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【書籍化】塩系令嬢は糖度高めな青獅子に溺愛される  作者: 沙夜
本編

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試作品はほっこり涙の味?6

?どうしたんだろう、みんなの様子が……。


副団長さんは呆けた顔で固まっているし、エリザさんは何だか顔が赤い。


ゼンは驚いたような表情をしている。


はっ!ひょっとして、今の私の笑顔?がものすごく酷い顔だったとか!?


「す、すみません慣れないことをしてしまい!その、不愉快な思いをさせてしまったのならば謝ります!」


慌てて顔を隠そうとすると、はっと我に返った副団長さんにぐっと手首を掴まれた。


「いや、そうじゃありません!隠さなくても良いから、落ち着いて下さい!」


そ、そんなことを言われても……!


手首を掴まれたことで距離も近いし、なんか良い匂いがする再びなんですけど!


あわあわしながら手首を放してもらおうと抵抗するが、鍛えられた騎士である副団長さんはびくともしない。


「副団長、シュタイン伯爵令嬢の手首に痕がついてしまいます」


「はっ!す、すみません、つい……」


エリザさんのひと声で副団長さんは手を放してくれた。


ちょっと痛かったが手首はなんともないし、少しくらい痕がつくのは別にどうということはないけれど……。


「ジゼルよ、そなたが良くてもあの兄達が許さんぞ」


そ、それはよろしくない!!


「あの、ありがとうございますエリザさん。おかげさまで副団長さんがお兄様達からの嫌がらせを受けるのを回避することができました!」


「「嫌がらせ……?」」


首を傾げるふたりに、私は今朝の地味に嫌な嫌がらせの話をした。


「……今朝の早朝訓練でブーツに石が入っていたのは、そういうことか」


「リーンハルト殿ならやりかねませんね」


副団長さんとエリザさんの納得の表情に、リーンお兄様のあれは冗談ではなかったのだと悟る。


「……その、兄が大変ご迷惑をおかけいたしまして」


「いや、それだけジゼル嬢を大切に思っているということでしょう。これくらいは甘んじて受けますよ」


居た堪れない気持ちになって謝罪するも、副団長さんは気にしないでと苦笑いをした。


「そういえば、その後訓練が終わってブーツを履き替えた時に痛がっていたのもひょっとして……」


そんな時に呟かれたエリザさんの言葉に、びしっと固まる。


「……重ね重ね、申し訳ありません〜〜っ」


夕食後のデザートに出そうと思っていたチーズケーキ、リーンお兄様の分はなしにしよう。


深々と頭を下げると、そういえばチーズケーキのデコレーション!と思い出した。


「あの、お詫びというほどのものではないのですが。そのケーキにちょっとひと工夫してもよろしいでしょうか?」


「?ええ、勿論です」


おふたりから了承を得て、私は持って来ていた生クリーム入りの絞り袋とベリーの入った容器を取り出した。


とりあえず食べかけのチーズケーキを全て食してもらい、新しく少し小さめにカットしたケーキをお皿の上へ。


そこに簡単にではあるが、デコレーションしていく。


シンプルなチーズケーキの側に、レースのように生クリームを絞り、その上からベリーをたっぷりと乗せる。


この絞りのテクニックは、パティスリーの店長直伝だ。


「完成です。どうぞ召し上がって下さい」


「わ……!すごく、かわいい」


出来上がったケーキ皿を机に置くと、エリザさんの表情が目に見えて明るくなった。


やはり女性はこういう見た目のかわいらしさに敏感だ。


「すごく華やかになりましたね。では早速、クリームとベリーと一緒にひと口……」


副団長さんはシンプルに美味しそうだと思ったのだろう、すぐにフォークを入れた。


クリームとベリーを合わせて食べるチーズケーキ、私も大好きなので、気に入ってもらえると良いのだが。


どきどきしながら反応を待つ。


副団長さんはケーキを口に入れて目を見開き、もぐもぐと咀嚼して頬を緩め、飲み込んで破顔した。


「美味い!そのままでも勿論美味しかったが、これは素晴らしい組み合わせだ」


「ふむ、確かにこれは秀逸だな。濃厚なチーズの風味に、生クリームの甘さとベリーの酸味がよく合う」


ゼンまでまるで食レポのように評価してくれた。


ちなみにエリザさんもにこにこと頬張っている。


「あ、それと実はココア生地を混ぜたマーブルチーズケーキも作ってありまして……」


「「「いただきます!」」」


もうひとつの箱を取り出すと、三人の目がキラリと輝いたのが分かった。


副団長さんとゼンが甘いもの好きなのは知っていたけれど、エリザさんもだとは。


普段は紳士的な副団長さん、凛々しいエリザさん、威厳すら感じられるゼンなのに、私のお菓子を前に、待ちきれない子どものような顔をするなんて。


なんだか……可笑しい。


「ふっ……ふふ」


そう思ったら、自然と声が零れた。


「三人とも落ち着いて下さい。そんなに慌てなくても、ケーキは逃げませんから」


声を上げて笑ったのなんて、いつぶりだろう。


無表情だから笑い声を上げると不気味だって、前世で誰かに言われた日から、前世の私は笑うことを止めたのに。


「もう、可笑しくって、失礼だと思いながらも笑ってしまったじゃないですか」


思っていた以上の嬉しい反応をもらえたから、つい。


私はあははと声を上げて笑ってしまった。

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