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【書籍化】塩系令嬢は糖度高めな青獅子に溺愛される  作者: 沙夜
本編

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24/79

試作品はほっこり涙の味?1

副団長さんからのお話を聞いてから考えること二日。


私は結局、その提案を受けることにした。


そう決心した次の日、朝食の席で。


「俺は本音を言えばあまり気が進まない。菓子を売るのが女共だけで済むならまだ良いが、あっという間に老若男女問わず広まるに決まっているからな」


ジークお兄様に説得されたものの、未だリーンお兄様は苦い顔をしている。


「一度納得したことを蒸し返すなよ。みっともないぞ」


「べ、別に俺は……!」


しかしジークお兄様に(たしな)められて、顔を真っ赤にして黙った。


そうは言うが、ジークお兄様だって副団長さんおひとり(実際にはゼンもだけれど)にお菓子を渡すことすら、本心では反対だと言っていたではないか。


格好をつけた表情で私をチラチラと見てくるが、理解のある兄を装ってリーンお兄様にマウントを取っているのがバレバレだ。


だがリーンお兄様には効果抜群だったらしく、自分だけ理解がないと私に嫌われるのを恐れ、渋々ではあるが好きにしろと言ってくれた。


……お兄様が心配しているように、そう上手くお菓子が評判になるとは限らないのだけれど。


騎士団内だけでこじんまりと話題になる程度かもしれないし、それはそれで私にとってベストな気もする。


「うーん、思っていたよりも早くバレてしまったね、ジゼル」


相変わらずのほほんとしているのはお父様だ。


というか、バレないようにしなさいよと言っていたのに、いつかはと思っていたのか。


まあ冷静に考えれば、私なんかがお兄様をずっと欺けるわけがないけれど。


「でもジゼルのお菓子は本当に美味しいからね、私達だけで楽しむのは勿体ない気もしていたから、これで良かったのかもしれないよ?悪いようにはしないと約束してくれたんだし」


そう、私はこの件を引き受ける前に、副団長さんには事情を話していた。


さすがに前世のことは話していないが、穏やかに暮らしていきたいと思っており、もし万が一に私のお菓子が評判になるようなことになっても表に出るつもりはないと、ゼンに伝えてもらった。


どうやら副団長さんは、私の塩対応がただ人見知りで人付き合いが苦手な結果だということに思い至ってくれたらしく、国の陰謀とか、政治に利用されるようなことにならないように配慮すると言ってくれたのだ。


彼の家門、バルヒェット侯爵家は重要な国境の領地を有しており、この国ではかなりの権力を持っている。


彼自身も王宮騎士団の副団長と高い地位に立っているし、彼が私を隠そうとすれば、たとえ王族といえどもそう安々と手出しはできないはずだよと、お父様からも安心の言葉をもらえた。


「ふん、あのクソ副団長……。俺からマドレーヌを奪っただけでなく、まさかジゼルにまで手を出してやがったなんて」


ぐさっ!とリーンお兄様が朝食のソーセージに思い切りフォークを突き刺した。


そしてジークお兄様の声のトーンも落ちた。


「それについては僕も厳重に抗議しておいたよ。まさかとは思うけど、ジゼル。あの男に絆されたりなんてしてないよね……?」


急に私に矛先が向いて、びくりと肩が跳ねた。


「当然だよな?」


「大丈夫だよね?」


双子の黒い微笑み、ものすごく怖い。


このままだと私だけでなく副団長さんにも害が及ぶ可能性が……!


「な、何をおっしゃっているんですか。そもそも副団長さんに会う機会など、そうありませんし。私は自由にお菓子が作れるのが嬉しいと、ただそれだけです」


発言に気をつけなければと冷や汗をかきながらそう答える。


「なら良いんだ。ごめんね、ジゼル」


私の答えに満足したのか、お兄様達は黒いオーラを引っ込めた。


……そしてリーンお兄様はブチィッとソーセージを食い千切った。


「まあそれなら副団長への嫌がらせは、訓練用ブーツに石ころを入れておくくらいにしておいてやろう」


「へえ、地味に嫌なやつだね。それ、採用」


リーンお兄様の幼稚な嫌がらせの提案に、ジークお兄様は楽しそうにしている。


ブーツに石ころって、子どもか。


「ついでに訓練が終わった後に履く靴にも入れておいてやれ。両足にな」


「よし、採用」


採用、じゃないでしょ。


本当にこの双子は悪だくみの時になると息ぴったりだ。


「まあ、それくらいなら良いんじゃないかな?実務に支障のない程度にしておきなさいね」


いつもは常識的なお父様も、今日はなぜか止めない。


微笑ましいものを見るかのように穏やかな目でお兄様達を見守っている。


「……副団長さんはお忙しいんですから、迷惑をかけてはいけませんよ、お兄様方?」


「じっ、ジゼル!冗談だよ!」


「そ、そうだ!そんな幼稚なことをするわけがないだろう!」


仕方がなく私がお兄様達をジト目で窘めると、ふたりは顔色を変えて、ぴっ!と背筋を伸ばしたのだった。

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