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【書籍化】塩系令嬢は糖度高めな青獅子に溺愛される  作者: 沙夜
本編

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*幕間*ジゼルの評判2

本日二回目の投稿です。

まだ前のお話を読んでいない方は、ひとつ戻ってお読み下さい。

「そこまでは良いのだ。いや、正直に言えば、ちょっとだけあの天使の微笑みを知るのは私達だけで良いとか思わなくもないが!」


思ったのか。


エリザはスン……と上司の狭量さに心から呆れた。


しかしその後紡がれた言葉に、さすがのエリザも驚き目を見開いた。


「その後、侍女達はあろうことか自分の兄弟の相手にどうかという話までしていたのだ!」


「ええっ?」


思い出したくもないという表情のユリウスが語る。


『多分ですが、恥ずかしがり屋さんなのだと思うのですよ。初々しくて優しくて、お菓子作りが上手でしかも魔法付与までできてしまう。その上あんなかわいらしいご令嬢!ああ私、実家に戻ってお兄様にお見合いを申し込むよう言ってみようかしら!?』


『まあ、それはいい考えね!私も弟に薦めてみようかしら?』


『あら私も同じことを考えていましたわ!あわよくば、私もシュタイン伯爵令嬢と仲良くなりたいです!そしてお菓子も作ってもらってお茶会したいですわー!!』


「……すごい人気ですね、ジゼル様」


エリザの頭の中には、きゃあきゃあと盛りあがる侍女達の姿が思い浮かんでいた。


「まさかそんな弊害があるとは……。離れている間に、どれだけの人間の好感度を上げたんだ彼女は!?」


ガン!とユリウスは拳を机に叩きつけた。


余裕のないユリウスを見つめながら、エリザはうーんと考える。


「ですが、ジゼル様は元々とても良い方です。誤解が大きくなって“塩系令嬢”などという汚名を着せられただけで、彼女自身は何も変わっていません」


そう、ジゼル自身の本質は、何も変わっていない。


変わったのは、周りの人間。


勝手に作り上げられたイメージを払拭しただけなのだ。


「副団長の言う“好き”は、鳥籠の中でかわいがるような、そういうものですか?それが、ジゼル様のためだと思いますか?」


エリザにしては珍しく、優しく問いかけるような静かな声だった。


「……そんなわけがない。ジゼル嬢の素晴らしいところを分かってもらえて嬉しいという気持ちの方が、もちろん大きい」


エリザは黙って頷き、ユリウスの言葉を待った。


「それでも、不安なのだ。恐らく彼女は私に好意を持ってくれている。けれど、それはたまたまその当時出会い、彼女に優しく接したのが私だけだったからではないかと。彼女への誤解が解けた今、彼女に好意を持つ男がそれこそ湧いて出てくるだろう。それでも彼女は私を選んでくれるだろうか」


顔も良く、家柄も良い、団長と並んで騎士団の双璧と呼ばれる程のエリートであるユリウスが、こんなことで悩むのかとエリザは内心で驚く。


単純に考えれば、ユリウス程に良い条件の男はなかなかいない。


けれど。


「……そうですね、ジゼル様はそんなことで人を好きになるような方ではありませんものね」


彼女は地位や権力、容姿や財力ではなく、その人となりを見ている。


そうした条件がいくら良くても悪くても、ジゼルには関係ないのだ。


だがそれは裏を返せば、彼女は“ユリウスだから”好きになったとも言える。


「選んでもらえたことに、自信を持ってはどうですか?それと、他の男に目が移らないよう、これからもジゼル様をしっかりと見ていることですね」


不安に思ってはいないか、話したいことがないだろうか、どんな気持ちでいるのだろうか。


そんな感情の機微に気付けば、相手を気遣うことができるものだ。


口で言うのは簡単なことだが、意外とできているつもりでも、できていない人は多い。


「お互いに思い遣る。ふたりになら、それができると私は思いますよ」


「エリザ……」


優しい口調のエリザに、ユリウスは目を見開いた。


「今日は、どうしたんだ?いつものエリザなら、“ウジウジしていないでさっさと想いを伝えに言ってはどうですか?”と冷たく鼻で笑って言いそうなものなのに」


具合でも悪いのか?とでも言いたげなユリウスに、エリザはひくりと口元を引き攣らせた。


「――――そう思うなら、さっさとジゼル様にアポを取りに行ってはどうですか!?まったく、気を遣ってたまには優しい言葉をかけて、励まし背中を押して差し上げようと思ったのに……!」


そしてぷいっと向きを変え、自分の仕事の準備をし始めた。


優しくなどしなければ良かった!とブツブツ言いながら。


ふっ。


「は!?今、笑いました!?」


微かな息の揺れる音に、エリザが反応する。


「い、いや。励ましてくれようとしたのか。それは悪かった」


くっくっとユリウスが笑う。


「ありがとう、エリザ。ちゃんとジゼル嬢と話をしてくるよ」


「……もちろん、執務を全て終わらせてからにして下さいね」


なにせ五日間空にしたのだ、ユリウスの机には書類が溜まっている。


「そ、そうだな……。今から頑張ることにする」


「その前にゼン様に頼んで先に言付けを。ジゼル様との約束があれば、副団長は何が何でも終わらせるでしょうから。ほら、早く呼んで下さい。時間は有限なんですから」


手厳しいな……と言いながらも、ユリウスはジゼルとふたりきりで会う約束を取り付けるため、ゼンを呼び出すのであった。

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