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プロローグ

新作始めました(・∀・)

ラブラブいちゃいちゃがたくさん書けたら良いなと思います♡

よろしくお願いします!

今夜の夜会は、特別なものだ。


十五歳になり、社交界への参加を認められた貴族令嬢達のお披露目の場、デビュタント。


私も今日、デビュタントする令嬢の正装である純白のドレスに身を包み、こうしてエスコート役のお父様と共に王城へと来ていた。


ーーーーいや、正確に言えば、少し過保護なお兄様達も共に。


「緊張しているのかい?」


「いえ、全く」


お父様は小さくため息をついた私が緊張していると思ったようだが、そうではないと即答する。


強がりではない、だって私は別になんの期待もしていないのだから。


「参加するのは今日だけ。もう茶会や夜会に出ることもありませんから。ただ国王陛下に挨拶して、帰る。今日の私の任務はそれだけです」


「任務って……。一曲くらい踊っても良いんだよ?ああほら、豪華な料理だってあるし、挨拶が済んだらなにか頂こうか?」


表情を変えずに淡々と答える私に、お父様は少しくらい楽しんではどうだと色々と提案してくる。


確かにきらびやかに並べられた料理は一見すると美味しそうだが、大して期待もできないし、こんな落ち着かない場所で食べるのも気が引ける。


それに、我が家の料理人達の作るものの方が美味しいに決まっている。


そうだ、帰ったら余りものでも頂こう。


まかないでも構わないし、なんなら彼らに残業を強いるのも申し訳ないから、自分で作ったって良い。


王城務めのお父様やお兄様達はすぐに帰るわけにはいかないだろうから、自分ひとりで先にお(いとま)しよう。


男三人はここで腹いっぱい食べて帰ったら良い。


ああけれど、顔の良いお兄様達や四十路になってもなお若々しいお父様は、ダンスを誘われたいと女性達が殺到してそんな暇などないかもしれない。


とすると、私が先に帰って夜食でも用意しておいた方が良いのだろうか。


ううむと悩んでいると、陛下へ挨拶するためにと並んでいた列が前に進んだ。


この好奇の目にさらされるのもあと少しだ。


入場してからというもの、周りからの視線が煩わしくて仕方がない。


恐らく、今までちっとも姿を現したことのなかった私が珍しくて、ジロジロ見ているのだろう。


それもあと僅かの我慢だと思いながら、ようやく回ってきた挨拶もそつなくこなす。


少しばかり国王夫妻が驚いたような表情を見せたが、それも一瞬で、すぐにお父様が私の手を引いてくれ、御前から下がることができた。


よし、今日の任務完了。


さて適当な理由をつけて帰るとしよう。


伏せていた目線を上げれば、ふたり一緒にいたお兄様達と目が合う。


そういえば俺達と()()ダンスを踊ってから帰れよって言われていたのだった。


しまった、しかしこの二人に見つかってしまったのならば、諦めるしかない。


仕方あるまい、一曲ずつ踊ったら人に酔ったとでも言って帰ろう。


ふうっとため息をついて父にエスコートされながらお兄様達の元へと足を進める。


着慣れないドレスと履き慣れない高さのヒールに四苦八苦しながら歩いていると、不意にすっと黒い人影に視界を遮られた。


「失礼、美しい人。どうかダンスのお相手を」


少し癖のある柔らかそうな髪と色気のある目元、そして軟派そうな言葉。


……苦手なタイプだ。


そう思いながら目の前の整った容姿をした男性を見つめ眉を顰めた。


断られるわけがないと思ったのだろう、その男性が私の前に手を差し出した。


すると、きゃああっ!と周りから黄色い悲鳴が響く。


どうやら彼は令嬢方に人気のある御仁らしい。


それにしても、なぜ私?


理由が分からなくて首を傾げる。


隣のお父様の手に、ぐっと力がこもったのが分かった。


娘馬鹿なお父様のことだ、自分やお兄様達以外の男と踊らせたくないとでも思っているのだろう。


ああ、そうか。


きっと彼はお父様と仕事上の関わりを持ちたいのだろう。


それで男性に免疫のないデビュタントしたての私に目をつけたと。


なるほど、それならば納得がいく。


しかし、自分の容姿を武器に仕事相手の娘に取り入ろうとするやり方は、あまり好ましくない。


「申し訳ないのですが、お断りさせて頂きます」


「……へ?」


お断りの言葉と共にぺこりと頭を下げると、頭上から気の抜けた声がした。


ゆっくりと頭を上げると、男性はまさかそんなことを言われるとは思っていなかった、信じられない、という顔をしてあんぐりと口を開けていた。


まあ、整ったお顔が台無しですよ?


「ーーーー私、好みではありませんの」


一歩踏み出し、そんな様子で唖然とする男性をさらりと躱す。


良かった、変な難癖をつけられなくて済んだ。


そう私はほっとしながら、お兄様達の方へと足を進めたのだった。

夜にも一話投稿する予定です。

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