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ハデス国

セリオンとエスカローネはサタナエルの言葉通り、ハデス国を目指していた。

ハデス国の首都は冥都ヒュプノス(Hypnos)。

二人はバイクでヒュプノスの近くまでやってきた。

「あそこに見えるのがハデス国の首都ヒュプノスか」

「ここからも見えるのね。なんて大きいのかしら」

「この分なら、今日中にはヒュプノス入りできそうだな。ん?」

「? どうしたの、セリオン?」

二人の周囲に突然投げ槍が投げられた。

セリオンらはバイクから降りた。

「何者だ?」

セリオンの前に四体のグレムリンが現れた。

グレムリンたちは槍を持っていた。

セリオンたちに殺気を向けている。

「おまえたちはハデス国に敵対した。ゆえにここで死んでもらう」

「カカカ。抵抗しても無駄だ」

「クークククク! 死にやがれ」

「やれやれ。おまえたち相手に時間を無駄にしている暇はない。一気に蹴りをつけるぞ」

セリオンは大剣を出すとグレムリンたちに斬りこんだ。

「がっ!?」

「ぐっ!?」

「げは!?」

「ぎゃっ!?」

四体のグレムリンはあっさりとセリオンに斬殺された。

「さあ、エスカローネ。ヒュプノスに入ろう」

「そうね」

セリオンとエスカローネはハデス国の首都「冥都ヒュプノス」に入った。

ヒュプノスには黒い鎧をきた兵士がたくさんいた。

「ヒュプノスに着いたか」

「!? サタナエル!?」

「フッ、これは幻だ。おまえたちに伝えたいことが私にはある。王宮前で『グリューネ婦人』を訪ねてきたと伝えるがいい。それで王宮の中に入れるだろう」

サタナエルはセリオンに向かいなおると。

「おまえと再び会えるのを楽しみにしている。では」

そう言うとサタナエルの幻は消えた。

「グリューネ婦人か……確か馬に座っていたな」

「あの人とスキュラ女王には何か接点があるのかしら?」

「さあ? どうだかな……まあ、いい。王宮に行こう」

セリオンとエスカローネは王宮の前の門の所にやってきた。

「なんだ? この二人は? ここは観光案内所じゃないぞ? さあ、とっとと失せろ!」

警備の兵士は暴力的にセリオンとエスカローネを排除しようとした。

「俺たちはグリューネ婦人を訪ねてきたんだ」

「『グリューネ婦人』だと!?」

兵士は急に顔色を変えて姿勢を直立させた。

「はっ! 失礼いたしました。最優先で面会できるように取り計らいますので、しばしお待ちください!」

兵士は門の奥に消えた。

「まさかグリューネ婦人の名前を出すだけで入れるようになるとはな……」

「驚いたわ。あっ、セリオン。兵士の方が帰ってきたわよ」

「お待たせいたしました! ただ今、スキュラ女王陛下との謁見にお連れ致します!」

「スキュラ女王陛下?」

セリオンはいぶかしんだ。

だが、二人は兵士の後をついて行って、王宮の玉座の間へと入って行った。

「あらあら、こんな所までよくやってこれたわね。地上の方?」

「おまえは……グリューネ婦人! これはどういうことだ?」

「フフフ……私はスキュラ女王。このハデス国の支配者よ。グリューネ婦人というのは私への敬称よ。部下の報告で聞いているわ。ルーヌでは私の軍隊をコテンパンにしたんですってね? 二人とも強いのね。お名前をうかがってもよろしいかしら?」

「俺はセリオン・シベルスク」

「私はエスカローネ・シベルスカよ」

「そう……セリオンに、エスカローネね。単刀直入だけれど、あなたたちは私の部下になるつもりはない?」

「なんだと?」

「言葉通りの意味よ。特にセリオン。あなたは私の騎士にしてあげるわ。あなたはとてもハンサムでかっこいいのね。それにクールなところも魅力的だわ」

「答えるまでもない! 俺は拒否する!」

スキュラは妖しい笑みを浮かべた。

「フフフフ……そう。でも、私がそうといったらそうなのよ。いいわ。あなたには少し考える時間を上げましょう」

スキュラはセリオンの前に手をかざした。

「亜空間に送ってあげるわ。そこでゆっくりと私の提案を考えるのね」

セリオンの体に時空の穴がまとわりついた。

白い腕が絡みつき、セリオンを拘束する。

「くっ!? これは!?」

セリオンは亜空間に消えていった。

「セリオン!」

エスカローネは手を伸ばした。しかし、エスカローネの手は空をつかんだ。

「フフフ……あとは女同士で話しましょうか」

「セリオンをどこにやったの!?」

「ヴンダー・ハウス(Wunderhaus)というところよ。私に歯向かった者どもを閉じ込めておく、いわば監獄ね」

「セリオンを解放しなさい!」

エスカローネはハルバードを出した。

「フフフフ! いいわね。あなたの実力、試させてもらうわ!」




セリオンはある洋館で目を覚ました。

「あなた、大丈夫?」

「君は?」

セリオンはある看護師に起こされた。

「私はチサ(Czisa)服装の通り看護師よ。あなたは新参者のようね。名前は?」

「俺はセリオンだ」

「そう、セリオンというのね。立てる?」

「ああ、大丈夫だ?」

セリオンは床から立ち上がった。

「ここはどこなんだ? 亜空間に閉じ込められたことはわかるんだが?」

「ここはね、ヴンダー・ハウスといって、スキュラに歯向かった者たちを収容する監獄よ」

「そうか……どうにか脱出しないとな」

「あなたの考えは甘いわね。この亜空間はスキュラに許可された人間以外は外にでることができないの」

「出口はないのか?」

「そんなものがあるなら、私はもう脱出しているわよ。とりあえず基本情報は教えたから。あとはあなた自身の目と体で、見てきたらどう?」

「ああ、ありがとう。とりあえず、脱出の方策を探ってみる」

セリオンはチサと別れて、部屋を出て行った。

セリオンは洋館の最上階にいたらしい。

階段を見つけて下の階に降りた。

セリオンは広間を訪れた。

そこの机の上にはチェス盤があった。

「チェスか? 誰もやっていないようだな……」

セリオンはチェス盤を眺めた。

「ん? キングとクイーンがないな。これが何を意味するかは分からないが……」

ヴンダー・ハウスの中では、いろいろな人がいきかいしていた。

談笑する人、うろうろする人、本を読んでいる人などがいた。

「この人たちは何を見ているんだ?」

セリオンはふと疑問に思った。

それぞれの人々がどこかうつろであるように感じた。

チサのように理性を持っている人のほうがここでは少数派なのかもしれない。

「脱出のための方策を探さないとな……試しにあのチェス盤を完成させてみるか」

セリオンはコマを探しに出かけた。

「コマは光っていたから、目につくところのあれば見つけられるんだが……」

セリオンはいろんな部屋を歩いて回ることにした。

「書斎か……ん? あの机の上にあるのは!」

セリオンは机の近くに近寄った。

そこにはキングのコマがあった。

「これか。さて、次はクイーンだが……」

「あら? こんなところに何か用?」

そこにはチサがいた。

チサは長くて青い髪をみつあみにして垂らしていた。その手には本があった。

「ああ、チェスのコマを探しているんだ。どこかでコマを見つけなかったか?」

「そうねえ……ハシゴの上に何かキラキラしたものがあったような……どうしてコマを探しているの?」

「元の空間に戻れる手がかりにならないかと思ってね」

「そう……見つかるといいわね」

「ああ」

セリオンはハシゴを探した。

「いくつかのハシゴがあるな。どれも本棚にくっついている……ひとつずつ探してみるか」

セリオンは一つずつハシゴの上がってみた。すると三つ目のハシゴの上にクイーンのコマがあった。

「あった! 見つけた! これがクイーンだ!」

セリオンはさっそく広間に向かって行った。

そこにキングとクイーンを置いてセットする。

「さて……これでどうなることやら……」

するとチェス盤の上にさらなる亜空間の入口ができた。

「よし! 跳びこんでみよう!」

セリオンは入口に身を躍らせた。

そこは大きなチェス盤の上だった。

そこには血のように赤い鎧を着た二人の戦士がいた。

「私はキングだ」

「私はクイーンよ」

キングは黒い大剣を持ち、クイーンは大きなメイスを持っていた。

「きさまには我々と戦ってもらう! スキュラ女王陛下のために!」

「オーホホホホホ! 私たち二人を相手に勝てるとお思い?」

「勝つさ。今までの敵たちも倒してきたんだ。いいぞ。相手になってやる!」

セリオンは大剣を構えた。

クイーンは双連・火炎槍を出した。

セリオンは蒼気を発する。

セリオンは蒼気の刃で火炎槍を斬り裂いた。

キングの斬撃。

セリオンは蒼気をまとった刃でガードする。

セリオンは反撃した。

蒼気の刃でセリオンはキングを斬りつけた。

キングは後退した。

セリオンの攻撃はかわされた。

クイーンの火炎弾連発。

セリオンは蒼気の刃でさばいていく。

キングはジャンプ斬りを放った。

セリオンは受け止めきれずに後退した。

キングは闇の斬撃「闇黒斬」を放った。

セリオンは蒼気を大剣にまとわせて防いだ。

クイーンのメイス攻撃とキングの斬撃。

二人の連携は隙が無く、タイミングも鋭かった。

「くっ!?」

セリオンはしだいに追いつめられていった。

「ホーホッホッホッホ! これがあの青き狼セリオン・シベルスク! なんとたあいのない!」

「フッ、我らの力をもってすれば、英雄の力もこれまでか」

「死になさい! 火炎噴!」

セリオンは横に跳んでかわした。

クイーンは接近して、セリオンにメイスで攻撃を仕掛けてきた。

「くらいなさい! クラフト・アングリフ (Kraftangriff)!」

クイーンはメイスを振り下ろした。

強烈な衝撃をまとった打撃。

セリオンは蒼気の刃で打撃した。

「くらえい! 雷光撃!」

「雷鳴剣!」

キングの雷とセリオンの雷がぶつかり合った。

クイーンがメイスで打撃しようとしてきた。

セリオンは素早くクイーンを斬った。

「がっ、そんな!?」

「おのれ!」

「雷光剣!」

セリオンは雷の力を収束し、必殺の一撃・雷光剣を放った。

「がはっ!? こんな……こんなことが……」

雷のパワーがキングを襲う。

キングとクイーンは倒れた。

「ふう……なんとか倒せたか……」

すると亜空間は消滅し、セリオンは元の空間に戻ってきた。

そこではチェス盤は消滅し、コマも消えていた。

「あら? 亜空間から帰ってきたのね。調子はどう、セリオン?」

「チサか。調子は悪くない。Es geht mir gut」

「あなたがチェス盤の秘密をといたおかげで、新しく亜空間の扉が開いたわ。私もここにとどまるつもりはないし、いっしょに行ってみましょう」

「ああ。だが、ここにいる人たちはどうするんだ? このまま見捨ててはおけない」

「だめよ。ここにいる人たちは心をスキュラに支配されているの。助けるにはスキュラを倒すしかないわ」

「そうか……わかった。じゃあ、次の亜空間に進もう」

セリオンとチサは新しい亜空間の扉に跳びこんだ。




「ここは……闘技場か?」

セリオンたちはリングのある闘技場で目を覚ました。

「ほう……ここまで来るとはな……おまえはかなりの実力者というわけか?」

「おまえは……確かスキュラといっしょにいた騎士か?」

「その通りだ。おまえたちの目的は元の空間に帰ることなのだろう? その方法を教えてやってもいいぞ」

「……どういう気だ?」

「何も悪意などないとも。帰りたければ闘技場に参加すればいい。最後まで勝ち残れば元の空間に帰れる。手続きは私がしておいてやろう。おまえの名は?」

「セリオンだ」

「セリオン、か。わかった。それでは……」

騎士は背を向け、二人から去っていった。

それを不審そうにチサは見ていた。

「どういうつもりかしら? 何か、意図があるのかも?」

セリオンはこうべを振った。

「いいや、あいつはそんな奴じゃないさ」

「よくそう言えるわね。信用するの?」

「どのみち、あいつの言う通りにしないと先に進めないんだ。こうするしかないさ。それに俺は戦いには自信がある」

「そうね……あなたほどの実力者ならそう言えるわね」

「さて、しばらくのあいだ何をして過ごそうか?」

「あら? 今、試合が行われているわ。どうせなら、それを見て過ごさない?」

「そうだな……」

二人はほかの人の試合を観戦することにした。

リングの上では、ほかの選手がドラゴンゾンビと戦っていた。

選手は槍を持っていたが、ドラゴンゾンビの毒の息に抵抗できず、力尽きて倒れた。

「ドラゴンゾンビか……どうやらモンスターと戦うようだな」

「そうね……ドラゴンゾンビ……かなりの強敵だわ……倒せる自信はある?」

「ああ。ドラゴンゾンビもアンデッドだ。光に弱いことには変わりはない」

「セリオン選手! 今すぐリングの上に上がってください! 繰り返します! セリオン選手!」

「どうやら呼ばれたようだ。行ってくる」

「行ってらっしゃい」

セリオンはリングの上に上がった。

セリオンの体に、観衆の視線が集中した。

セリオンの前に、灰色をした獰猛な犬が三体現れた。

「グラウ・フント(Grauhund)か。まずは小手調べだな」

セリオンは大剣を構えた。

「試合、始め!」

グラウ・フントはセリオンをまるで食事を見るような目で見てきた。

舌なめずりをする。

一匹のグラウ・フントがセリオンに跳びかかってきた。

鋭い牙が口から現れた。

セリオンは大剣を振るい、そのグラウ・フントを斬り払った。

「キャイイイン!?」

グラウ・フントは出血しながら、リングの外に弾き飛ばされた。

「悪いが、手加減はしない」

残りの二匹のグラウ・フントがセリオンに跳びかかってきた。

セリオンは冷静に、二匹のグラウ・フントをさばいた。

セリオンは大剣で二匹とも払いのけた。

二匹のグラウ・フントがリングの外に弾き飛ばされた。

「セリオン選手の勝利です!」

観客はつまらなそうな顔をした。

セリオンがグラウ・フントに引き裂かれたほうが楽しめたというような顔だ。

「さて、セリオン選手は次も勝てるでしょうか? 次の敵はドラゴンゾンビです!」

「ドラゴンゾンビか」

ドラゴンゾンビが奥の控室から連れてこられた。

兵士たちが槍でつつき、ドラゴンゾンビを誘導する。

「セリオン対ドラゴンゾンビ! 試合、始め!」

ドラゴンゾンビはさっそく毒の息をはきつけてきた。

さきほどの選手の命を奪った攻撃だ。

セリオンは光輝刃を出した。

そして、セリオンは光輝刃で毒の息を斬り裂いた。

ドラゴンゾンビにセリオンは接近した。

セリオンは光の大剣で攻撃した。

ドラゴンゾンビが斬り刻まれる。

「グギャオオオオオ!?」

ドラゴンゾンビは再び毒の息をはいた。

「今だ!」

セリオンは光波刃でドラゴンゾンビの毒の息を無力化すると、光輝刃でドラゴンゾンビののどを突き刺した。

ドラゴンゾンビは黒い粒子と化して消滅した。

「セリオン選手の勝利です!」

「ぶううううう!!」

観衆は露骨なブーイングを上げた。

これまでドラゴンゾンビを倒せた選手はいなかったからだ。

「次で最後の試合です! セリオン対タナトス(Thanatos)!」

控えの間から先ほどの黒い騎士が現れた。

「おまえは……」

「フッ、おまえがここまでやるとは思わなかったぞ。私の名はタナトス。スキュラ女王陛下の騎士だ。一ついいことを教えてやろう」

「いいこと?」

「私を倒せば元の空間に帰れるぞ」

「!? そうか」

「もっとも私を倒せればの話だがな!」

タナトスは剣を抜いた。

「はあああああ! マグマ斬!」

マグマの斬撃がセリオンに迫る。

セリオンは氷結刃を出した。

氷の大剣でセリオンはマグマ斬を一刀両断にした。

タナトスは闇の斬撃を飛ばしてきた。

闇黒波斬である。

セリオンは冷静に対処した。

光の刃を飛ばす技、光波刃を出して闇黒波斬を迎撃する。

タナトスは闇を剣にまとわせた。

「はっはっは! やるではないか! だが、これはどうだ? 闇黒剣!」

闇の剣がセリオンに襲い掛かる。

セリオンは光輝刃を出して、闇の剣にぶつけた。

光と闇がスパークを起こす。

二つの力は拮抗していたが、光が闇を破った。

「ちっ!? まさか、この私がおされるとは!? おのれ! 串刺しになるがいい!」

タナトスは空中に浮遊すると、多連・闇黒槍をセリオンに向けて飛ばした。

セリオンは光の大剣で闇の槍を斬り払った。

セリオンは蒼気をまとった。

そしてセリオンは蒼気の刃でタナトスを攻撃した。

「ぐおおお!?」

タナトスは剣でガードしたものの、蒼気による攻撃を防ぎきることはできず、鎧に傷を走らせた。

「この私が! この私が負けるはずはない! 死ぬがいい、セリオン! これぞ我が秘剣!

邪星剣じゃせいけん!」

タナトスは剣を闇のオーラで伸ばし、セリオンに叩きつけてきた。

闇がリング状にあふれる。

「フハハハハハハ! どうだ! 見たか! この私が勝者とな……なっ!?」

セリオンが突然闇の中から跳びだした。

セリオンは光輝刃でタナトスを突き刺した。

「がはあ……!? まっ、まさか……この私が……」

タナトスはリングの上に落下した。

セリオンはリングの上に着地した。

その瞬間、亜空間が停止した。

「なんだ? 止まっているのか?」

「どうも、私たち以外は止まっているようね」

「チサ!」

「たぶん、これはみんな亜空間の一部だったからなんだわ。つまり映像みたいなものね」

「そうか……ん? あそこに亜空間のゲートが!」

セリオンの前にゲートが現れた。

「タナトスが言った通りだったな」

「さあ、現実空間に帰りましょう!」

セリオンとチサはゲートの中に入った。




そのころ、エスカローネとスキュラは戦っていた。

「いい加減に、セリオンを返しなさい!」

「ホホホ! 拒否するわ! 彼は私のものよ!」

スキュラは猛毒の槍「猛毒槍」をエスカローネに向けて放った。

エスカローネの金光砲。

エスカローネはハルバードの先端をスキュラに向けて金色こんじきの光を発射した。

「くらいなさい! 多連・猛毒槍!」

「聖光矢!」

スキュラの多くの猛毒の槍をエスカローネは聖光矢をいくつも撃つことで迎撃した。

「ハイリヒ・クロイツ!」

エスカローネは聖なる十字を描いた光を噴出させた。

「くうっ!?」

スキュラは全身をバリアで覆った。

「聖なる十字に耐えるなんて……でも、私の攻撃はこれからよ! 聖光球!」

エスカローネは聖なる光の球を出した。

「毒弾!」

スキュラが毒の弾で聖光球を迎撃する。

毒霧どくむ!」

スキュラはエスカローネの周囲に毒の霧を発生させた。

「光矛!」

エスカローネは光のハルバードで毒霧を斬り払った。

「ここまで私の攻撃を防ぐなんて……なかなかやるわね。でも……!?」

「光?」

スキュラとエスカローネのあいだにゲートが現れた。

そしてそのゲートからセリオンとチサが出てきた。

「セリオン!」

「そんな!? 私の亜空間から脱出してくるなんて!?」

スキュラは驚愕した。

「スキュラ、おまえの亜空間では楽しませてもらった。どうやらおまえはエスカローネと戦っていたようだな。これからは俺が相手だ」

セリオンは大剣を構えた。

「フフフ、アッハッハッハッハ!」

スキュラは大声で笑った。

「人間ぶぜいが! この私にどこまでやれるか、思い知らせてあげるわ! アハハハハハ!」

「!? なんだ? 強力な魔力を感じる……これは……」

「この私の真の姿を、あなたたちに見せてあげるわ!」

スキュラはおのれの魔力を解放した。

スキュラは大蛇の尾を持ち、上半身が人の姿へと変化した。

「アッハッハッハッハ! 見なさい! この私はハデス国の主! スキュラ=ペルセフォネイア

(Scylla-Persephoneia)よ! 毒の洗礼を見せてあげる!」

スキュラは猛毒槍を放った。

「そんなもの!」

セリオンは光輝刃を出した。

セリオンは光の大剣で猛毒槍を斬り払った。

スキュラはさらに猛毒槍を連発してくる。

いずれもセリオンにとって、迎撃は容易であった。

同じく、光輝刃で斬り払う。

スキュラは毒の弾を撃った。

セリオンは構える。

毒の弾をセリオンは光輝刃で霧散させた。

スキュラは両手に毒の力を収束し、砲撃してきた。

スキュラの毒砲である。

セリオンは毒の砲撃を回避した。

スキュラは両手に再び毒の力を集め、毒砲を連発してきた。

セリオンはあるものは回避し、別のものは光輝刃で斬り払った。

セリオンはスキュラに接近した。

セリオンは近づいて大剣を振るう。

スキュラはバリアを張ってセリオンの攻撃を防いだ。

「多連・猛毒槍!」

「蒼気!」

スキュラは多連・猛毒槍を展開した。

セリオンは蒼気を出した。

猛毒槍が一斉に発射された。

セリオンは膨大な蒼気を大剣にまとわせ、一気に猛毒の槍を撃墜した。

スキュラはセリオンに接近した。

スキュラは緑色の長い爪で、セリオンを攻撃してきた。

セリオンは大剣でガードした。

「アッハハハハハ! 私の毒で魅惑してあげる!」

なおもスキュラは緑の毒の爪でセリオンを攻撃してくる。

スキュラは口から毒の息をはいた。

セリオンは一気にスキュラとの間合いを取った。

スキュラは多連・猛毒槍で追い打ちをかけてくる。

セリオンは光の大剣を持って、スキュラに接近すると、光子斬をスキュラの上半身に向けて放った。

「ああああああああ!?」

スキュラから緑の血があふれる。

「そんな……!? この私が!? スキュラ=ペルセフォネイアが敗れるなんて……」

スキュラは緑色の粒子と化して消えていった。

「ああ! サタナエル様!」

「!? サタナエルだと!?」

セリオンはスキュラを問い詰めようとした。

しかし、その時間もなく、スキュラは消えた。

「セリオン!」

「エスカローネ!」

エスカローネはセリオンの腕の中に跳びこんだ。

「セリオンが無事に帰ってきてよかったわ」

「エスカローネ、心配をかけたな……俺はスキュラの亜空間から戻ったぞ?」

「あらあら、熱いわねー!」

「チサ」

「セリオン、この人は?」

「ああ、亜空間でいっしょになったんだ。彼女の助言がなければ俺は戻ってこれなかったかもしれない」

「そうなの……私はエスカローネと申します。セリオンの妻です」

「あら、そうなの。あなた、結婚していたのね。まあ、いいわ。見て、城の外を」

「? あれは……」

セリオンは城の外を窓から見た。

そこには亜空間で見かけた人たちがいた。

「スキュラが死んだから、彼らも解放されたのよ」

「そうか。それは良かった」

「さて、問題はこれからどうするか、ね。この鏡を見て」

「この鏡がどうかしたのか?」

セリオンとエスカローネはチサが示した大きな楕円状の鏡の前で立った。

「この鏡は一種のゲートなの。この場とアウェルヌス湖をつないでいるわ。ついてきて」

チサは鏡に触れた。するとチサの体が鏡に吸い込まれた。

「なっ!? 吸い込まれた!?」

セリオンは驚きをあらわにした。

「じゃあ、俺たちも行ってみようか」

「そうね、セリオン」

次の瞬間、セリオンはアウェルヌス湖の近くにいた。

「ここは……スキュラと出会った場所か? 驚いたな」

「地上に戻ってこれたのね。やっぱり地上はいいわね」

「チサはこれからどうするんだ? 一人旅は危ないだろう」

チサは顔を振った。

「いいえ、お二人の邪魔はしたくないから、一人で行くわ。こう見えても、護身術くらい身につけているのよ」

「そうか……それじゃあ、ここでお別れだな」

「ええ、さようなら。神がかなえてくれるなら、また会いましょう!」

そう言ってチサは歩いて行った。

「俺たちも次はどこに行くか、考えないとな」

「そうね。でもどこにサタナエルはいるのかしら?」

「私ならここにいる」

「!? サタナエル!」

セリオンは大剣をサタナエルに向けた。

「これは幻だ。地下の世界への旅はどうだった? スキュラを倒したのは見事だったぞ?」

「サタナエル……おまえはいったい何がしたいんだ?」

「フフフ……私はおまえを導いているのだ。セリオン、次は北海ほっかい・ノルトハイム地方に来い。その地方のスヴェンスカ(Swenska)に行け。氷の魔女がおまえを出迎えてくれるだろう」

「氷の魔女だと?」

「それでは、さらばだ」

そう言うとサタナエルの幻は消えた。

高評価してくれた方がいて感謝しています。書いていて励みと自信になります。自分の作品が面白くないのではないか、魅力的ではないのではないかと、深く悩みました。いろいろ小説やライトノベルを読んで作品の研究をしてきました。もしかしたらその研究の成果が出てきたのかもしれません。作家としての私にとって評価される作品を作ることは一生悩ましい課題だと思います。文章を書いていて思うことは、文章とその人の個性は切り離せないということです。私の文章がつまらないということはこの私自身がつまらない人間であるということです。私の文章からおもしろさを得られるのならそれ以上作者としてうれしいことはありません。私の作品を読んでくれたすべての人々に感謝します。


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