ベレンシュタイン
ベレンシュタイン(Bellenstein)にて。
ある道の上で、一人の女性と一匹の犬が敵と戦っていた。
女性は手に銃を持っていた。
その銃は「霊光銃」と言って悪魔や妖魔にも効く銃だった。
女性には一匹の犬が従っていた。
その犬の体の色は白だった。
「セルゲイ(Sergei)! そっちに行きましたよ!」
とたんに、白犬のセルゲイは「敵」にかみついた。
「敵」は黒ローブの魔物であった。
女性は霊光銃で敵の頭を撃ちぬいた。
敵は倒れて黒い粒子と化して消滅した。
「これで終わりです!」
女性は霊光銃に魔力を集中して、膨大なパワーを作り出すと、それを敵たちに向けて発射した。
敵たちは一気に光芒線で貫かれて大打撃を受けた。
敵たちは次々と倒れて、息絶えた。
「ふう……終わりましたね。それにしてもフィスパー(Fisper)……名前以外はほとんどわからない敵……何者なんでしょうか……」
セリオンとエスカローネはバイク「メルツェーデス」でトンネルを移動していた。
二人はすでにベレンシュタインに入っていた。
「ねえ、セリオン?」
「なんだ、エスカローネ?」
「サタナエルはこの都市で何をしようとしているのかしら?」
「さあな……あいつが俺との決着をつけることを考えているのは確かなんだが、それ以外あいつのことはわからないな。ただ……」
「ただ?」
「あいつがこの都に来るよう促したんだ。また、バイノイトの時のように何かが起こるに違いない」
「!? セリオン、あれは!?」
「なんだ? 霧か? スピードを下げよう……」
セリオンたちの前に突如黒ローブの魔物が現れた。
セリオンはとっさにバイクを止めた。
「なんだ? こいつらは?」
黒ローブの魔物はセリオンたちの前に立ちはだかった。
セリオンとエスカローネはバイクから降りた。
「どうやら戦うつもりのようね」
「ああ、そうらしいな。エスカローネ、ゴッテス・ハウホはだせるか?」
「もちろんよ!」
「じゃあ、俺がこいつらの足を止める。そのあいだ時間は俺が稼ぐ」
「ええ!」
「じゃあ、行くぞ! 光輝刃!」
セリオンは光の大剣で謎の黒ローブの敵に斬りかかった。
黒ローブの敵は光に弱いらしく、セリオンにとっては紙のようにもろい相手だった。
黒ローブの敵は味方がやられても平然としていた。
黒ローブの敵は口から濁った液体のような光線を出した。
セリオンは光輝刃でガードする。
「これは……吸収、ドレインか!」
「セリオン! 準備ができたわ!」
「よし!」
「くらいなさい! ゴッテス・ハウホ(Gotteshauch)!」
黒ローブの敵の上方から青白い光芒が降り注いだ。
青白い光芒は敵たちに容赦なく降り注ぐ。
最後に強力な一撃をくらい、黒ローブの敵たちは一度に全滅した。
セリオンとエスカローネはホテルを探していた。
おカネには余裕があったため、いいホテルに泊まるつもりだった。
二人はホテル「オオタカ」に泊まることにした。
受付でセリオンは尋ねた。
「どこか観光のおすすめはありますか?」
受付の女性は。
「そうですね。郊外のラベンダー畑などはどうでしょうか?」
「ラベンダー畑?」
「ええ、そうです。今の季節なら一面に紫の花がごらんになれますよ」
「そうですか。ありがとうございます」
セリオンはエスカローネのもとに戻った。
「どうだったの?」
「ああ、郊外にラベンダー畑があるそうだ。さっそく行ってみないか?」
「時間には余裕があるし、行ってみるのもいいわね」
二人は郊外にあるというラベンダー畑を訪れた。
「うわー……きれいね」
エスカローネが感嘆を漏らす。
「そうだな。紫の花がきれいだ」
ラベンダー畑は圧巻だった。
ラベンダーの紫の花と、緑の茎がいいコントラストをしていた。
そんなラベンダーが畑一面に広がっているのだ。
すばらしい光景だった。
セリオンらはこの光景に息もなく見とれた。
「ごきげんよう。お花畑を見にいらしたのですか?」
そこに一人の女性が現れた。
その女性は紫の髪を長く伸ばし、後ろで束ねて垂らしていた。
服は紫の上衣に白いロングのプリーツスカート、そしてブーツだった。
「あなたは?」
エスカローネが尋ねた。
「私はヒルデ(Hilde)といいます。ベレンシュタインの修道院に属するものです。あなたたちのお名前は?」
「私はエスカローネ・シベルスカといいます」
「俺はセリオン・シベルスクだ」
「そうですか。セリオンさんにエスカローネさんですね。そうでした。もう一人の名を教えましょう」
そうすると、ヒルデの近くに一匹の白い犬が現れた。
「この子はセルゲイ。私のパートナーです。ほら、セルゲイ。ごあいさつなさい」
「ワオン!」
セルゲイは軽く吠えた。
「へえ……よくしつけられているんですね。触ってもいいでしょうか?」
「もちろん、どうぞ」
エスカローネはセルゲイの頭を優しくなでた。
セルゲイは舌を出してエスカローネの手を優しく舐めた。
「きゃっ!?」
「こら、セルゲイ!」
セルゲイは悪びれずにエスカローネに甘えた。
「あなたがたはラベンダー畑を見に来たんですか? きれいでしょう? 私もベレンシュタイン一のスポットと自慢できますよ。今の時期はラベンダーがちょうど花を咲かせて……!?」
「!? こいつらは!?」
「また、黒ローブの魔物!?」
セリオンたちは三方から黒ローブの魔物に包囲された。
「この黒ローブの魔物はフィスパーというようです。あなたがたは戦ったことがあるようですね?」
ヒルデが霊光銃を構えた。
「その時はエスカローネの光魔法で全滅させたが……」
「三方から囲まれているわね。一人一角、どう、いける?」
「ではその作戦で行きましょう。それでは!」
ヒルデが前面に躍り出た。
霊光銃は使用者の魔力をエネルギーとし、銃弾に変える。
ヒルデはフィスパーの頭部めがけて銃弾を撃ち込んだ。
次々とフィスパーたちが倒されていく。
「一気にけりをつけます! エネルギー充填!」
ヒルデの霊光銃が青白い輝きを放った。
ヒルデは大きな弾丸をフィスパーたちに向けて撃った。
フィスパーたちは大きな光に呑み込まれて消えた。
エスカローネは光のハルバードを出して、フィスパーたちを斬り、突きさらに薙ぐ。
「大金光砲!」
エスカローネは巨大な光芒を放つと、フィスパーの一角を全滅させた。
「光波刃!」
セリオンは光波刃でフィスパーを攻撃した。
光の刃がフィスパーたちをなぎ倒していく。
戦いはセリオンの一方的な攻撃によってかたが付いた。
光の刃はフィスパーたちを斬り裂いた。
かくしてフィスパーたちは全滅した。
「ふう……どうやら全滅させたようだな……それにしてもフィスパーか……こいつらは何者なんだ?」
「わかりません。フィスパーという名前しかわかってはいないのです。どうやら人の生命力を喰らうようですが……」
「それにしても銃か。君は強いんだな」
「ええ、銃で戦う人は珍しいから」
「これは魔力をエネルギーに変えるんです。ですから、魔力がある限り戦うことができます。お二人はこれからどうされるおつもりですか?」
「俺たちはホテルに帰ろうと思う」
「そうですか……それなら後日ベレンシュタインの修道院をお訪ねください。歓迎しますよ」
「わかった。後日行かせてもらう」
「それでは、セルゲイ! セリオンさん、エスカローネさん、ごきげんよう!」
セリオンとエスカローネはバイクでベレンシュタインに戻ろうとした。
その時、道路で隣からバイクで近づいてくる男がいた。
「? なんだ?」
「へい! 君がセリオン君かな?」
「なんだ、おまえは?」
「俺か? 俺はレフ。レフ・ネフスキー(Lev Nevsky)だ! 少し遊ぼうぜ!」
レフと名乗った男は金髪の長髪、短いあごひげに青い服、黒いブーツをはいていた。
レフは剣を抜くと左手で持ち、セリオンを斬りつけてきた。
セリオンはとっさに大剣を出してガードした。
「くっ!?」
「へい、へい、へい! どうした?」
レフはさらに剣を振るって攻撃してきた。
セリオンは苦戦した。
しかし、セリオンは隙を見つけてレフの剣を弾き飛ばした。
「うおーわ! あぶね! やるじゃないか、Mein Freund(わが友)!」
セリオンは大剣でレフのバイクのエンジンを傷つけた。
「おう、Mein Gott! ここまでか……」
レフのバイクはセリオンたちとどんどん距離を離していった。
「また、会おうぜ、Mein Bruder (きょうだい)!」
セリオンの背後からどこか楽し気な声が響いた。
レフ・ネフスキーか……何者だ?」
セリオンとエスカローネはホテルで一泊した後、ヒルデに招かれた修道院を訪れた。
修道院の建物は大きかった。
門の前でガードをしている女性に声をかける。
「すみません、セリオン・シベルスクと申します」
「私はエスカローネ・シベルスカです」
「セリオン様に、エスカローネ様ですね。ヒルデから事情は聞いております。どうぞ、お入りください」
「ありがとうございます」
セリオンたちは修道院の敷地に入った。
修道院の聖堂ではみんな神に祈りをささげていた。
セリオンとエスカローネは修道院長のマリアーネ(Mariane)から食事に招かれた。
パンとスープの質素な食事だったが、おいしくいただくことができた。
修道女のフィルティッテ(Filtitte)が二人の世話をしてくれた。
食事の後、セリオンとエスカローネはマリアーネ修道院長のもとを訪れた。
「マリアーネ修道院長、少し尋ねたいことがあります」
「はい、なんでしょうか?」
「フィスパーとは何者なのでしょうか?」
「それに答えるのは難しいですね。フィスパーとは『運命』のしもべと言えるでしょう」
「運命のしもべ? それはどういうことでしょうか?」
「詳しいことはわたくしどもにもわからないのです。まず、フィスパーとは悪魔ではありません。かといって妖魔でもないのです。フィスパーは何か宗教的存在のようです」
「シベリウス教とは違うのですか?」
とエスカローネ。
「そうですね。私たちが信仰する神とは異なるものを彼らも信じているのかもしれません。唯一わかっていることはフィスパーは闇に属しており、光に弱いということ。単独では存在しないことぐらいでしょうか?」
「マリアーネ様!」
「? なんですか?」
「修道院にフィスパーが現れました! その数およそ100と思われます!」
「なんですって!?」
「俺たちが迎撃に向かいます。行こう、エスカローネ!」
「ええ、セリオン!」
フィスパーたちは大群となってベレンシュタイン修道院に殺到した。
セリオンとエスカローネはフィスパーの前に躍り出た。
「俺たちが相手になってやる! 来い!」
「セリオン、ハイリヒ・クロイツ(Heiligkreuz)を使うわ! 前線をお願い!」
「わかった。時間は俺が稼ぐ」
セリオンは大剣を抜き、光をまとわせると、フィスパーたちの前に出て行って斬り刻んでいった。
フィスパーたちはそれでも続々と現れる。
「こいつら……途切れることを知らないのか……」
フィスパーたちがドレインでセリオンを攻撃した。
「甘い!」
セリオンは光輝刃で防御した。
「セリオン! ハイリヒ・クロイツの発動準備ができたわ! 行くわよ!」
「ああ、やってくれ!」
エスカローネの前面に巨大な十字架の波動が地面に現れた。
地面から聖なる光があふれてフィスパーたちを一掃していく。
光に弱いフィスパーたちにはひとたまりもない光景だった。
「チャージ・ショット!」
大きな光の弾がフィスパーたちを吹き飛ばした。
そこには霊光銃を構えたヒルデがいた。
「お二人とも、けがはありませんか?」
「ヒルデ!」
「ヒルデさん!」
「あとは残敵を殲滅すればいいだけですね。セリオンさん、エスカローネさん、やれますか?」
「もちろんだ!」
「ええ!」
「へえ……光の勢力もやるもんだね。これだけの数のフィスパーを倒してしまうなんてね」
「!? あなたは?」
「お初にお目にかかります。ぼくはクリス。クリス・マリノフスキ(Chris Malinowski)。運命の勢力の一員さ」
クリスは茶色の髪に青いベスト、黒いズボンをはいた少年だった。
「運命だと? どういうことだ?」
セリオンがクリスに尋ねた。
「フフッ、フィスパーは運命のしもべさ。君がセリオンかい? レフがいろいろと語っていたよ」
「レフ……レフ・ネフスキーか? あいつも運命の勢力の一員なのか?」
「そうだよ。レフは君とまた戦いたがっていたよ。近いうちにレフは君のもとに現れるだろうさ。さて、ヒルデとかいったかな? ぼくは君に興味がある。ぼくと戦わないかい?」
クリスは手を出して挑発した。
「……いいでしょう。あなたが運命の勢力の幹部なら、ここでケリをつけましょう」
「いいね! 乗ってきたよ!」
「ヒルデ……」
「セリオンさんたちは手を出さないでください。彼とは私が戦います!」
ヒルデは前に出た。ヒルデが銃弾を撃つ。
それをクリスは剣で弾いた。
弾かれた弾がヒルデに向かった。
ヒルデは別な銃弾でそれを撃ち落とした。
「少し本気を見せてあげようかな」
クリスは手から紫の炎を出した。
「紫炎波!」
クリスは紫の炎の波を出した。
ヒルデは身をひねってそれをかわす。
ヒルデは霊光銃に、魔力を集中した。
「これで、どうですか! チャージショット!」
ヒルデはチャージされた大きな弾丸をクリスに放った。
「こっちも行くよ! 紫炎刃!」
クリスが紫色の炎の刃を飛ばした。
紫炎刃はチャージ・ショットを真っ二つに分割した。
分かれたチャージ・ショットが爆発する。
「まだ、です! くらいなさい! レーザービーム!」
一直線に走る光のビームがクリスめがけて撃たれた。
クリスは身をかわしてかわす。
ヒルデはクリスの脚を狙って弾を撃った。
クリスは後ろに跳びのいてかわした。
ヒルデは自身の最強の技を出す。
「はあああ! バスタービーム!」
クリスは紫炎を防御に回した。
クリスはバスタービームを受け止める。
「くううううう!?」
クリスの顔に苦悶が宿る。
クリスはバスタービームを受け止めきれずに吹き飛んだ。
ヒルデは自分が勝ったと思った。
しかし、クリスは再び跳び上がった。
「いてててて! すごいね! あれだけの攻撃を放てるなんてね!」
「そんな……あれだけの攻撃を受けて平然としているなんて……」
ヒルデはショックを受けた。
「今度はこちらの攻撃を受けてもらうよ! 紫炎連撃斬!」
クリスは一気にヒルデとの間合いをつめてヒルデに接近した。
クリスは剣に紫炎をまとわせて振るってくる。
ヒルデは何とか紫の炎の斬撃をかわしはしたが、最後の炎の一撃はかわし切れなかった。
「ああああああ!?」
ヒルデは倒れた。
クリスはにやりと笑い、とどめを刺すため、剣を突き付けた。
そこにセリオンが割って入った。
「これ以上はやらせはしない!」
セリオンは大剣でクリスの剣を受け止めた。
セリオンは強い瞳で訴えた。
セリオンはクリスの剣を払いのけて、斬りつけた。
クリスは後ろにバックステップした。
「……どうやら、今回はここまでにしておいたほうがよさそうだね……君とはいつか本気で戦いたいな。それじゃあね! アディオス!」
クリスは闇に呑まれて消えた。
「ヒルデさん! すぐに回復させます!」
エスカローネはヒルデに近寄り、回復魔法をかけた。
セリオンたちは押しかけたフィスパーを退けた。
ベレンシュタイン修道院で、セリオンとエスカローネはフィスパーの群れを退けることに成功した。
二人はフィスパーの謎を探るため、しばらくベレンシュタインにとどまることにした。
二人は空いた時間を見つけてパン屋「ウミネコ」を訪れた。
「ウミネコ」はアップルパイで有名なパン屋だった。
セリオンとエスカローネはテラス席に座り、コーヒーを注文した。
パン屋の主人はレベッカ(Rebekka)という名の女性で、30代の外見をしていた。
おいしそうな、アップルパイの香ばしい匂いがテラス席まで漂ってくる。
「おいしそうな匂いだな」
「ほんとね。早く食べたいわね」
二人はそう言ってコーヒーを飲む。
その時、である。
「キャアアアアア!?」
厨房から女性の声が聞こえた。
「!? なんだ?」
「セリオン、店の奥からよ!」
「よし、行ってみよう!」
セリオンとエスカローネは厨房に入ってみた。
そこにはレベッカと一体のフィスパーがいた。
フィスパーはレベッカにドレインを向けてレベッカから生命力を吸い取っていた。
レベッカは死ぬ寸前だった。
「させるか!」
セリオンは光輝刃を出して、フィスパーに突き刺した。
フィスパーは不意を突かれて雲散霧消した。
「はあはあはあ……」
レベッカが喘ぎ声を発する。
「レベッカさん、今回復させますね!」
エスカローネは回復魔法をレベッカにかけた。
「アップルパイどころじゃなくなったな。こんなところにまでフィスパーが現れるとは……」
その後セリオンとエスカローネは修道院に戻った。
バイクで戻ってみると、そこには再びフィスパーの群れがいた。
「こいつらは!? またフィスパーの襲撃か!」
「このままじゃ、修道女たちがもたないわ!」
「わかっている! 一気に決めるぞ! 翔破斬!」
セリオンはフィスパーの群れの背後から蒼気の衝撃波を放った。
フィスパーたちは一気に倒された。
そこにひときわ異彩を放つフィスパーが現れた。
一つ目が煌々(こうこう)と光っており、紫色の体をして、紫のスカートをつけていた。
「我ラノ狙イハ、フィルティッテナリ。ソレヲジャマスル者ニハヨウシャシナイ。我ハ、フィスパー「アザナミ(Azanami)」
「なるほどな。フィルティッテが狙いで、修道院を襲ったのか。だが、そうはさせはしない。おまえの相手は俺がする! 来い。フィスパー・アザナミ!」
セリオンはすぐに動き、アザナミを斬りつけた。
アザナミはバリアを張ってセリオンの攻撃を防いだ。
セリオンは光の刃「光波刃」を三発出し、アザナミを攻撃した。
それをアザナミは後退してやり過ごす。
アザナミはドーム状の闇「闇力」をセリオンに放った。
セリオンは闇が染まる前に、光の大剣で斬り裂いた。
アザナミは紫色の手を前にかざした。
アザナミの手が黒く染まる。
アザナミの手が闇をまとう。
アザナミは闇の弾をセリオンに向けて撃った。
セリオンは着弾に備えた。
セリオンは鋭い刃でこの攻撃を斬り裂いた。
アザナミはさらに魔力を高めた。
闇魔法「闇爆」。
闇の爆風で対象を吹き飛ばす魔法。
アザナミの闇爆。
それをセリオンは光輝刃を展開して耐えた。
セリオンの大剣は光輝く。
それは「希望」を意味する。
セリオンはアザナミに接近した。
セリオンは光輝刃でアザナミを斬りつける。
アザナミはこれをバリアでガードした。
しかし、セリオンはこのバリアを打ち破り、アザナミに傷をつけた。
フィスパー・アザナミから紫の血が流れ出た。
アザナミは突然膨大な魔力を集めだした。
「何かが来る!」
セリオンはとっさにアザナミと距離を取った。
アザナミの「獄審」。
魔法陣が地面に形成された。
魔法陣から魔力がわきおこり、上空に向かって噴き出した。
それらの魔力は一点で集中し、セリオンめがけて降下してきた。
せりおんはすかさず光輝刃で闇の魔力を防いだ。
「ぐううう!?」
セリオンは闇の魔力に押された。
セリオンは大剣に光子をまとわせて、闇の魔力に対抗した。
セリオンは闇の魔力に押され押しつぶされそうになる。
セリオンは光子斬を出した。
闇の魔力は霧散した。
セリオンはすぐさまアザナミに近づいた。
大魔法を放ったアザナミは隙だらけだった。
セリオンは光子斬でアザナミを斬りつけた。
アザナミは紫の粒子と化して消滅した。
「ふう……どうにかフィスパーの群れを撃退できたか」
「お疲れさま、セリオン」
エスカローネがセリオンに近づいてきた。
「それにしても、フィスパーたちの目的がわからないわね。彼らはいったい、何を考えているのかしら?」
「さあな。ただ言えることは、こいつらを全滅させればいいということだけだ」
「セリオンさん! エスカローネさん!」
そこにヒルデが走ってやってきた。彼女の呼吸が乱れている。
「ヒルデ?」
「今連絡がありました! マルクス・ヴェーバー(Markus Weber)市長がフィスパーに襲われているとのことです! 至急、現場に赴いてください!」
セリオンとエスカローネはすぐさまバイクでヴェーバー市長のもとに向かった。
「くっ! たかが黒フードの魔物くらいなんとかできんのか! おまえたちは私のボディーガードだろう! しっかりしろ!」
ヴェーバー市長は部下に活を入れた。
ヴェーバー市長の周囲にボディーガードたちが倒れていた。
フィスパーの攻撃「ドレイン」で生命力を吸収されたのだ。
ヴェーバー市長は強気だったが、部下たちは次々とフィスパーの群れによって倒されていた。
「ヒッ!?」
ヴェーバー市長は恐怖に凍り付いた。
「お、おまえたち! 何が目的なんだ!? カネか!? カネならくれてやる! だから頼む! 私の命だけは助けてくれ!」
ヴェーバー市長は必死に命乞いした。
こういう発言は本人の品性をさらけ出す。
フィスパーたちは無情にもヴェーバー市長の生命力を吸い取ろうとした。
ヴェーバー市長のの命乞いは見苦しさを露呈させた。
「させるか!」
その時、ヴェーバー市長に光明が現れた。
バイクに乗ったセリオンは、光波刃を出してフィスパーの群れを蹴散らした。
ヴェーバー市長はおのれの命が助かったことを認識した。
セリオンのバイクはヴェーバー市長はの前で停止した。
「へい、へい、へい! Mein Freund!」
「レフか!?」
セリオンの周囲をレフがバイクで駆け巡った。
ぐるぐるセリオンの周囲を回って、徐々に近づいてくる。
「レフ・ネフスキー!」
「はっははは! へい! バイクを下りての戦いなんて久しぶりだ、Mein Freund! 俺と勝負と行こうじゃないか!」
レフは剣を抜いた。
セリオンはバイクから降りて大剣を構えた。
「エスカローネは下がってくれ。俺はこいつと決着をつける」
「ええ、わかったわ」
セリオンとレフのあいだに緊張が流れる。
レフはにやりと笑った。
「さあ、俺の技を見せてあげよう! 氷の剣よ!」
レフが言うとレフの剣に氷がまとった。
「氷結剣」である。
レフは一気にセリオンに近づくと、氷の剣でセリオンを斬りつけた。
セリオンは蒼気を発して、対抗する。
レフの剣がセリオンの大剣に当たる。
レフはふざけた顔つきで氷の剣を振るった。
セリオンは蒼気を大剣にまとわせてレフの剣を防いだ。
「これでもくらいな! 氷結降弾!」
レフは降下する氷結弾をセリオンに向けて放った。
セリオンはとっさに間合いを取る。
セリオンがいた位置に氷の弾が落ちてきた。
セリオンはレフの攻撃を見破ると、蒼波刃を二発レフに放った。
蒼気でできた刃をレフは氷結剣で迎撃する。
その時、セリオンはすぐに動いた。
セリオンがレフに急接近して、斬りつけた。
レフはなんとかこれに反応した。
レフは氷の剣でセリオンの攻撃をガードした。
「ぐうううう!? やるじゃないの!」
レフがセリオンをにらむ。
セリオンは冷静だった。
セリオンとレフが斬撃を交差させる。
形勢不利と見たレフはバックステップでセリオンと距離を取った。
「こいつで行くぜえ!」
レフはいくつもの氷の槍を空中に作り出した。
レフは多連・氷結槍をセリオンに放った。
「無駄だ! その攻撃は俺には通じない」
セリオンは迫りくる氷の槍を次々と斬り払った。
氷の槍は一発もセリオンに当たらなかった。
「さすが、Mein Freund! でも、これならどうかな? 氷結波!」
氷の波がセリオンに向かう。
セリオンは蒼気を放出すると、蒼気の波「翔破斬」でレフを攻撃した。
二つの波がぶつかり合う。
威力はセリオンの攻撃のほうが上だった。
レフは氷のバリアで氷のバリアで防ぐ。
「ちいっ! やってくれるね! でも、こいつでどうだい? 氷結乱舞!」
氷の剣による連続攻撃。
凍てつく冷気が周囲を満たした。
しかし、その攻撃はすべてセリオンに防がれた。
「これで、終わりだ!」
セリオンは蒼気凄晶斬を放った。
蒼気凄晶斬はレフを胴体のもとに両断された。
その直後、セリオンの上方からつららが飛来した。
セリオンは後退した。
「どういうことだ?」
「はっはっははは! 変わり身だよ!」
レフは相変わらずふざけていた。
「次の攻撃で俺は決めるぜ?」
「ああ、そうしよう」
セリオンとレフが剣を構えた。
激突を予感させる緊張が流れた。
二人の視線が交錯する。
二人の影が一瞬にして消えた。
二人は最後の一撃を互いに繰り出した。
その瞬間時が止まった、凍ったかのようだった。
二人は交差した。
そしてレフが体勢を崩した。
「ははは…… やるじゃないの…… 俺の、負けだ……」
レフは倒れた。
レフは死んだ。
「いやーすごいね。あのレフを倒すなんて。ぼくは君の力を過小評価していたよ」
ぱちぱちと拍手がなった。
「クリス!?」
そこにはクリスが立っていた。
「今なら、ぼくたちのことを少しは教えてあげてもいいかもね」
「どういうことだ?」
「ぼくたちはね『運命の勢力』なんだよ」
「運命?」
「そうさ。人の死を決める運命のね。人に死をもたらす……それがぼくたちの活動なんだよ。でも君みたいな人もいるんだね、青き狼・英雄セリオン君?」
「……よく知っているな?」
「さて、レフが死んだとなれば仕方ない。このぼくが戦うよ。準備はいいかい、セリオン君?」
クリスは紫の炎を弾丸にして出してきた。
多弾・紫炎弾である。
セリオンはそれを氷結刃で斬り払う。
クリスは紫の炎の波を出した。
紫炎波である。
セリオンは近づいてくる紫炎波を見ながら、氷結刃を紫炎波に突き刺した。
紫の炎は終息していく。
そしてきれいに消え去った。
「やるじゃないか、セリオン君! ヒルデさんとの戦いより楽しめるかな?」
クリスは紫炎の刃をセリオンに向けて放った。
セリオンも蒼波刃をクリスに向けて放った。
二人の技がぶつかり、スパークを引き起こす。
クリスは紫炎の斬撃を繰り出した。
セリオンはそれを見切って後退する。
クリスは紫炎斬でセリオンを追いつめる。
クリスはセリオンに対して、余裕の笑みを浮かべた。
「これならどうだい? 紫炎烈火!」
紫の炎が地面から斜めに放たれた。
セリオンは氷星剣を出して、ガードする。
セリオンは蒼気を出した。
斬撃に蒼気をまとわせてクリスに攻撃する。
「く!? これは!?」
クリスは蒼気による斬りをなんとかガードする。
「く、くそ! なめるなよ! ぼくの最強の技を見せてやる! 紫炎連撃斬!」
紫炎の乱舞がセリオンを襲う。
セリオンは蒼気の刃で紫炎を防ぎ、クリスの攻撃を受け付けなかった。
セリオンはとっさに前に出た。
そして反応できなかったクリスにセリオンは蒼気の刃で斬りつけた。
「がは!? そっそんな……このぼくが死ぬだって……!?」
クリスはうつぶせに倒れた。
クリスやレフが死んだことで、フィスパーたちは統制を失うかに見えた。
しかし、フィスパーたちは集合し、一体化しようとした。
「フィスパーたちの動きがおかしい……いったい何をするつもりだ?」
フィスパーたちは集合すると、巨大な怪物へと姿を変えた。
それは竜だった。
フィスパー・ドラッヘ(Fisperdrache)である。
フィスパー・ドラッヘは鋭い爪でセリオンを攻撃してきた。
セリオンはすばやくジャンプして、フィスパー・ドラッヘの上に上がり、大剣で斬りつけた。
かすかな傷がフィスパー・ドラッヘの頭にできた。
フィスパー・ドラッヘはセリオンにかみつこうとしてきた。
セリオンはフィスパー・ドラッヘの頭を踏みつけ、くるりと回転して回避した。
フィスパー・ドラッヘは炎の息をはいた。
セリオンは蒼気を出し、蒼気の刃で対抗する。
炎の息はセリオンによって斬り裂かれた。
セリオンは蒼波刃を二発、フィスパー・ドラッヘの体に放った。
フィスパー・ドラッヘの体に傷が刻まれた。
セリオンは翔破斬を出した。
フィスパー・ドラッヘは翼をはばたかせて上昇し、それをかわした。
フィスパー・ドラッヘは今度は闇の息をはいた。
黒い闇が大きく広がる。
セリオンは闇の息に光輝刃で斬りかかり、霧散させた。
セリオンはジャンプしてフィスパー・ドラッヘの頭から蒼気の大剣を振り下ろした。
フィスパー・ドラッヘは地面に叩きつけられて、落ちた。
セリオンはフィスパー・ドラッヘの頭に光の大剣を突き刺した。
フィスパー・ドラッヘは倒れた。
フィスパー・ドラッヘは黒い粒子と化して消滅した。
残りのフィスパーたちはうろたえた。
フィスパーたちがおびえて逃げ出すのは初めてだった。
フィスパーたちはベレンシュタイン門のところまで退いた。
「逃がしはしない! この機会にフィスパーを全滅させる!」
セリオンはエスカローネと共にバイクに乗ってフィスパーを追撃した。
その時である。
闇魔法「悪門」がセリオンたちに向けられた。
セリオンは急ブレーキをかけてバイクを止めた。
二人は悪門をやり過ごした。
「誰だ! 姿を現せ!」
するとそこに圧倒的な力を持つ存在が現れた。
結晶のような鎧を着た、巨大なフィスパー。
フィスパー・パルカ(Fisperparca)だった。
「セリオン! きっとあれがフィスパーの親玉よ!」
「そうか……なら、こいつを倒せばフィスパーの事件は解決するな!」
セリオンとエスカローネはパルカに対し、武器を構えた。
これは『英雄』と『運命』の戦いだった。
パルカの闇力。
闇の魔力がドーム状に膨れ上がる。
セリオンとエスカローネはすぐさま闇力の範囲から離れた。
パルカは黒い闇の息をはいた。
セリオンは光輝刃で、エスカローネは光矛でそれぞれ息を斬り裂く。
セリオンは光波刃を放った。
合計で三つの光の刃がパルカに向かった。
パルカはそれを闇で払いのける。
エスカローネはハルバードの先から聖光矢を放った。
聖光矢はパルカの頭を狙って射られた。
パルカはそれを闇で握りつぶす。
パルカの連続・闇力。
セリオンとエスカローネは光で闇の力に耐える。
すかさずセリオンはパルカに接近し光輝刃で斬り捨てる。
パルカは一刀両断にされた。
「これで終わりか? いや、まだだ! まだこいつは死んでいない! エスカローネ、気をつけろ!」
パルカは三体に分裂した。
パルカエ(Parcae)となった。
パルカエは黄色のいかずちをつかさどるのと、赤の炎をつかさどるのと、青の氷をつかさどるのとに分裂した。
パルカ・黄のいかずち攻撃。
いかずちが二人を薙ぎ払う。
二人は武器を構えて防いだ。
パルカ・赤の炎。
多弾・火炎弾。
セリオンは蒼波刃を出して迎撃した。
パルカ・青のつらら。
つららが上方から地面に降り注ぐ。
まともにくらったら即死は免れない。
セリオンとエスカローネは散開してつららをかわした。
パルカ・黄の雷電雨。
雷電が二人を包み込んだ。
二人は光輝刃と光矛で、雷電を斬り払った。
パルカ・青の多連・氷結槍。
セリオンは武器で氷の槍を砕いた。
パルカ・赤の火炎波。
セリオンは熱い炎の波を蒼気をぶつけて迎撃した。
エスカローネはハイリヒ・クロイツを展開した。
聖なる十字の光が地面から噴出する。
パルカエは再び一つに合体した。
パルカ・ファトゥム(Parca Fatum)である。
パルカ・ファトゥムは巨大化していた。
大闇力。
「うう!?」
「きゃあっ!?」
セリオンとエスカローネはダメージを受けた。
セリオンはパルカ・ファトゥムに接近し、光輝刃で斬りつけた。
手ごたえはあった。
しかし、パルカの傷はあっさりと再生した。
セリオンは光波刃を四発放った。
パルカ・ファトゥムは闇をまとい光波刃をかき消した。
パルカ・ファトゥムの闇黒砲。
パルカ・ファトゥムの手に闇が集まる。
セリオンは光輝刃で闇の波動砲を受け止めた。
「これをくらいなさい! 金光砲!」
エスカローネは金色の光の波動を撃った。
それはパルカに直撃した。
エスカローネは続けて、聖光球を出した。
パルカ・ファトゥムは闇力をだしてそれを防ぐ。
パルカ・ファトゥムの多連・闇黒槍。
セリオンは光波刃で、エスカローネは聖光矢で反撃した。
エスカローネは金光粒子をハルバードの先に収束した。
「大金光砲!」
膨大な金光の流れがパルカ・ファトゥムを襲う。
さすがのパルカ・ファトゥムもこの攻撃ではダメージを受けたらしい。
その隙にセリオンは一気にパルカ・ファトゥムに接近した。
セリオンはジャンプしてパルカ・ファトゥムの首に光子斬を放った。
パルカ・ファトゥムの首を斬り飛ばす。
さすがのパルカ・ファトゥムもこの一撃は致命傷になった。
パルカ・ファトゥムは黒い粒子を大量に噴き上げて消滅した。
かくして「運命」は「英雄」に敗れた。
セリオンとエスカローネはヒルデとフィルティッテ、そしてマリアーネ修道院長の見送りを受けていた。
「今回のフィスパー事件を解決できたのはあなたがたのおかげです。当修道院を代表してお礼を述べます。ありがとうございました」
とマリアーネ。
「いや、俺たちは行きがかりでフィスパーとかかわっただけさ。感謝されることじゃない」
「ですが、セリオンさんたちがいてくれたからこそ、フィスパーを倒すことができたと思います。セルゲイもそう言ってますよ」
セルゲイはしっぽを振った。
「じゃあ、俺たちはこれで去るとしよう。いろいろと世話になった」
「さあ、セリオン。今度こそサタナエルのもとに行きましょう! そしてすべての決着を!」
「ああ、そうだな。ヒルデ、フィルティッテ、マリアーネ院長、いろいろとありがとう。それじゃあ!」
セリオンとエスカローネはバイクにまたがった。そしてベレンシュタインを去っていった。




