答え合わせをあなたと1
すみません、遅くなりました……
今日中に間に合って良かったです(TT)
予期せぬ国王陛下との謁見?の後、私はゼンにシュタイン家へと帰してもらった。
本当は副団長さんともう少し話したかったのだけれど、思わぬ邪魔が入ったのだ。
『おかえりジゼル。話は夜に聞くからね、とりあえず屋敷にお帰り』
『そうだ、今すぐ帰れ。副団長の使い魔の力を借りて、今すぐに』
なんとジークお兄様とリーンお兄様が副団長さんの執務室前で待ち構えていたのだ。
ふたりとも仕事は……?と思いながらも、その迫力に圧倒されて何も言えなかった。
それは副団長さんも同じだったようで、別れの挨拶もそこそこに、ゼンに私を送るようにと伝えてくれ、私は帰ることになった。
「もう少し、話したかったな……」
自室のベッドで枕を抱えてぽつりと呟く。
せめてジークお兄様とのように通信魔法が使えたら良かったのだが……。
通信魔法は誰でも使えるものではなく、魔力の高いジークお兄様だから使えるだけで、私程度の魔法では副団長さんと通信することができない。
私からは合図を送るくらいで、いつもお兄様から通信してくれていたから。
「魔法も、もうちょっと勉強しておけば良かったかしら……」
今まではお菓子作りくらいにしか使っていなかったから、そこそこしか魔法を学んでいない。
「こんなことになるなんて、予想もつかなかったものね」
この二日間は、目まぐるしく過ぎていった。
私のおかれた状況もかなり変わってしまったけれど、後悔はしていない。
私は、私にできることをやるだけだ。
「陛下と話をしたことも、きちんとお伝えしたかったんだけどな……」
と、そこで、今日の副団長さんとのやり取りを思い出して一気に体温が上がった。
『私は嫉妬もしているのですよ』
『こんなにかわいらしい表情をするようになってしまって……』
『ジゼル嬢のことを側で見守り、力になるつもりです』
「きゃあああああっ!もおっ、思い出したら止まらなくなってきちゃったじゃないですか!」
誰に言うでもなくそう叫んで、枕に顔をうずくめる。
手を握られた時の体温、優しい眼差し、壁ドンされた時の甘い圧迫感。
副団長さんのことを考えると胸がきゅぅっとなる。
動悸が収まらない。
ついでに顔の温度は未だに上昇し続けている気がする。
「どうしよう、こんなことばかり考えるなんて……。私、変態だったのかしら……」
切実にそんなことを考えるくらい、副団長さんが好きだと言う気持ちが止められなくて辛い。
みんな恋をするとこんな風になってしまうのだろうか。
「そんなことはないぞ」
ひとり言の止まらない私の頭上から、突然そんな声が響いた。
「ぜっ、ゼン!?」
がばりと体を起こすと、そこにはやはり鳥姿のゼンがいた。
“そんなことはない”って、もしや“みんな私みたいになることなんてないぞ”ってこと!?
「大丈夫だジゼル。そなたの妄想など男共のそれにはとんと及ばない。かわいらしいものだ」
「え、えっと……?」
ひとりであたふたしている所を見られて恥ずかしいという気持ちが消えてしまうくらい、ゼンは冷静にそう言って私を慰めてくれた。
そ、そうよね。
私の心の声が聞こえるわけじゃあるまいし、その前の私のひとり言に応えてくれたのよね。
それにしても、かわいらしいもの、って……どういうことだろう?
「まあ深く考えるな。我が主に叱られるからな、忘れろ」
「は、はい?」
ひとりで完結してしまったゼンにとりあえず返事をしたものの、一体どういう意味なのか……。
聞きたいような気もしたが、この話は終わりだとゼンが話し始めたので、黙っておくことにした。
「ジゼル、主が話をしたいと言っている」
「え……」
まさか。
ゼンが来てくれて、ちょっと期待してしまったのは事実だが、本当に会えるとは思わなかった。
「わ、私もお会いしたいです!その、昼間はお兄様達のせいで碌な挨拶もなしに戻って来ることになってしまいましたから」
「では行くぞ。ああ、魔術師の兄に気取られぬようにしておくから、心配するな」
た、頼りになる……!
さすがゼン!!
ポン!といつもの人の姿に姿を変え手を差し出してきたゼンに、感謝の気持ちを込めてきゅっと掴まる。
「うわっ!ジゼル、急にどうした!?」
「私、ゼンのこと大好きです!」
掴まった瞬間、ふわりと浮かんだ感覚がしたがそれには構わず心のままにそう伝える。
ゼンがいつも副団長さんと私を繋いでくれている。
なんだかんだいって面倒見が良いゼンのことを、実は勝手にお兄ちゃんのように思っている。
ジークお兄様とリーンお兄様とはまた違う、安心感がある。
ぎゅうっとゼンの腕に掴まる手にさらに力を入れると、風景が変わっていることに気付いた。
あれ?そう思った時には、もう遅かった。
「ゼン……おまえ、何をしている」
「我ではない。愛の告白をして飛びついてきたのはジゼルだ」
恐る恐る振り向くと、そこにはものすごく不機嫌な顔をした副団長さんが立っていた……。




