS!』


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