スヴェンスカ
北海、ノルトハイム地方――
スヴェンスカは雪の都だった。
スヴェンスカに行くには船に乗る必要があった。
セリオンとエスカローネはスヴェンスカ行きの船に乗っていた。
冷たい風が二人の体に吹き付ける。
セリオンとエスカローネは甲板にいた。
「…………」
セリオンは船から海を見ていた。
「セリオン、どうしたの?」
エスカローネがセリオンの近くにやってきた。
「いや、いい海の景色だと思ってね」
「……うそ。ほんとは何を見ているの?」
「ははは、かなわないな、エスカローネには。確かに俺は海を見ているようで見ていないよ。ただ凪だなと思っていたさ。俺が考えているのはサタナエルのことだ」
「サタナエルのこと?」
「ああ。あいつがいったい何を考えているのかと思ってね。俺たちはサタナエルが示した道を進んでいる。これに何か深い意味があるかはわからない。ただ、俺は思うんだ。サタナエルは北を目指しているんじゃないかとね」
「北を?」
「ああ、そうだ。サタナエルは俺と決着をつける気だ。だから、そのためにふさわしい場所に俺たちを誘導しているのかもしれない。そう思ってね」
「……私はセリオンが心配よ。サタナエルとの戦いはあなたの運命だけれど……」
「安心してくれ。俺は必ずサタナエルに勝つ」
「うわあああああああ!?」
「きゃあああああああ!?」
「なんだ!」
「セリオン、あれを見て!」
「!? あれは!?」
セリオンは船の先を見た。
そこには甲板の上に大悪魔レヴィアタンがいた。
「あれはレヴィアタン! くっ! ここで戦ったら大きな被害を出してしまう!」
「セリオン、私が障壁を張るわ。だからあなたは全力で戦って!」
「そうか、わかった!」
セリオンは逃げる人々をかき分けて、レヴィアタンの前に躍り出た。
「まさかここでレヴィアタンが現れるとはな。相変わらず、不気味な奴だ」
セリオンは大剣を構えた。
レヴィアタンは多数の風の槍、多連・風翔槍を放った。
セリオンは蒼気をまとった。
セリオンは蒼気の刃で風の槍を迎撃した。
レヴィアタンの風撃。
風がセリオンを押し付ける。
セリオンは蒼気で押しやった。
レヴィアタンは風刃を放った。
風刃はセリオンを胴切りにすべく進んだ。
セリオンは蒼気で風の刃を断ち斬った。
レヴィアタンの斬風。
斬風はセリオンを斬り刻むべく進む。
セリオンは蒼気で斬風を斬った。
レヴィアタンの風衝。
風の衝撃をレヴィアタンはセリオンに叩きつけた。
セリオンは翔破斬を出した。
風の衝撃は霧散した。レヴィアタンは旋風陣を唱えた。
旋風陣は風属性上級魔法である。
回転する竜巻がセリオンに襲い掛かる。
セリオンは蒼気を防御に利用して旋風陣を防いだ。
甲板が破壊された。
レヴィアタンは大きな風の槍を形成した。
大風翔槍である。
レヴィアタンは大風翔槍をセリオンに向けて投じた。
「はああああああ!」
セリオンは膨大な蒼気を出した。
セリオンは蒼気に刃で大風翔槍を迎撃した。
そして蒼気の刃でセリオンはレヴィアタンを斬りつけた。
レヴィアタンから血が流れる。
レヴィアタンは闇の渦を出すとその中に消えていった。
船はスヴェンスカ港で止まった。
乗客は一様に驚いて、スヴェンスカの都を見つめていた。
雪の都スヴェンスカは都全体が氷づけにされていた。
「これはいったい、この都で何があったんだ……?」
セリオンが言葉を漏らした。
セリオンとエスカローネは下船した。
二人は氷に近づいて確かめてみた。
「炎よ!」
エスカローネが手から炎を出して、氷を溶かそうとした。
しかし、氷はまったく溶けなかった。
「ダメね。この氷は普通の氷じゃないわ。おそらく『呪氷』よ」
「呪氷?」
「ええ。魔力によって作られた呪われた氷よ。これを溶かすには呪いのもととなった存在を倒すか、呪いを溶かせるか、そのどちらかね」
「そうか……」
セリオンとエスカローネは乗客と別れて、スヴェンスカの街中に入っていった。
驚くべきことに、人も家も建物もみな凍っていた。
「さて、これからどうしたものかな……」
「そうね。みんな凍っているんじゃ、どこに行っても同じだと思うんだけど……」
「そうだ。まずは王宮に行ってみないか? そこなら何かわかることがあるかもしれない」
「それがいいかもしれないわね」
二人は広場まで歩いた。凍てつく寒さが二人を刺激した。
その広場で一つの影が動いた。
「!? 誰だ?」
セリオンが叫んだ。
影は動きを止めた。
「あなたは誰? どこから来たの?」
人影は一人の少女だった。
「俺たちはヴァナディースから来たんだ。俺はセリオン」
「私はエスカローネよ」
「二人とも金髪で碧眼なのね……私はミーネ(Mine)。この都の住人よ」
ミーネは赤髪のショートカットをしていて、防寒着を着ていた。
「君はこの都市でいったい何があったのか知っているのか?」
「残念だけど、私も知らない。私がスヴェンスカに戻ってきたとき、都は氷づけになっていたの」
「俺たちはこの都の王宮を探しているんだ。できれば案内してもらえると助かるんだが……」
「王宮? いいよ。案内してあげる。でも、王宮のほうは魔物も出現するの。大丈夫?」
「ええ、並みの魔物なら私たちの敵ではないわ。安心して」
「そう……なら、わかった。王宮まで案内してあげる」
三人はスヴェンスカ王宮向かって歩き出した。
王宮は坂道になっている広場の先にあった。
「!? 気をつけろ! 何かいる!」
セリオンたちが王宮前広場までやってくると、周囲に雪の犬、雪猟犬の群れに取り囲まれた。
「こいつらからは露骨な敵意を感じるな。エスカローネ、戦う準備はできているか?」
セリオンは手から大剣を出した。
「ええ、セリオン!」
エスカローネはハルバードを出した。
雪猟犬はセリオンとエスカローネを敵とみなしたようだった。
徐々に間合いを詰めて、近づいてくる。
雪猟犬はのどから恐ろしい声を出していた。
雪猟犬の目は赤かった。
体は白い毛でおおわれていた。
両手の爪は鋭かった。
不意に、一匹の雪猟犬がセリオンに襲い掛かってきた。
セリオンは大剣でその雪猟犬を斬り払った。
その一匹に合わせるように、雪猟犬の、群れが二人に襲撃してきた。
「甘いわ!」
エスカローネは光矛を出すと、近づいてくる雪猟犬を一網打尽にした。
セリオンも鋭い牙を見せる雪猟犬を次々と屠っていった。
五分とたたないうちに雪猟犬は全滅した。
雪猟犬はすべて死に絶え、白い粒子と化して消えていく。
「すごい……こんなに強いんだ……」
ミーネが感嘆を口にした。
「まっ、こんなものだな。そっちはどうだ、エスカローネ?」
「ええ、向かってきた雪の犬たちを全滅させたわ」
「これも氷の主からのごあいさつなんだろうか……? まあいい。王宮へ行くとしよう」
ミーネは王宮に向かって歩き出した。
三人は王宮の前に着いた。
「ここが王宮グラキエス宮 (Glacies)よ」
「まるで氷みたいね」
「見ろ。門番も凍っている。いったいこの国で何が起きたんだ?」
二人は王宮に入ろうとしたが、ミーネは途中で歩みを止めた。
「 ? どうしたんだ、ミーネ?」
「私はここまで案内したからもう帰らせてもらうわ。私は平民だから、この中には入りたくないの」
「そうか。ありがとう、ミーネ。ここまで案内してくれて」
「それじゃあね。あなたたちの幸運を祈っているわ。Viel Glück!」
ミーネはくるりと背を向けて、坂を下って行った。
「じゃあ、行くか、エスカローネ!」
「ええ、セリオン!」
セリオンとエスカローネは王宮に入った。
王宮の道はカーペットで玉座の間に通じていた。
氷は一本道以外を防ぎ、玉座の間へとつながっているようだった。
セリオンとエスカローネはは扉を開けて玉座の間へと入った。
「あら? まだ凍ってない人がいたんですのね。あなたがたは誰ですか? そしてどこから来たのですか?」
メガネをつけた女性が言った。
その女性は髪を後ろで束ねて垂らし、高価な服を着ていた。
「俺はセリオン。セリオン・シベルスクだ」
「私はエスカローネ・シベルスカです」
「俺たちはヴァナディースからやってきた」
「そうですか。ヴァナディース……新興国ですね? スルト大統領が治めていると聞いております」
「あなたは女王なのか?」
「はい、そうです。私はスヴェンスカ王国の女王でシャリア (Schallia)と申します。ようこそ、雪の都スヴェンスカへ」
女王はにっこりとほほえんだ。
「いったいこの国でなにがあったんだ?」
セリオンが尋ねた。
「ああ……それにうまく答えられたなら!」
シャリア女王は頭を抱えて苦悩を現した。
「氷の魔女が現れたのです」
「氷の魔女?」
「そうです。氷の魔女はその凍てつく魔力によって、都全体を凍らせてしまったのです」
「なるほどな。その氷の魔女はどこにいる?」
「まさか、あなたがたは氷の魔女に挑むつもりですか? おやめなさい。無謀すぎます!」
「だが、それしか方法はないんだろう?」
「それは確かにそうですが……」
「あなたは氷の魔女がどこにいるかご存じなのですか?」
「……意思は硬いようですわね……それでは教えましょう。魔女は東にある氷の雪原にいます」
「わかった。東の雪原だな? じゃあさっそく向かうとしよう」
エスカローネはうなずいた。
二人は玉座の間を去っていった。
扉が閉まると、シャリア女王は口元をにやりと歪めた。
セリオンとエスカローネはスヴェンスカの東にあるという氷の雪原にたどり着いた。
「しかし、すごい吹雪だな……保温魔法を使っていなかったら行き倒れているところだ」
とセリオンが言った。
「そうね。シャリア女王は氷の雪原に魔女はいるって言っていたけど、そのどこにいるのか、私たちにはわからないわ」
「このまま、あてもなく探しても行き倒れるだけか……どうしたものかな。先に進むか、引き返すか……ん? あれは……?」
雪原の中に一匹の狼がいた。
その狼は全身にかたい殻をまとい、大きな体に鋭い目と爪を持っていた。
「魔狼ね! 気をつけて、セリオン。あの狼からは強力な魔力を感じるわ!」
それは魔狼フェンリルであった。
「エスカローネは下がってくれ。俺があいつの相手をする!」
「わかったわ!」
セリオンは大剣を構えた。
フェンリルはセリオンを見た。
どうやら敵と判断されたらしい。
のどをうならせて、威圧してくる。
フェンリルはセリオンとの間合いをつめた。
フェンリルは氷の息をはきつけてきた。
セリオンは蒼波刃を出した。
蒼気の刃が氷の息を切断する。
フェンリルは鋭い牙でかみついてきた。
セリオンは大剣を前に出し、牙をガードした。
「くっ!?」
フェンリルは体重をセリオンの大剣にかけてくる。
セリオンは徐々に押された。
フェンリルは爪に氷をまとった。
フェンリルの氷の爪。
フェンリルは氷の爪でセリオンを切りつけた。
セリオンはとっさに後方に跳びのいてかわした。
「氷をこいつは使うのか……相性が悪いな……」
フェンリルは大きな声で遠吠えをした。
すると地面から氷の牙が次々と現れ、セリオンに向けて地走った。
「蒼気!」
セリオンは膨大な蒼気を刀身にまとった。
セリオンはその闘気で氷の牙「氷裂牙」を粉砕した。
「くらえ!」
セリオンは蒼気の刃でフェンリルに斬りつけた。
フェンリルは氷を牙にまとい、その斬撃を受け止めた。
そしてさらに氷の牙でセリオンの斬撃を砕いた。
フェンリルの氷牙。
氷のレーザーがいく本もセリオンに向かう。
セリオンはそれを大剣で受け止めた。
フェンリルは大きなとがった氷の塊を放った。
セリオンはこの攻撃も、大剣でガードした。
フェンリルの多連・氷結槍。
氷の槍がセリオンを狙って飛ぶ。
それをセリオンは蒼気の刃で斬り払った。
セリオンは大剣に蒼気をまとわせて、斬撃を繰り出した。
「ギャウン!?」
フェンリルの右脚が切断された。
フェンリルは雪原に倒れこんだ。
「今だ!」
セリオンはジャンプした。
そして蒼気の刃を、フェンリルの頭に突き刺した。
「ギュウウウン!」
フェンリルは青白い粒子と化して消滅した。
二人はグラキエス宮に戻った。
玉座にはシャリア女王がいた。
しかし、その顔は邪悪に歪んでいた。
「シャリア女王、氷の雪原に魔女はいなかったぞ!そのかわり狼の魔物がいた!」
セリオンは事実を女王に対して叩きつけた。
女王は口元を歪めると。
「アッハッハッハッハ! そんなウソを本気で信じるなんてバカな人たちね! それにしても残念ね! フェンリルにやられてボロボロになればいいものを! なまじ生き残ってしまったために、さらなる恐怖と絶望に陥ることになるのよ!」
シャリア女王は邪悪な目を二人に向けた。
「つまり、私たちをフェンリルに殺させる計略だったんですか!」
「ウッフフフフフ! その通りよ! でも、うまくいかないものね……あのフェンリルを倒してしまうだなんて……おかげでこの私が自ら手を下さなければいけなくなったわ」
「シャリア女王! あなたは何者なんだ?」
「では私の本当の姿を見せてあげるわ!」
そう言うと、シャリア女王は凍てつく長い髪に、凍てつく服、そしてマントを身につけた魔女へと姿を変えた。
「フフフ……私はジュディーネ(Jchudine)。氷の魔女ジュディーネよ!」
ジュディーネは氷の杖をセリオンたちに見せた。
「!? おまえが魔女だったのか! どおりで計略など企むわけだ!」
セリオンは大剣を出した。
ジュディーネは氷の塊を作り出した。
氷の魔法「氷結弾」である。
ジュディーネは氷結弾をセリオンめがけて撃ちだした。
それをセリオンは大剣ではじいた。
ジュディーネは次々と氷結弾をセリオンに撃ち込んでいく。
セリオンはそれらをジュディーネに向けて弾き飛ばした。
「くうっ!?」
ジュディーネが苦悶の表情を浮かべる。
ジュディーネはひるんだ。
その瞬間、セリオンはダッシュした。
ジュディーネに向かって接近する。
セリオンは大剣をジュディーネに振り下ろした。
セリオンのこの攻撃をジュディーネは氷の杖でガードした。
セリオンはさらにジュディーネを攻撃した。
セリオンはジュディーネを追いつめる。
「くっ、この! 調子に乗るな!」
ジュディーネは杖の先から氷のレーザーを出した。
セリオンは大剣の刃で、この攻撃を受け止めた。
セリオンとジュディーネとのあいだに間合いが開く。
「多弾・氷結弾!」
セリオンは飛来する氷の弾を大剣で防いでいく。
「氷雪山!」
ジュディーネはセリオンの上方に氷の塊を作り出した。
氷の塊はセリオンを押しつぶすべく落下する。
セリオンは上を見ることなくとっさに後退した。
氷雪山はセリオンがいた位置に落下した。
セリオンは翔破斬をだした。
翔破斬は氷雪山を砕いた。
セリオンはジュディーネとの間合いをつめた。
ジュディーネは氷結槍をセリオンに放った。
セリオンは大剣を振るって吹き飛ばす。
セリオンは蒼気の刃、蒼波刃を二つジュディーネに向けて放った。
ジュディーネは氷のバリアで防いだ。
セリオンは蒼気を収束した。
そしてジュディーネに蒼気の刃を叩きつけた。
「蒼気凄晶斬!」
蒼気の攻撃はジュディーネのバリアを破って、ジュディーネにダメージを与えた。
蒼気の刃がジュディーネに届いた。
「なっ!? この私が!? こっ、こんなところで死ぬなんて……!? サタナエル様……」
ジュディーネは倒れた。
「サタナエル!?」
セリオンはジュディーネの死体を見守ると、ジュディーネの体は青白い粒子と化して消滅した。
「…………」
それを見届けると、セリオンは大剣をしまった。
「この氷の呪いも、サタナエルの陰謀だったのか……!? 氷が!」
ジュディーネが倒されたことで、都全体を覆っていた氷が消え去った。
氷は粒子と化して消えていった。
「やったわね、セリオン!」
ジュディーネが倒されたことで都市の氷も消えたようだ。ただ……」
「ただ?」
「この氷の一件もサタナエルの思惑によるものだったようだな。それが気にくわない」
「……! ……!」
「? あら?」
「? どうした、エスカローネ?」
エスカローネは周囲を見わたした。
「ねえ、セリオン。何か聞こえてこない?」
「そういえば、人の声らしきものが聞こえるな。そんなに遠くないようだ」
「声の主を探してみない?」
「ああ、そうしよう」
二人は声の主を探しに出かけた。
カーペットにそって二人は歩き、途中の階でカーペットから脱線し、ある部屋に入った。
そこは図書室だった。
「ここは、図書室か? ここから声が聞こえるな」
「セリオン、あの本を見て!」
「あれは……」
セリオンは赤いカバーの本が光っているのを見た。
セリオンはその本を手に取ってみた。
「助けてください! ここから出してください!」
「!? はっきり声が聞こえたぞ! 女性の声だ!」
セリオンは本を開いてみた。
すると、本の中から光があふれ、一人の女性が現れた。
「ここは……本の外ですね! 私は本の外に出られたのですね! ああ!」
「!? シャリア女王?」
それはシャリア女王だった。
「そうです。私はシャリア。この国スヴェンスカの女王です。あなたがたは?」
「実は……」
セリオンはこれまでのことをシャリア女王に話した。
三人は玉座の間に移った。
「そうですか……私が本に封印されていたあいだにそんなことが……この国を代表して感謝します。せめてこの国からのお礼としてあなたがたをもてなさせてください。今宵は宴にしましょう!」
その日の夜は宴が催された。
たくさんの料理が並び、多くの人がワインを味わった。
食べ物はサーモンが絶品だった。
また寒い地方ゆえか辛いものが多かった。
その日の夜――
セリオンは眠れずに王宮の外に出ていた。
北の地方にあるせいか風が冷たかった。
ふと、セリオンは背後に人の気配を感じた。
「どうやらジュディーネを退けたようだな」
「!? サタナエル! やはりおまえのしわざか!」
「その通りだ。ジュディーネをそそのかし、都全体を氷で覆わせたのも、ほかならぬこの私だ」
セリオンは大剣を抜いた。
「わからないな。おまえはいったい何を考えている?」
「フフフ……すべては私とおまえの決着のためにあるのだ。次はバイノイト、ゴルディヒ、ベリンシュタインに来るがいい。私たちのクライマックスはそれからだ」
そう言うとサタナエルの幻は消えた。
翌日、シャリア女王は自ら、セリオンとエスカローネの出発を見送りに来た。
「あなたがたに神の祝福がありますように。それでは良き旅になることを祈っています。お気をつけて」
「ありがとう、シャリア女王。俺たちは次はバイノイトを目指す」
セリオンはバイクのエンジンを入れた。
そうして二人はバイクで走り去った。