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【書籍化】塩系令嬢は糖度高めな青獅子に溺愛される  作者: 沙夜
本編

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エピローグ1

エピローグは三つに分かれる予定です。

今日のお昼と夜に投稿して完結となるかと思います。

最後までどうぞよろしくお願いします!

「――――それで?ジゼル様からも好きだと言われて、副団長は我慢できたのですか?」


「できたと思うか?」


「いえ、全然」


「そういうことだ」


「す、ストップ!エリザさん、副団長さん、そこまでにして下さい!!」


次の日のお昼休み。


昼食を一緒にとろうと誘われた私は、副団長さんと王宮の中庭に来ていた。


「ジゼル様は初心(うぶ)ですからね。後でこっそり聞くことにしましょう」


「大丈夫だぞエリザ。我がしっかり見ていたからな」


エリザさんと、ゼンも一緒に。


「ゼ、ゼン!見ていたんですか!?あの場に……いえ、この場にいたんですか!?」


まさにここは昨日副団長さんと話をした場所だ。


あの時、ゼンの姿なんてなかったはずなのに――――!?


「我を何だと思っている。精霊だぞ。姿を消してはいたが、周囲から邪魔が入ってこないよう、見張っていたのだ。言っただろう?我が場を整えてやると」


た、確かに言われた。


でもまさか、あの場にいるなんて思わないじゃない!


「ゼンに見られていたなんて……。恥ずかしくて、穴があったら入りたい……」


「副団長、ゼン様に見られて恥ずかしくなってしまうようなことをしたんですか?」


「想像に任せる」


真っ赤になって蹲る私に、エリザさんが追撃をかける。


副団長さんも、そこは一応否定しておいてくださいよ!


「なんだ、口付けなど別に大したことでは……」


「ゼンっ!もうっ!言わないで下さい!!」


涙目になりながらバッとゼンの口を塞いだが、遅かったようだ。


「へえ、キスだけですか?触れるだけのやつ?それとも……」


「エリザさんっ!もう恥ずかしくて死んでしまいます!お願いですから止めて下さい!!」


顔から火が出る、とはこのことだろう。


もう本当に止めてほしい。


「エリザ、そこまでにしておけ。ジゼルは初めてだったんだ。そういうことに慣れていないのだから、からかうのは止めろ」


「副団長さんっ!もうそれ以上しゃべらないで下さいっ!!」


やれやれとゼンが呆れながらお弁当の玉子焼きを頬張る。


もうだめだ。


話題を変えなくては、私の心臓が保たない。


「ゼン!玉子焼き、お口に合いますか!?」


「あ、ああ。ジゼルの作ったものは、菓子以外も美味いな」


少し強引にではあるが、お弁当の方へと意識を向ける。


今日は私の手作りのお弁当を四人で食べている。


昨夕副団長さんに誘われた時に、せっかくだから私が作りますと答えていたのだ。


「確かにどれもこれも美味しいですよね。この揚げたお肉も、野菜たっぷりの炒め物も。王宮の料理人も真っ青の美味しさです」


さすがに私を不憫に思ったのか、エリザさんが話に乗ってくれた。


唐揚げと玉ねぎたっぷりの生姜焼き、男女問わず人気のメニューだものね。


「双子のパーティーでの料理も見事だったが、ジゼルの作る料理も格別に美味い。毎日でも食べたいくらいだ」


副団長さんもにこにこしながら食べてくれている。


毎日でも食べたいって……。


それ、前世ではプロポーズに近い言葉なんですけど……。


やっと冷えてきた顔の熱が再び上昇する。


そんなつもりで言ったわけではないことは分かっている。


貴族は普通、料理なんてしないもの。


ただ言葉通り、毎日食べたいくらい美味しいと、ただそれだけの意味のはずだ。


玉子サンドを手に取り、なんとかして平常心を装う。


そんな私に、エリザさんが再びにやにやとした笑みを向ける。


「ところでジゼル様、いつから副団長に名前で呼ばれるようになったんですか?」


食べようとしていたサンドイッチをぐっと押し潰してしまい、中身が少しだけ腕を伝ってしまった。


しまった、スカートの上に落ちてしまう!というところで、副団長さんの手が私の肘を押さえた。


「間一髪でしたね。ほら、拭って差し上げますから、腕を出して下さい」


「す、すみません、ありがとうございます。……っあ、く、くすぐったいです……」


副団長さんがハンカチを出して腕を拭いてくれたのだが、その軽い肌触りがくすぐったくて、思わず声を出してしまった。


するとハンカチを持っていた手がピタリと止まった。


どうしたんだろうと顔を上げると、顔を逸らした副団長さんが頬を染めてぷるぷると震えている。


「いやらしいですよ、副団長」


「主よ、妄想が過ぎる」


「いや今の不意打ちは仕方ないだろう!?好きな人のあんな声を聞いて、平常心でいられる男などいるわけがない!」


軽蔑の眼差しを向けるエリザさんとゼンに、副団長さんが必死に弁解する。


どういう意味なのか分からない私が首を傾げると、まだ分からなくて良いんですよとエリザさんが私の頭を優しく撫でた。


「それで、話は戻りますが。副団長は名前で呼んでいますが、ジゼル様は未だ“副団長さん”呼びなのですか?」


「あ、ええと、それは……」


昨夕、副団長さんが名前で呼びたいとおっしゃったので、私はそれを了承した。


『ジゼルも俺を名前で呼んでくれませんか?』


そう言われたのは、確かなのだが……。


「恥ずかしくて、呼んでもらえなかったんだ。まあそれはおいおい。焦ることでもないからな」


「うわ、気持ちが通じ合ったからって、急に余裕見せるようになりましたね」


昨日はあんなに余裕のない男だったのに……とエリザさんが顔を顰めた。


余裕がない?


副団長さんに?


そんな姿、あまり見たことがないけれど……。


「ジゼル、こう見えて主は嫉妬深いからな。ジゼルの前では紳士的に振る舞っているが、本当の姿はそうではない。幻滅しないでやってくれ」


「うるさいぞ俺の使い魔のくせに」


ゼンはそう言うけれど……。


昨日の副団長さんとのやりとりを思い出して、私はにっこりと笑う


「大丈夫です。私だって嫉妬しますから、おあいこです。それに私がまだ知らない副団長さんの姿、楽しみですよ?色んな感情があって当然ですから。これからもたくさん、色んな姿を見せてほしいです」


私の返しが意外だったのか、三人は目を見開いた。


そう、色んな感情があって当然。


綺麗なものも、醜いものも。


それも全部含めて、副団長さんなのだから。

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