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ゴルディヒ

雪が降り注ぐ中、セリオンとエスカローネを乗せたバイクは大地を走った。

バイクの車輪がわだじを作っていた。

二人はしばしのバイク走行によって、ゴルディヒ王国 (Goldig)に到着した。

それをある男が塔の上から見ていた。

その男は妖しくほほえんだ。

セリオンとエスカローネは宿屋「白雪しらゆき」に泊まることにした。

マスターはリージヤ(Lidiya)という名の女将で、二人は暖かい食事にありつくことができた。

特にスープは絶品で、文句の付け所もなかった。

「おい! この店は飯の中にごみをいれんのか! ああ!」

宿屋の食堂から煩わしい声がした。

そんな声を出したのは王国の騎士だった。

それは黄金の鎧を着こんだ男たちだった。

「何いってんだい! あたしが料理の中にごみをいれるわけがないだろ!」

女将は反論した。

「ああん!?  この店は客に対してそんな文句をはくのか? ええ!?」

「フン! あんたらなんか客とは思わないね! とっとと飯代を払って帰りな!」

「このアマ! よくもそんなことが言えるな!」

「そこまでにしろ」

「!?」

ヒートアップして事態が暴力ざたになる前に、セリオンがあいだに入った。

「なんだ、てめえは?」

「俺は善良な宿泊客だ。表に出ろ。おまえたちの相手をしてやる」

セリオンはごろつき騎士たちを店の前へと誘導した。

セリオンはエスカローネをちらりと見た。

エスカローネは呆れた顔をしてため息をはいた。

「いうじゃねえか、カスがよ。よーし、おい、表でやるぞ!」

ごろつきどもは店の前に出た。

セリオンはごろつき騎士たちと対峙した。

それに対してごろつき騎士たちは剣を抜いた。

「クックック! ぶっ殺してやるぜ!」

「せいぜい、嘆きな!」

「てめえは死ぬぜえ!」

「……フン」

セリオンは蒼気を拳にまとってごろつきたちに急接近した。

それはすばやくごろつきたちには見切れなかった。

セリオンは蒼気の拳で一人のごろつきの腹を殴りつけた。

「ぐは!?」

強烈な衝撃がごろつきを襲う。

ごろつきは後方に吹き飛ばされた。

ごろつきは地面に激突すると、けいれんし動かなくなった。

「てめえ!」

「やりやがったな!」

ごろつきたちが剣で振りかかる。

セリオンはあっさり斬撃の軌道を見極め、蒼気をまとわせた蹴りを男の腹に入れる。

「おぐえ!」

男は吹き飛び、地面をゴロゴロと転がって倒れた。

男を守っていた鎧はへこんでいた。

「くそったれ!」

残った最後のごろつきがセリオンに斬りつけてきた。

セリオンは蒼気を拳に集中すると、蒼気の衝撃を放った。

「ぐひょえ!?」

最後のごろつきがアーチを描いて、盛大に吹き飛ばされた。

ごろつきは数回バウンドすると、ぐったり倒れた。

「さて、中に戻るか」

セリオンは宿屋の中に戻ってきた。

「おかえりなさい」

「ああ、ただいま」

「すまないねえ。店のトラブルに巻き込ませてしまって。あたしはあの手のいかさまを使う奴らは許せないんだよ。ありがとうね。ただ……」

「ただ?」

リージヤが顔を曇らせた。

「騎士をやっつけちまったんだ。ただで済めばいいけどね。王様が変わってからずっとこんな感じさ」

「ゴルディヒは王国だと聞いている」

「そうさ。それなら『黄金化』も知っているかい?」

「黄金化?」

「ああ、そうだよ。呪いだかなんだか知らないけど、ある日突然に黄金に変わっちまうのさ。

もう何十人も黄金になっちまってるんだ。うわさでは国王ミノス(Minos)が企んでるって言われているけど、証拠があるわけじゃないからね」

「そうか……この都を訪れたのも、神のめぐりあわせに違いない。俺たちでその黄金化について調べてみることにしよう。なあ、エスカローネ?」

「……はあ……言い出したら聞かないでしょう? 私も付き合うわ」




ミノス王の宮殿にて。

「わしの黄金騎士をぶちのめした男がいるらしいな」

ミノス王が言った。

「フフフ……そうですね。ついに彼はこのゴルディヒにやってきました。彼の旅ももうすぐクライマックスですよ」

ミノス王の客人ナルツィス(Narzis)が答えた。

「フン、その言いぶり、どうやらその男の名を知っているらしいな?」

「ええ、確かに。彼の名前はセリオン・シベルスクです」

「客人よ、そのセリオンとやらは強いのか?」

「そうですね。あなたの黄金騎士すべてを動員しても負けるでしょうね」

「奴の姿を見てみたいものだ」

「ここに一枚写真がありますよ」

ナルツィスはミノスに写真を渡した。

「これは……」

「? いかがいたしました?」

ミノスは写真の一部を凝視していた。

「美しい……」

「美しい?」

ナルツィスはミノスがセリオンを見ていないことに気づいた。

「この女性の名はわかるかね?」

「ああ、それでしたら。エスカローネ・シベルスカと言います。ミノス王、それがどうかしたのですか?」

「この娘をぜひわしのものにしたい」

「ああ、そういうことですか」

ナルツィスはにやりと笑った。

ミノス王は好色だった。

今は妻を亡くして独身だったが。

ミノス王はエスカローネを我がものにしたいと欲した。

「黄金騎士すべてを動かしてこの娘をわしのものにするのだ!」

ナルツィスはさきほどの自分の発言を聞いていなかった王にあきれた。

「…………」

ナルツィスはミノスの愚かぶりにあきれたが、同時に楽しんでいた。

これはミノス自身を破滅させることになる。




セリオンとエスカローネは黄金化された人々を見に行った。

まず、二人は武器屋の主人を見た。

「これは……本当に黄金化しているんだな……おそらく何かの呪いだろうが……」

「セリオン」

「? どうした?」

「これは石化と同じよ」

「なんだって?」

「これは色が黄金なだけであって実質的には石化と変わらないわ」

「つまり、黄金化は石化しているわけだな?」

「あら? 何か大勢人が来るわ」

「何?」

セリオンは三十人の黄金騎士たちが来るのを見た。

「きさまがセリオンか?」

「そうだ」

「おとなしくエスカローネ様を渡せ。そうすれば大量の黄金を渡してやろう」

「断る」

「なんだと?」

「断るといったんだ。たとえダイヤモンドを持ってきても、エスカローネを渡しはしない。なぜ、おまえたちはエスカローネを差し出せと言う?」

「それはミノス様からの命令だからだ。ミノス様はエスカローネ様をご自分のお妃さまに選んだのだ」

「なんですって!?」

エスカローネが驚愕した。

セリオンは黄金騎士たちをにらみつけた。

「どうやら素直に引き渡す気はないようだな? なら、その時は力ずくで奪ってよいと命令を受けている」

黄金の鎧を身につけた騎士たちは抜剣した。

セリオンは神剣サンダルフォンを出した。

エスカローネはハルバード・エスカリオスを出した。

二人は背中を合わせて武器を構えた。

黄金騎士たちは二人を取り囲んだ。

「まずは、この男をつぶせ! そうすればあとはエスカローネ様を捕獲するだけだ!」

黄金騎士たちはセリオンを狙って斬りかかってきた。

「なめるな!」

セリオンは迫りくる黄金騎士たちを次々と粉砕した。

「ぐっ!?」

「がは!?」

「ぎゃあ!?」

「ぐっ……まさかこれほど強いとは……」

「どけ」

「!?」

そこにドラゴン風の竜人が現れた。

長い太刀を武器としている。

「きさまらの戦いなど、見ていられんわ。この俺がやってやる!」

「キッキルゴルト(Kilgold)様……」

「キルゴルト?」

「きさま、強いな、セリオンとやら。ザコどもではおまえにかなわないと見える。この俺様が相手をしてやろう」

黄金の竜人キルゴルトは太刀を抜いた。

「おまえがボスか。なら話は速い。いいぞ。俺が相手だ」

「フン! いきがるな、小僧! これでもくらえ!」

キルゴルトは口に毒をたくわえた。

キルゴルトは毒の息をセリオンに向けて放った。

毒がセリオンに向かって放射される。

セリオンは光の大剣を手にした。

セリオンは光の大剣で毒の息を斬り裂く。

キルゴルトはすばやく太刀を振り回した。

まるで木の葉を斬り刻むかのようだった。

キルゴルトは曲がった刀で斬りつけてくる。

曲刀は直線的な剣と違って、滑らかに斬れる。

セリオンはキルゴルトの攻撃を大剣ですべてガードした。

「ほう……俺様の攻撃をすべて防ぐとはな」

セリオンは大剣でキルゴルトに斬りつけた。

キルゴルトもセリオンの攻撃をすべてガードした。

キルゴルトは石の槍を出した。

硬石槍である。

左手で石の槍で薙ぎ払い、キルゴルトはセリオンを攻撃した。

「おっと!」

セリオンは後退して距離を取った。

キルゴルトは石の槍を投げつけた。

セリオンはすらりとよけた。

石の槍は虚しく当たらずに過ぎ去る。

セリオンはキルゴルトに攻撃した。

セリオンは前よりパワーとスピードを上げていた。

「ぐっ!? こ、小僧!?」

キルゴルトはセリオンの攻撃に対応しきれなくなる。

キルゴルトは態勢不利と見たのか、バックステップでセリオンと間合いを取った。

キルゴルトの多連・硬石槍。

セリオンは蒼波刃を出して、自分に当たりそうな槍のみを破壊した。

セリオンはキルゴルトと一気に間合いをつめた。

それは一瞬のことだった。

キルゴルトは反応できなかった。

セリオンはキルゴルトの太刀を弾き飛ばした。

そして無防備となったキルゴルトに蒼気の刃で斬りつけた。

セリオンはキルゴルトを斬った。

「ぐほあ!? こ、この俺様が……」

キルゴルトは後ろに倒れた。

黄金騎士たちはキルゴルトを倒されて動揺した。

「そんな!? まさかキルゴルト様がやられるとは!?」

「どうする? まだやるか!?」

「くっ!? 引け―! 引け―!」

黄金騎士たちは逃げだした。

「ふう、やったわね。ねえ、セリオン。これからどうするの?」

「そうだな。これからこちらからミノス王に会いに行ってみるか!」




セリオンは兵士たちや騎士たちを薙ぎ払った。

セリオンとエスカローネは力ずくで、ミノスの王宮に入った。

兵士たちはセリオンの強さに恐れをなし、おびえていた。

セリオンとエスカローネは武器を取り、玉座の間にやってきた。

玉座に灰色の髪をした老いた男が座っていた。

「おまえがミノスか?」

「その通りよ。よくもこんな無礼なふるまいをしてくれたものだ。高貴なるものに対しての礼儀がなっていないと思える。おお、それにしてもエスカローネ。そなたは写真で見るよりも美しい。そなたを一目見てぜひともわしのものにしたくなったわ」

「私はセリオンを愛しています! 私はあなたのものにはなりません!」

「ほっほっほ! 権力を持つ者の魅力を理解すれば、すぐにわしを愛するようになるわ」

「やあ、久しぶりだね、セリオン」

「おまえは……サマエル!」

セリオンはナルシスティックな男を見た。

「知り合いか、ナルツィスよ?」

「まあ、そんなところです、王よ」

「ナルツィス? どうしてそんな名を?」

「別に大した意味はないさ。ぼくが悪魔だとしられると困るんでね。そのための名前だよ。それにしてもセリオン、ぼくは君と会えてうれしい」

「いったい、何を企んでいる?」

「フフフ……それはね。王を闇に落として操るためだよ。黄金化の力は呪いのアイテムの効果さ。黄金化が石化と同じとはよく見抜いたね、エスカローネ? 黄金化させると生命力を奪えるのさ! では黄金化の真の力を見せてあげよう!」

「グゴゴゴゴゴ!?」

王に異変が生じた。

様子がおかしい。

「!? 王に何をした!?」

「フフフ……呪いの力を解放したのさ! 見るがいい!」

ミノスは黄金のネックレスが暴走して、魔獣へと姿を変えた。

それは「ミノタウロス(Minotauros)」だった。

ミノタウロスは牛の頭に人の体、牛の脚を持つ怪物だった。

そして両手に大きな斧を持っていた。

さらに体全体が黄金の色をしていた。

ミノタウロスは口に何かをたくわえた。

セリオンにはそれが息の前触れであることが分かった。

ミノタウロスは口から強酸の息をはいた。

セリオンはすばやくかわした。

「この酸性の効果!? 強酸か!?」

ミノタウロスは一瞬にしてセリオンとの間合いをつめてきた。

そしてミノタウロスは大きな斧を振りかぶった。

「おっと!」

セリオンは後退して回避した。

まずセリオンは相手の力量を見極めようとした。

ミノタウロスの実力をセリオンは測った。

セリオンの剣の舞。

セリオンは連続で斬撃を繰り出す。

ミノタウロスはすべてをガードする。

ミノタウロスは斧を大きく振りかぶり、強烈な打撃をフルスイングで出した。

強い衝撃をセリオンは感じた。

セリオンはとっさに退いてかわした。

これをまともに食らっていたら胴体から真っ二つに分割されていただろう。

それにガードしたら大剣を吹き飛ばされたかもしれない。

セリオンは蒼波刃でミノタウロスを攻撃した。

セリオンは翔破斬を出した。

蒼気の衝撃波がミノタウロスを襲う。

ミノタウロスはガードしてやり過ごそうとした。

しかし、翔破斬の威力はそれ以上だった。

「!? グモオオオオオ!?」

セリオンはミノタウロスがよろめいたのを見て、「今だ」と思った。

セリオンはミノタウロスに接近すると、蒼気を収束した斬撃、「蒼気凄晶斬」でミノタウロスの首を切断した。

ミノタウロスは崩れ落ちた。

ミノタウロスは死に、茶色の粒子と化して消滅した。

「おやおや……もう少し苦戦すると思ったのに……」

サマエルは残念そうに言った。

「サマエル、次はおまえの番だ」

「フッフフフフ! そう行きたいところだけど今はやめておくよ。君との決戦はニブルヘイムで行う予定なんでね」

「ニブルヘイム?」

「そうさ。北の最果ての地。この旅の終着点。ニーベルンゲン地方にある土地の名だ」

「そこでサタナエルが俺を待っているのか?」

「そうだよ。君との決戦のためにね。ではセリオン、今回はこれくらいでごきげんよう。ああ、そう。黄金化を解きたいなら、そこに転がっているネックレスを破壊すればいい。それでは、セリオン、エスカローネ、Auf Wiedersehen!」

サマエルは闇の渦に呑まれて消えた。

セリオンはミノスがつけていたネックレスを破壊した。

すると光がはじけてネックレスは粉々になった。

そうして石化していた人たちは元に戻った。

それからセリオンとエスカローネはゴルディヒを去った。

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