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【書籍化】塩系令嬢は糖度高めな青獅子に溺愛される  作者: 沙夜
本編

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ライバル誕生?3

それから月日が経ち、明日はお兄様達の誕生パーティーの日だ。


私は未だに副団長さんのところへ通うのを自粛している。


あの噂が王宮内でどうなっているのかは、皆そのことを口にしないため、よく分からない。


思い切ってゼンにも聞いてみたことがあるのだが、気にするなと言われてしまうだけだった。


良い方向に向かっているのか、それとも悪い方向に向かってしまっているのか、それすらも分からない。


毎日のお菓子はきちんと届けている。


毎回、カードを添えて。


副団長さんと、時々エリザさんも返事をくれて、何だか手紙交換しているみたいだなと思って照れたことがある。


お互いにほんのひと言ふた言しか書かないが、それでも確かに繋がっているのだと実感できて嬉しいし、副団長さんは以前のようにまた花を一輪送ってくれるようになった。


こんな大変な時に……と思ったのだが、ゼンに「それくらいやらせてやってくれ。その機会まで奪われたら、それこそ主がまともに機能しなくなる」と真顔で言われた。


言っている意味はよく分からなかったが、ものすごく真剣な顔だったので黙って頷いておいた。


私は嬉しいから良いのだけれど。


そうして久しく会えていない副団長さんやエリザさんとも、明日は会えるはず。


「明日の準備、頑張らなくちゃ。それと……」


「「「それと、お嬢様自身の準備も致しましょうねー!!」」」


そこへ元気いっぱいの侍女達三人の声が響いた。


「分かっておりますよね?今日は午後からはこちらの準備が優先ですからね?」


「お肌も、髪も、きっっっちり整えさせて頂きますからね?」


「今日明日は早寝早起きですよ!お肌の調子を整えるために、これは譲れませんわ!!」


……ものすごく気合が入っている。


「わ、分かってます。できるだけ早く終わらせて、すぐそちらに向かいますから……」


「「「遅くとも午後三時までには、必ずですよ?」」」


「……はい」


その迫力に完全に負けた私は、力なくそう返事をしたのだった。






「つ、疲れた……」


もう侍女達に決められた就寝時間だ。


明日パーティーでお出しするお菓子の準備を終えた私は、入浴やらマッサージやらパックやら、とにかく全身くまなく磨かれ、整えさせられた。


おかげでどこもかしこもツルツルピカピカだ。


でも、久しぶりに副団長さんにお会いするんだし、ちょっとは綺麗にした方が良いのかも。


……少し前までは面倒くさいとしか思わなかったのに、不思議なものだ。


そう考えると、時間をかけて綺麗にしようとしてくれている侍女達には感謝しなければいけない。


「明日、お礼を言おう」


そう決心して、ベッドに入る。


明日会えたら、どんな気持ちになるのだろう。


思えば、気持ちを自覚してから初めて会うのだ。


嬉しい?


恥ずかしい?


「どんな顔して会えば良いんだろう……」


急に顔に熱が籠もるのが分かって、布団を頭から被る。


急に副団長さんの笑顔が思い浮かんできて、しかもなかなか消えてくれない。


「まずいわ。早く眠れる気がしないんだけど……」


侍女達に怒られてしまうかしら……と危惧しながら、私は心の中で羊を数えることにしたのだった。






「で、できた……」


「わ、私達、天才……?」


「すごい……こんなの初めてだわ……!」


「「「お嬢様、史上最高に綺麗ですわぁぁぁぁ!!」」」


「そ、そうかしら……?」


パーティー当日。


お菓子の仕上げと、大切なあるものを作り終えた私は、侍女達に着飾られていた。


この日のためにと用意されたドレスは、まるで水彩画のような淡いピンクと青、紫の混じるプリンセスライン。


私の瞳の色をイメージしたらしいが、まるで上品な大輪の花のようなドレスだ。


今朝見た時は、私に似合うかしら……?と尻込みしたものだが、実際に着てみると、自分で言うのもなんだが、とてもしっくりくる。気がする。


それに合わせて、いつもは簡単に纏めてもらっている髪も、今日は緩く編んで生花で飾ってある。


こちらも青や薄紫、白の花を使っており、ドレスとのバランスも良い。


そしてメイクも、昨日からこれでもかというくらいに整えられた成果だろうか、とても良くできている。


化けると書く化粧だが、本当にその通りだと思う。


そう思うくらい、今日の私はきちんと貴族令嬢に見える。


「今日は誰よりもいっっちばん!お嬢様が綺麗ですからね!胸張って下さいね!!」


一体誰が主役なのかと思わなくもなかったが、こんなに綺麗にしてもらえたことは、素直に嬉しい。


「……ありがとう」


昨夜決心したように侍女達にお礼を言うと、三人は目を丸くした。


「その、今日はできるだけ綺麗にしていたいと思ったから、助かったわ。とても素敵にしてくれて、嬉しい」


なんとか声を絞り出してそう告げると、三人はさらに目を見開いた。


「ありがとう。あなた達のおかげで勇気が出たわ」


この姿ならば、彼の隣に並んでも見劣りしないだろうか。


いつもの簡素なドレスに身を包んだ、自分に自信のない私じゃない。


綺麗なドレスとメイクに力を貸してもらえたら、彼の隣でも背筋を伸ばして立っていられるかもしれない。


「……お嬢様。ドレスとメイクは“戦闘服”、着飾ることは女性にとって”戦いの準備“とも言えます」


「そうです、自信を持って下さい!今日のお嬢様、本っ当に驚くくらい綺麗ですから!」


「女神とはかくや、ってくらいです。女神様の誘惑に勝てる男性なんておりませんよ」


三人からの激励の言葉を受けて、私は背筋を伸ばす。


戦闘服、か……。


確かに、初陣に出るみたいな気持ちかもしれないわね。


「みんな、ありがとう。行ってくるわね」


上手く笑えていないかもしれないけれど、三人にも感謝を伝えたい。


そんな気持ちを込めて微笑み、支度部屋の扉を開く。


パーティー会場へと向かう私のうしろからは、侍女達の叫び声が聞こえたきがしたけれど、私はもう振り向かなかった。

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